物価高騰の波が止まらない。
山陰地方でも日々の食材から年末年始の特別な食事まで、あらゆる場面で消費者の財布を直撃している。
特に「トマトショック」と「エッグショック」と呼ばれる現象が各地で発生し、家庭の食卓にも大きな影響を及ぼしている。

鍋料理の具材として需要増える白菜
鍋料理の具材として需要増える白菜
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「お手頃な野菜はない」価格上昇に苦悩

鳥取市のスーパーマーケットでは、鍋料理の具材となる野菜が軒並み平年の1.2倍から1.5倍の価格で販売されている。
白ネギ1本150円、半分サイズの白菜214円、大根1本322円と高騰が続く中、スーパーの担当者は「お手頃な野菜はない」と厳しい状況を説明する。

トマトの平均価格のグラフ
トマトの平均価格のグラフ

中でも特に深刻なのがトマトだ。
熊本県が8月に記録的な大雨に見舞われたことで出荷量が減少し、日本農業新聞によるとトマトの平均価格は平年の2.4倍、1kg当たり1225円と過去最高を更新した。
鳥取市のスーパー「エスマート湖山店」では、2個入りのトマトが例年の1.5倍以上の538円で販売されている。

スーパーに並ぶトマト
スーパーに並ぶトマト

エスマート湖山店の西山連店長は「本当にトマトが好きな人しか手が出ないような価格になっている」と嘆く。
さらに入荷量の減少によってトマトコーナーも半分以下に縮小し、「そもそも商品が揃えられないのでラインナップとしては少しさみしい」と語る。

買い物客からも「この前トマト1玉が398円でちょっとやめておこうと思いました」、「高いと思います。(手が)出しにくいです」という声が上がっていた。

「価格の優等生」卵も高騰、洋菓子店も対応に苦慮

卵にも価格高騰の波
卵にも価格高騰の波

長く「価格の優等生」と呼ばれてきた卵にも価格高騰の波が押し寄せている。
鳥インフルエンザなどによる供給減少や年末に向けての需要の高まりが背景にある。

「価格の優等生」卵の値段も上昇
「価格の優等生」卵の値段も上昇

鳥取市のスーパーでは10個入りのMサイズが1パック312円、2Lサイズが1パック355円と、前年年の同時期と比べて40円から50円も値上がりしている。
西山店長は「卵は価格の優等生と昔から言われていましたけど、今はそうじゃなくなっている。ずっと価格が上がり続けているので、今がピークだといいんですけど」と懸念を示す。

クリスマスケーキも1割程度値上げへ
クリスマスケーキも1割程度値上げへ

この「エッグショック」はクリスマスシーズンにも影響を及ぼしている。
松江市の洋菓子店「松江クロード」では、クリスマスケーキの定番商品すべてを1割程度値上げせざるを得なかった。

イチゴや小麦粉などの原材料も値上がり
イチゴや小麦粉などの原材料も値上がり

松江クロードの佐川達也常務取締役は「どうしてもいろんなものが物価高になって、苦しいですけど1割ほど上げさせてもらったのが現状です」と説明する。
スポンジ生地に欠かせない卵の仕入れ価格が、前年と比べて1割程度上昇したほか、イチゴや小麦粉などほぼすべての原材料が値上がりしているという。

年末年始の定番も値上げ、「質」維持に苦心

「一文字家」のおせち料理
「一文字家」のおせち料理

物価高騰は、正月の定番であるおせち料理にも影響を与えている。
駅弁や仕出し弁当を製造・販売する松江市の「一文字家」は、現在予約を受け付けているおせち8種類すべてを去年から約1割値上げした。
原材料費や人件費の高騰に歯止めがかからない中、値上げに踏み切るのは2年連続となる。

地元食材を使用、手作りにこだわったおせち(提供:一文字家)
地元食材を使用、手作りにこだわったおせち(提供:一文字家)

一文字家の景山直観社長は「今まで通りの量と質を守って、値段を申しわけないが、1割程度上げさせてもらった」と語る。
地元食材を使用し、手づくりにこだわりたいという思いからのやむを得ない判断だったという。

一文字家のおせちのパンフレット
一文字家のおせちのパンフレット

「お客さんに買ってもらえるかどうかが勝負なわけで、今まで経験したことのないような値上がりだと思う」と景山社長。それでも「家族が揃って食べるわけなので、『何が入っているのだろう』話題で盛り上げられるおせちが作れればと思う」と前向きな姿勢も見せる。

創意工夫で危機を乗り切る

松江クロードの新商品「ゆきおんなケーキ」
松江クロードの新商品「ゆきおんなケーキ」

このような状況の中、各事業者は創意工夫で危機を乗り切ろうとしている。「松江クロード」では、現在放送中の松江が舞台の朝ドラにちなんだ「ゆきおんなケーキ」という新商品を開発。使用する材料は生クリームとスポンジだけにして、値上がりした材料を極力省き、テーマ性で勝負する戦略だ。

クリスマスケーキ(松江クロード)
クリスマスケーキ(松江クロード)

佐川常務取締役は「1年いろんな事があったと思うんですけど、おいしいねと言って、笑って1年を締めくくれるようなクリスマスを迎えてもらえれば」と願いを込める。

物価高騰の波が避けられない中、商品の質を担保しつつ、消費者が手に取りやすい価格にいかに抑えるか、経営者たちは難しい判断を迫られ続けている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

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