小泉防衛相は17日、日インドネシア外務・防衛閣僚会合(2+2)のため来日中のシャフリ国防相を海上自衛隊横須賀基地に招き、海自の最新鋭護衛艦「もがみ型」と潜水艦を視察した。
インドネシアは、南シナ海で一方的な現状変更の試みを続ける中国を警戒し、海自の護衛艦や潜水艦などの導入に興味を示している。
横須賀基地で海自最新鋭の「もがみ型」護衛艦と潜水艦をアピールした後、防衛省で行ったシャフリ国防相との会談の冒頭、小泉防衛相は「インドネシアとの防衛面での連携と協力を、スピード感を持ってこれまでにない高みに引き上げたい」と強調した。
小泉氏は会談後の取材に対し、インドネシアとの防衛装備移転の議論の詳細については回答を避けたものの、「シャフリ大臣と自衛隊の視察の中で、ものすごい数の質問も含めて、様々な議論を行って、我々側からも説明を行った」と“手応え”を語り、「各国へのトップセールスを強化していく機会となった」と、自らの“発信力”をさらに発揮していく考えを示した。
小泉氏はかねがね、「防衛装備移転は、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出するための重要な政策手段であり、地域の平和と安定のために、ASEAN以外の国も含め、各国へのトップセールスを強化をしていく」と繰り返すとともに、中国を念頭に「日本が防衛装備品を移転をしなければ、他の国が売るわけだ」とも強調するなど、自らがトップセールスして防衛装備品の輸出拡大を進めたい考えを強く示している。
小泉氏が「トップセールス」に力を入れる背景にあるのは、「政策」と「戦略」の双方における日本の安全保障上のメリットだ。
防衛装備品の輸出拡大は、国内の防衛産業を活性化し防衛省が調達する装備品の開発や生産のための基盤強化に繋がることに加え、例えば「同じ艦艇を持つことで周辺国との相互運用性が高まり、連携強化を示せすことができる」(防衛省関係者)という意義もある。
最近では、オーストラリア海軍の新型フリゲート導入計画で「もがみ型」護衛艦が選定され今年度中に契約を結ぶための調整が進められていて、防衛省関係者は「オーストラリアとは運用面のほか、情報共有や作戦、補給の面でもかなり協力できる」と期待する。
インドネシアとの協力は「まだまだこれから」というものの、同じ装備品を持つことになれば、南シナ海で力と威圧による海洋進出を強める中国に対し「連携強化を示す」ことにつながるという。
今月1日にASEAN拡大国防相会議のためマレーシアを訪問した小泉防衛相が、「いくつかの国からは日本の潜水艦を含む日本の防衛装備品の取得について関心が示され、今後協議を進めることになった」と明かした通り、高性能で高品質な日本の装備品に関心を示す国は多い。
一方で、四半世紀にわたり自民党と連立政権を組んできた公明党が武器輸出に慎重な立場からブレーキ役となってきたため、日本政府は現在、完成品で輸出できる防衛装備を「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5つの目的(=「5類型」)に限っていて、完成品の輸出は2023年のフィリピンへの「防空レーダー」1例のみにとどまっている。
護衛艦など攻撃能力の高い装備は輸出できず、オーストラリア海軍への「もがみ型」導入も「輸出」ではなく「共同開発」での契約を目指している。
しかし、連立の枠組みが変わり、10月に交わされた自民党と日本維新の会の連立政権合意書に「5類型を撤廃する」と明記され、両党は来年の通常国会中の撤廃を目指し、年内にも協議会を始める方向だ。
トップセールスに力を入れる小泉氏も、「防衛装備移転をさらに推進していくための制度面の施策について、スピード感を持って具体的な議論を進めることが重要だ」と、5類型撤廃に向けた議論を加速させたい考えを示していて、近い将来、自衛隊に加え周辺の友好国が導入した“日本製”の防衛装備品が地域の平和と安全を守る最前線で活躍する姿を見られるかもしれない。
