総人口に占める65歳以上の人口の割合が過去最高を更新する中、近年ニーズが高まっていると言われるアニマルセラピー。ただ、国内ではまだまだ認知度が低く、普及や浸透にあたっては課題が山積している。
動物と触れ合い元気をもらう
犬や猫などの動物との触れ合いを通してストレスの緩和や癒しの効果が期待されるア二マルセラピー。
近年は高齢者施設や障害者施設、病院などでも取り入れるケースが増えているという。
この日、施設で動物たちと触れあった高齢者からは「元気なってまた犬を飼いたい」「パワーをたくさんもらって元気になりたいと思った」といった感想が聞かれ、県動物保護協会の佐久間信行さんは「動かない手が動いた、普段見られない笑顔が見られたという声をたくさんもらう」と話す。
ただ、海外では治療として認めている国もあるアニマルセラピーだが、いまだ国内では認知度が低いのが実情だ。
ボランティアだけでは限界
アニマルセラピーがなかなか普及していかない理由…それは参加してくれる犬や猫が少ない点にある。
県動物保護協会が実施しているアニマルセラピーの場合、飼い主の善意に頼っている部分が大きく、施設への訪問は年に1回程度にとどまっている。

佐久間さんは「とても良い活動だとやっているボランティアの人も思うし施設側からもそういう声をたくさんもらう。できれば犬も猫も多くの飼い主に参加してもらえると良いが、少し認知度が低い気がする」と認識している。
アニマルセラピーを事業化
こうした中、9年前からアニマルセラピーを事業化しているのが日本アニマルセラピー協会の萩原裕二さん(56)だ。
元々は保険会社の営業をしていたが、愛犬との生活を通じてアニマルセラピーに興味を持ったことで47歳の時に退職。
現在は愛犬4頭と共に年間100回以上、静岡県内の病院や高齢者施設を訪問していて、「特に犬は人間に近い存在で人間が何を感じているか、たぶん犬なりに感じ取ってくれる。とにかく不思議な変化を与えてくれる。例えば病気の人なら治療意欲を作ったり、リハビリが必要な人が腕を伸ばしたり、言葉で『やろうね』というよりもこの子たちがいることでそういった変化を及ぼしてくれる。それが一番の魅力」と力説する。
認知度を高め効果の説明を
しかし、移動に使用する車の維持費やガソリン代、セラピー犬のトリミング費用など年間350万円ほどを要することから、事業収入だけでは食費や医療費といった飼育費用を賄うことができず、貯金を切り崩しながらの生活を送っている。

このため、アニマルセラピーの効果について研究を重ねる常葉大学健康科学部の熊坂隆行 教授は、活動を多くの人に知ってもらうことに加え「セラピー犬を育てるには多くの費用と時間がかかる。そういうセラピー犬を育成するための費用を支援してくれる団体、企業の力が必要」と述べた上で「いろいろな角度から『このような効果があるので協力をお願いします』という形が良い」と指摘する。
総務省によると2025年9月時点の推計で総人口に占める65歳以上の人口の割合が29.4%と過去最高を更新した日本にあって、アニマルセラピーのニーズは今後増えると予想されるだけに、持続可能な仕組みを作るためにもまずは事例の積み重ねと効果の検証が求められている。
(テレビ静岡)
