村上遥アナウンサー:
TSKさんいん中央テレビと山陰中央新報のコラボ企画『カケル×サンイン』。テレビと新聞、それぞれの視点で取材し、ニュースの核心に迫ります。
平川翔也アナウンサー:
今回のテーマは『デフリンピック』。11月、東京で開かれる『聴覚障がい者のオリンピック』とも呼ばれるスポーツの祭典です。今回の東京大会では21の競技が行われますが、このうち『ゴルフ』は前回のブラジル大会で採用され、日本は初出場。その代表に選ばれたのが鳥取ろう学校の教員、前島博之さん。鳥取から世界の舞台に挑む前島さん、狙うのは金メダルです。
力強いドライバーショット。
前島博之選手:
「得意です、ドライバーは。300ヤードは平均で飛ぶようになってきています」
デフリンピックゴルフ日本代表の前島博之さん。
鳥取ろう学校で教壇に立ちながら、競技を続けています。
武器は、豪快なドライバーショット。
この日の練習でも300ヤード超えを連発です。
聴覚障がい者の競技『デフゴルフ』。
ルールは一般のゴルフと同じですが、選手は補聴器を外してプレーします。
前島博之選手:
「補聴器を外すと、平衡感覚をうまく保つことが難しい。ほかにも風の音とか周りからの情報が入ってこない」
日常生活では補聴器を装着している前島さん。
「無音」の中でのゴルフは想像以上に過酷だといいます。
なかでも風をどう攻略するか、肌で感じるほか、旗や木の揺れなど視覚から得られる情報をもとに風向きや強さを判断し、ショットを決めなければいけません。
前島博之選手:
「私はアプローチショットが苦手です」
課題のアプローチショット。
この日は100ヤードまでのショットを重点的に練習。
距離感を体に覚えこませます。
前島博之選手:
「ここ(練習場)ではできるけど、コースではできない、力んでしまう」
前島さんは生まれつき耳が聞こえません。
子どものころから体を動かすのは大好きで、ろう学校時代は陸上部に所属。
デフリンピックにも、走り幅跳びや十種競技などで3回出場しました。
ただ、メダルには届かず、2017年の大会を最後に競技を続けることを断念。ゴルフに転向しました。
もともと8歳のとき始めたゴルフ。前島さんは2024年のデフゴルフ日本選手権で優勝。世界大会でも6位入賞を果たし、今回のデフリンピックの代表に選ばれました。
前島さんは母校・鳥取ろう学校の先生。
体育の授業では…。
前島博之選手:
「あと一周!」
間近に迫った駅伝大会に向け、子どもたちと一緒にトレーニング。
体育館では跳び箱を指導。
授業中も笑いが絶えません。
教壇に立ちながら世界に挑む前島さんは、子どもたちにとって憧れの存在です。
生徒:
「かっこよくて、心が強そうな感じがします」
「面白いです。全力を発揮してメダルとってほしい」
「前島先生をみんなで応援してほしいです」
前島博之選手:
「『私が今まで頑張ってきたこととかを子どもたちに伝えることができたらな』という思いで学校の先生をしています。(生徒の期待は)プレッシャーはプレッシャーですけど」
デフリンピックまであと半月。
今は週に2、3回、勤務のあと市内の練習場で調整を続けています。
前島博之選手:
「子どもたちもメダルを期待しているので、子どもたちの期待に答えられるようにメダルを取って帰って見せたいと思います」