富山市八尾町の山間部、国道472号を南砺市利賀村方面へ約30分走った先、正間トンネルを抜けると右手に山小屋風の建物が現れる。そこに立つ独特な手作りの看板が、多くの通行人の目を引く食堂「聚楽創(じゅらくそう)」。看板には「熊料理」「イノシシ」「シカ」の文字が並び、一見すると少し怪しげな印象すら与えるが、暖簾をくぐると驚きの体験が待っている。


中華の技術を活かしたジビエ料理の魅力

店主の井上暁さんは、横浜中華街で修行を積んだ後、富山市で中華料理店を営んでいた。30年前に生まれ故郷の八尾町に戻り、当初はラーメンや丼物を中心とした食堂をオープン。開業から約5年後、知り合いの猟師から熊肉を譲り受けたことをきっかけに、ジビエ料理へと活動の幅を広げていった。

「看板は全部手作りだよ。看板を立ててもらったら、高つくからさ」と井上さん。節約精神が光る一面も。店名の「聚楽」は中国語で楽しい集まりという意味だ。

脂身が決め手の熊鍋

この店のおすすめメニューは「熊鍋」。取材日に提供されたのは3歳のメスの熊肉で、若いため特に柔らかいという。カツオ、昆布、シイタケでとった出汁と、熊の骨からとった出汁を混ぜ合わせ、醤油とみりんで味付けした特製スープと共に提供される。

「初めて食べます、熊の肉。色が濃いですね」とリポートをする島田嘉乃アナウンサー。実際に口にしてみると「脂身がプルプル。おいしい」と驚きの声を上げた。

「ジビエは脂がないとおいしくない」と井上さん。さらに「熊肉は冷え性にもいいから、これからの季節食べてほしいね。食べた後、ぽかぽかするかもしれない」と熊肉の魅力を語る。


来店客からも「臭みがなくて食べやすいし、肉厚でおいしい」「熊肉を食べる機会はあまりないが、豚肉や牛肉とは違った食感や味が楽しめる」と好評だ。
初心者におすすめのイノシシ料理

ジビエ初心者には、イノシシ肉を使ったメニューがおすすめという。店内でじっくり焼き上げた自家製のイノシシチャーシューを細かく刻み、チャーハンの具材として提供するスタイル。深い甘みと旨味が特徴だ。

「甘いですね」という島田アナの感想に、井上さんは「甘めのタレに一晩漬けてから焼くから」と調理法を説明。「わりとさっぱりしていませんか?」と聞くと、「部位によって違うけど、脂身の少なめのところを使っているから」と答えた。
今がシーズン、新鮮なジビエを

熊肉などのジビエは富山の猟師から直接仕入れ、井上さん自らが捌いて部位ごとに分け、料理に合った肉を選んで使用している。取材時点の数日前には狩猟が解禁となったばかりで、これからが本格的なジビエシーズンの始まりだ。
「これからジビエの時期に入るから、新鮮で良いお肉は先に無くなっちゃうから、できるだけ早く来てもらいたいね」と井上さん。シカ肉も今の時期はおすすめとのこと。

妻の裕子さんとともに切り盛りする「聚楽創」は、山の恵みを心行くまで味わえる、温かみのあるジビエ料理店として、地元の人々に親しまれている。
(富山テレビ放送)
