971件、これは県内でのクマの出没件数です。
今年は過去10年で最も多く、人身被害も発生しています。
なぜクマの出没が増え、どう対策すれば良いのか…。
専門家とハンター、それぞれの意見があります。
＊県自然博物園ねいの里野生鳥獣共生管理員 赤座久明さん
「これまでの大量出没、今年の準大量出没の年でも、すべての引き金は秋のドングリ、ブナ、ミズナラ、コナラの豊作、凶作によって、（クマの）出没が繰りかえされている」
こう話すのは、長年、クマの生態を研究してきた県自然博物園ねいの里の赤座久明さんです。
今年はクマのエサになるドングリなどの木の実が不作。
これが最大の要因だと話します。
＊猟師 石黒木太郎さん
「狩猟を始めた10年前に比べれば、明らかにクマが増えたと思う」
富山市旧八尾町大長谷地区の猟師、石黒木太郎さん。
1年間に仕留める野生動物はクマを含め100頭にのぼります。
石黒さんは猟師が減るなど様々な要因が絡み合い、そもそもクマの個体数が増えていると話します。
＊猟師 石黒木太郎さん
「日本全体の人口が減り、山間地から減っていて、人が住まなくなる。山に動物たちが増えやすい環境ができてしまった」
県によりますと、県内のクマの個体数は推測で、2009年は740頭でしたが、去年は1450頭と倍近くに増えました。
また、クマだけではなく、イノシシの個体数も10年前の倍近くに増えています。
＊猟師 石黒木太郎さん
「イノシシはドングリが大好きで、クルミも食べる。クマもクルミが大好き」
「そのエサをすごく競争している意味もあるので木の実が不作、さらに食べる動物の数も増えている」
イノシシによる農作物の被害を減らすため、県は箱ワナの設置を進めています。
しかし、石黒さんはかえってクマを人里に引き寄せる要因の一つになっていると指摘します。
＊猟師 石黒木太郎さん
「餌付けしてしまったということになると思う」
「クマは保護対象動物なので、イノシシの檻の中に入ってもクマだけ出られるように上に四角い穴が空いている。そこから出て行く」
「クマたちが里に下りて、イノシシの檻の米ぬかを食べるということを覚えたと思う」
これを学習したクマが食べ物を求めて人里に出没するようになり、庭先で柿を食べるクマが増えているといいます。
ねいの里の赤座さんは、そうしたクマによる人身被害を防ぐため、不要な柿の木を伐採するよう呼びかけ、様々な地域で伐採を手伝ってきました。
＊県自然博物園ねいの里野生鳥獣共生管理員 赤座久明さん
「2019年の秋には、78本の柿の木をみんなで協力して、村の中の食べない柿を全部処分した。それ以来、クマの気配が全然ない、つまり食べるものがない所にクマは出てこない」
「実際には平野部の柿の実がなりばらしで、そこにクマが出てきて、緊急銃猟をやっている」
これにハンターの石黒さんは。
＊猟師 石黒木太郎さん
「柿を切れという政策に反対」
「お腹の空いたクマが下りてきて、里山の柿の実を食べようと、里の柿がなかったら、どこにいく？柿の木は海まである、切るなら海側から全部切らないといけないと思う」
「柿がクマの趣向品で、柿を味わいに来ているなら柿をなくせば帰ってくれるかもしれないが、クマたちはお腹空いているので、柿がなくなれば他の物を食べる」
赤座さんも柿の伐採がクマの出没を防ぐ根本的な対策ではないとしたうえで、人とクマとの住み分けを図る対策を強化すべきと訴えます。
＊県自然博物園ねいの里野生鳥獣共生管理員 赤座久明さん
「柿の木の伐採だけで解決するとは思っていない」
「集落の周りの森の環境を利用していた森のような状況に近づける。河川敷の草原も動物の移動ルートを提供してしまっているから、きれいに片付ける方法を考えなければならない」
21日も富山市大沢野地域の柿の木にクマとみられる爪痕が見つかるなどしました。
今後も注意が必要です。
