世界自然遺産・白神山地の麓、秋田県藤里町藤琴に、4年ぶりに営業を再開した一棟貸しの民泊施設「清流荘」があります。

近くにはブナの原生林が広がる「岳岱自然観察教育林」があり、白神山地を源流に持つ藤琴川が流れ、夏は川遊びや釣り、秋は紅葉を楽しむ人たちが訪れます。

この施設を運営しているのが、藤里町の地域おこし協力隊の佐藤成希さんです。奈良県出身の佐藤さんは、大阪の大学を卒業すると、東京の家電量販店などに勤務し、その後奈良に帰って、携帯電話の販売員として働いていました。

転機が訪れたのは2024年8月。ごみ拾いの課外活動に参加するなど、学生時代から環境問題への関心が高かったという佐藤さんは、友人に誘われ、神奈川県で開かれた「生物多様性国際ユース会議」に参加しました。ここで、約100カ国から集まった世界の人たちと、環境問題や自然との共生について話し合いました。

藤里町地域おこし協力隊・佐藤成希さん:
「その会に参加したことで、自分も仕事として環境や生き物を守れるような存在になりたいと思って転職活動をはじめた」

この経験を経てたどり着いたのが、藤里町の地域おこし協力隊への応募でした。ブナの森が育む生態系や自然に魅力を感じ、数ある募集の中から藤里町を選び、2025年4月に隊員に着任しました。そんな佐藤さんに与えられたミッションの1つが「清流荘」の営業再開でした。

清流荘は1983年に建てられ、地元の有志団体が運営を担ってきました。白神山地の登山客をはじめ、多くの人が訪れていましたが、スタッフの高齢化により2021年に休業。休業を惜しむ「白神山地ふじさと観光協会」が施設の営業再開を模索していました。しかし人手が足りず、再開が実現しない状態が続いていました。

こうした中で地域おこし協力隊になったのが、佐藤さんでした。着任後すぐに、観光協会から「ことし夏の再開を目指して準備を進めてほしい」と頼まれた佐藤さん。

藤里町地域おこし協力隊・佐藤成希さん:
「思ったよりすぐだと思いつつも、自分が利用者側だったら夏これだけ川が近くて利用したいなと思うので、上司と相談して8月再開でやっていこうとなった」

佐藤さんは早速、営業再開に向け活動を始めました。6月には「清流荘ピカピカ大作戦」と題した清掃イベントを開催。町内に住む有志13人が、快適に過ごせる施設にしようと、施設内の清掃を行いました。

藤里町地域おこし協力隊・佐藤成希さん:
「自分がここに来るまで、地域の人が連綿と紡いでこの宿を守ってきたという話は聞いていたので、地域の人と協力しながら手を取り合ってやっていきたいと思ったので、このイベントを開催した」

佐藤さんの努力が実を結び、8月1日、清流荘の営業再開が叶いました。11月5日時点で、国の内外から29組の宿泊客が訪れ、施設を満喫しています。

居間に置かれたクマ除けの鈴は、付近でのクマの出没を心配した地元住民が手作りしたものです。地域の人たちの温かみが感じられる施設は、利用者に大好評だと言います。

一方で、行楽シーズンが終わり、清流荘は冬を迎えようとしています。利用客の減少が見込まれる中、佐藤さんは新たな取り組みの準備を始めています。

藤里町地域おこし協力隊・佐藤成希さん:
「冬は冬キャンプとして、この建物の正面、今は駐車場として主に使っているスペースがあるが、キャンプ場としての許可は取ってあるので、その方向で展開していきたい」

四季を通して、清流荘そして藤里町を楽しんでもらいたいと意気込む佐藤さんに、今後の目標を聞きました。

藤里町地域おこし協力隊・佐藤成希さん:
「観光資源のガイド協会などと連携して、宿泊だけでなく白神山地のフィールドも含めて藤里町を楽しんでもらえるような観光の在り方をつくっていきたい」

佐藤さんはこれからも、清流荘を観光の拠点に藤里町の魅力を伝えていきます。

秋田テレビ
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