小型の無人航空機、「ドローン」がいま、相次ぐクマ出没の新たな対策や、夜空を彩るドローンショーまで、様々な場面で使われています。
ついにドローンが“生活の中にある”時代になるのでしょうか。
しかし、まだ“大きな壁”もあるようで…
【奈良県担当者】「ぶっちゃけ言いますと、軽トラとかバイクで運んだ方が当然、安くつく」
最新技術の裏側から今、直面する課題まで、「ドローン」をドドーンと徹底取材しました。
■夜空を彩る「ドローンショー」 見る人は「どうやって動かしている?」と興味津々
11月16日、「京都競馬場」上空には光を発する物体がありました。
【記者リポート】「夜空に巨大なゲートが浮かび上がりました」
キラキラ輝く光の正体がコチラ!
【記者リポート】「ずらーりと並んでいるのは、全てドローンです」
その数、1500機ものドローンが集結して作り出された、夜空を彩る「ドローンショー」です。
三冠馬「ディープインパクト」と「コントレイル」の競演。京都競馬場の開設100周年を記念したイベントで、無数の光が訪れた人たちを魅了しました。
【来場者】「どれだけお金が、かかってるんだろう?」
【来場者】「ラジコンみたいに、リモコン1台×本体1台で動かしている?」
■大阪・関西万博のドローンショーの裏側 毎日1000機、最終日には3000機を並べて
そんなドローンショーといえば…記憶に新しいのが、「大阪・関西万博」ですよね。
(Q.「立体ミャクミャク」も作った?)
【レッドクリフアニメーションチーム 阿部辰徳マネージャー】「そうですね、はい」
取材班は、ショーを手がけた担当者に接触。「最先端技術の裏側」を教えてもらいました。
(Q.どうやったら、あんなことができる?)
【レッドクリフアニメーションチーム 阿部辰徳マネージャー】「3Dソフト上で縦、横、奥行きに、メートル、ミリ単位で、この機体はどこにいるとか、数秒後にどこに行くみたいな。そういうふうなアニメーションをつけることができまして」
通常のショーでは1000機、そして最終日に使用したのはなんと「3000機」。
一週間かけて作ったという超緻密なデータを、ドローンに読み込ませて実現させたということです。
(Q.毎日1000機並べていた?)
【レッドクリフプロデュースチーム 岩崎郁也さん】「そうですね。毎日並べてました。フライトの大体6時間前から入って…。ミャクミャクが出たときは、やっぱり感動しましたね」
■一生の思い出に残る夜空からプロポーズ「サプライズドローンショー」
そして最近、新たに始めたのが、夜空からプロポーズができる「サプライズドローンショー」。
一生の思い出に残ること間違いなし!ですが、気になるお値段は…。
【レッドクリフ広報 玉越有美子さん】「数百万円ぐらいからご提供しています。ここぞっていう時に…」
今のところ最大の弱点は、「バッテリー」。ショーは15分ほどが限界とのことです。
■工事資材の運搬にドローン 市役所でも活用
ドローン技術の活用は、華やかなショーだけにとどまりません。
滋賀県の米原市役所で、職員2人がかりで運ばれてきた大きなドローン。何に使われているのかというと…。
【滋賀県米原市まち保全課 川瀬雅史課長補佐】「今現在、伊吹山での復旧工事が進められておりますが、そういった工事資材の運搬に主に用いています」
米原市では去年、伊吹地区で土石流が3度にわたり発生。伊吹山に生息するシカが、山に生えていた植物を食べつくし、土がむき出しになったことが原因とみられています。
そこで米原市では、人の力だけでは運べない、シカによる食害対策用の資材を山頂まで運搬したり、被害状況を撮影したりするためにドローンを活用することに。
今では、運搬用と撮影用、合わせて6台を保有しています。
【滋賀県米原市まち保全課 川瀬雅史課長補佐】「米原市は中山間地ということで、万一災害が発生した場合、孤立集落対策などへの物資運搬にも活用できると期待しています」
■人里に近づくクマを追い払う作戦 ドローンから猟犬の声
さらにドローンは、ことしならではの「災害」対策にも…。
【ドローンから流れる犬の鳴き声】「ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!」
先週から岐阜県内で始まったのは、人里に近づいたクマをドローンから流れる犬の鳴き声で追い払う作戦。
これは京都府福知山市の会社が開発したドローンです。
【猟犬】「ワン!ワン!ワン」
クマが嫌がる猟犬の鳴き声を、高性能のマイクで収録。
ドローンを使うことで、人が山に入らなくてもよくなるため、安全を確保できることが大きなメリットとなっています。
■奈良県の過疎地へドローンで物資を運ぶ
そして取材班は、“未来の暮らし”に向けて動き出す場所へ。
奈良県の北東部にある山添村。
担当者を訪ねると、そこには大きなドローンがありますが…。
【奈良県産業創造課 野田康彦課長】「奈良県で物流ドローンを活用して、事業をするにはどういうふうにやっていったらいいか実験を行っている」
奈良県は過疎化で山間部の物流の維持が難しくなる中、11月から、ドローンで日用品などを運ぶ実証実験を始めたのです。
■ドローンでピザを運んでみた
15日、行われたのは「ピザ」の配達。村にあるカフェの焼きたてのピザを2キロほど離れた集落まで運びます。
【記者リポート】「今ピザを乗せたドローンが空高く飛び上がりました」
担当者は飛行中の映像をモニターで確認。ドローンが設定したルートを、自動でたどるという仕組みです。
「ピザ」を待つのは、村の行事「地蔵まつり」に訪れていた皆さん。
【奈良・山添村の住民】「あーあれあれあれや!」
離陸からわずか3分…。
【記者リポート】「ピザを乗せたドローンが、形を崩さないようゆっくりと降りてきます」
喜ぶ村のみなさん!
【奈良県産業創造課 野田康彦課長】「無事に着きました。『熱っ~熱~』言うてもらわな」
■ピザの形は崩れず到着 高まる“ドローンに対する期待”
さあ、果たして「ピザ」は無事なのか…アツアツなのか?
【奈良・山添村の住民】「湯気は出てない…」
湯気はありません…が、形は崩れずに届きました!
【奈良・山添村の住民】「おいしいです!」
【奈良・山添村の住民】「おいしいピザや」
【奈良・山添村の住民】「そんな熱い熱い!いうことはない」
皆さんピザを完食した後は、ドローンに興味津々のようです。
【奈良・山添村の住民】「車を使わずに物を食べられるというのは、ありがたい」
(Q.料理のデリバリーはない?)
【奈良・山添村の住民】「ないです、ないです、もちろんない!」
【奈良・山添村の住民】「ドローンが運んでくれるなんて」
【奈良・山添村の住民】「どうもありがとうございますお空から!」
【奈良・山添村の住民】「道寸断されたら、あそこの山崩れたら、孤立してしますやんか。『本当に届けられんねんな』と、実感しました」
■実用化の課題は「ぶっちゃけ軽トラとかバイクの方が安くつく」
ドローンに期待する村の人たち…しかし、実用化するには、「“採算”が取れないことが課題だ」と担当者は話します。
【奈良県産業創造課 野田康彦課長】「操縦をする人、場所によったら監視する人を下に置かなければならない。人的なコストがかかります。今はもう、ぶっちゃけ言いますと、軽トラとかバイクで運んだ方が当然、安くつく」
実用化までは、まだ少し道のりはあるようですが…“ドローンのある生活”は、すぐそこまで来ているのでしょうか。
■ドローンの経年劣化やコストがかかり、ドローン配送を取り止めた自治体も
実用化への課題は採算面です。長野県・伊那市ではドローン配送をドローンの経年劣化や保守管理などのコストがかかることから、今年度から取り止めています。
【共同通信社編集委員 太田昌克さん】「ピザを食べる皆さんの笑顔を見ていると、デリバリーがないという話もありましたけど、山間地域はこういうニーズがあるはずですよね。全国で伊那市や山添村も、うまく連携しながらモデルケースみたいなものを作っていけないのかなと。
それがビジネス化されたら採算もとれてきますから、課題はあると思いますが、思い切って国が予算をつけて、山間地域での利用促進みたいなモデル事業を組んでみるのも1つの手かなと思いましたね」
上手く活用することができれば、重要なインフラ・ライフラインにも繋がり、社会課題の解決になる助けとなる存在のドローン。これからに期待です。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年11月17日放送)