岩手県盛岡市が財源確保などを目的に123の事業見直しを進めている。市民生活に関わる事業も含まれており、議会や市民からは慎重な対応を求める声が上がっている。背景には5年後に財政調整基金がマイナス予測という深刻な財政状況がある。

123事業見直し…シティマラソンも対象

財源確保などを目的に盛岡市が見直しを進めている123の事業について、10月24日に示された方針によると、いわて盛岡シティマラソンの負担金3500万円、老人クラブなどが利用する敬老バス運行業務委託料500万円、放課後児童クラブの利用料補助金(額は調整中)などの事業について、見直しや廃止を行うことで支出を削減する方針だ。

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11月21日の市議会全員協議会で、市は各事業を見直す理由について説明した。

10月19日開催された「いわて盛岡シティマラソン」
10月19日開催された「いわて盛岡シティマラソン」

このうち2025年、約7000人が参加したいわて盛岡シティマラソンについては、「さんさ踊りなどと比べて交流人口拡大の費用対効果が低い」としている。

夏の風物詩である「盛岡・北上川ゴムボート川下り大会」(写真は2023年7月)
夏の風物詩である「盛岡・北上川ゴムボート川下り大会」(写真は2023年7月)

また、夏の風物詩である「盛岡・北上川ゴムボート川下り大会」も度重なる赤字補填や職員の負担を理由に「継続は困難」としている。

議会からは「急ぎすぎ」と厳しい声

こうした説明に対し、議員からは厳しい声が相次いだ。

太田隆司市議は「既成事実をつくれば、それで進んでいくかのような印象を持った。そういった意味でも非常に急ぎすぎでは」と指摘。

11月21日 盛岡市議会全員協議会
11月21日 盛岡市議会全員協議会

兼平孝信市議も「もうちょっと丁寧に各団体と(話し合って)、1年くらいかけてやっていかないと成し遂げられるものではない」と述べた。

背景にある財政難

これに対し内舘茂市長は「現状のままでは市の貯金にあたる財政調整基金が5年後にマイナスになる」と危機感を示した上で、「市民の皆さんの話をよく聞き、今後しっかり判断をしていきたい」と述べている。

盛岡市 内舘茂市長
盛岡市 内舘茂市長

事業の見直しの背景には、やはり財政難があり、市では2026年度からの5年間、一般会計で年間9億から37億円の歳入不足が生じるとの中期財政見通しを示している。

このままでは財政が立ち行かなくなるとして、事業見直しの方針が示されたが、市によると、事業見直しによる支出削減効果は7億6000万円に上るという。

イルミネーション支援も廃止へ

見直し対象となっている事業の現場では、市民から様々な声が聞かれた。

冬の盛岡市中心部では、イルミネーションが市民や観光客の目を楽しませる存在となっている。

街の人からは「やっぱりきれいだなって。心が明るくなる感じがしました」「すごく素敵、観光地だなって感じで」などの声が聞かれた。

盛岡駅前通のイルミネーション
盛岡駅前通のイルミネーション

しかし市では駅前通と肴町の商店街のイルミネーションについて、負担していた500万円を2026年度から廃止する方針だ。

市民からは「それはもったいないかもしれない。せっかく観光客が増えてきたのに」「イルミネーションあっての冬だと思うのでなくなるのはちょっと寂しい」との声が上がっている。

なお、駅舎周辺のイルミネーションは見直しの対象となっていない。

子育て支援にも影響広がる懸念

放課後児童クラブの利用料の補助金も見直し対象となっている。

市は2020年度から低所得世帯を対象に児童1人あたり月最大1万7000円を補助してきた。2024年度は212人に対し2372万円を補助している。

盛岡市山岸の放課後児童クラブ「サンガキッズ山岸」は、小学1年生から6年生約80人が利用している。

放課後児童クラブ「サンガキッズ山岸」
放課後児童クラブ「サンガキッズ山岸」

佐々木あおい所長は「初期費用や様々な面で料金がかかるというハードル・敷居が高くなる」と懸念し、「子どもたちが盛岡で育って、盛岡で子育てがしたいと未来も思えるような、持続できるような関係が残っていくような財政を期待している」と話した。

サンガキッズ 佐々木あおい所長
サンガキッズ 佐々木あおい所長

市が放課後児童クラブ運営団体に行った聞き取りでは、自己負担増加により半数以上のクラブで退所や利用控えが発生すると予測されているという。

32事業は見直し方針変更も

市は各事業の関係者への聞き取りで反対意見もあったことから、放課後児童クラブ利用料補助金や盛岡シティマラソンなど32の事業については協議や調整を継続するとの方針を示した。

つまり32事業は見直し方針が変わる可能性もあるが、それ以外は2026年度から順次見直す方針だ。

市は2026年2月に最終的な見直し内容を決定するとしているが、市民の思いが置き去りにならないよう丁寧な対応が求められている。

岩手めんこいテレビ
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