11月1日は、本棚に並ぶ本に見立てて全国の書店業界が定めた「本の日」。福井県内に拠点がある勝木書店グループでは毎年、この本の日に合わせて書店員が厳選した本を独自のコレクションとして販売するユニークな企画を行っています。書店員おすすめの“最高の一冊”を取材しました。


福井市のスーパーカボス二の宮本店では、出入り口のすぐ近くに「カボスコレクション」の特設コーナーが。
  
カボスコレクションとは、県内外にあるすべてのグループ店18店に所属する約300人の書店員らが、投票などを通して厳選した文庫本を発表する企画です。
 
優れた作品がありながら、単行本や新書の陰に隠れがちな文庫本に光を当てようというユニークな取り組みです。
  
6回目を迎えた今年は、11の作品がノミネートされました。
 


コレクションの立ち上げから関わる1人、樋口麻衣さんが「今年も幅広いジャンルの作品がそろった」と紹介してくれました。
   
今回のノミネート作品は、ミステリーやホラー、家族を題材にした小説などジャンルもさまざま。本の帯には書店員の推しのメッセージが添えられています。
  
樋口さんがおすすめする2作品もノミネートされています。「まずは…『私はチクワに殺されます』という作品。五条紀夫さんは個人的に注目している作家で、チクワの穴をのぞくと人の“死にざま”が見えるという謎の設定から始まります。分からないまま読み進めるとすごいところに連れていかれ、チクワ・サスペンスという謎のジャンルに入る。読み終わると、チクワ!と叫びたくなります」

「もう一つが『ミシンと金魚』です。認知症を患う主人公カケイさんが、どんなふうに生きてきたかを振り返って一人で語る作品。ヘルパーが今までの人生を振り返って幸せでしたかとカケイさんに問うのですが、その答えがかっこよくて、美しくて打ちのめされた。カケイさんの話に耳を傾けてほしい」(樋口さん)
 
ノミネート作品は、これまで2カ月間店頭に並べられ、最も売れた本『人間やめたマヌルさんが、あなたの人生占います』が今年の金賞に決まりました。
 
樋口さん:
「人間をやめてネコになったマヌルさんが喫茶店の片隅で占いをしているという物語。普段、頑張りすぎている人に届けたい。心に寄り添うマヌルさんの一言が悩みを解決してくれます」
  
金賞作品は今後1年間、グループ全店で一番目立つ棚に並べられます。

年々、カボスコレクションは知名度も上がり、2024年に金賞を受賞した作品はカボスグループ全店で合わせて2800冊を販売。コレクションの中では過去最高の売り上げを記録しました。
  
樋口さん:
「手のひらに収まる本ですが、その中には様々なストーリーが詰まっている。想像できない世界を体験してほしい」
  
出版不況とも言われる中、地方を拠点とする書店グループの販売戦略は大手出版社などからも注目されています。
   
カボスコレクションのノミネート作品は、金賞以外も当面、お薦め本として販売されます。        

福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。