春になると食卓に欠かせない“タケノコ”。
特に京都産は質の良さで知られていますが今、大きな危機を迎えている。
生産者:今の時期は本来は青々としている…。
記者:確かに全然葉っぱの色が違いますね。全く光景が違いますね。
京都の竹が枯れている!?
その犯人は…生産者:蛾に葉を食べられた。
なんと「蛾(が)の幼虫」。
ものすごいスピードで竹の葉っぱを食べているというのだ。
さらに別の竹林でも…。
府の職員:これこれこれ…これだ。この中に幼虫がいたり、サナギがいたりするんですけど。
タケノコに加え美しい景色も危ない!?「newsランナー」が京都の竹林の異変に迫る。
■美しい色の白さ、身に柔らかさが特徴の京都産タケノコ
いま京都の「タケノコ」が危機を迎えている。
その実態を探るべく取材班が訪れたのは、京都府・長岡京市にある小川食品工業。
(Q.今どんな作業を?)
工場長:ことし(春に)とれたタケノコを缶詰で保存してあるんですけど、それを開けて、袋詰めにしている。
小川食品工業は、タケノコの生産から加工、販売までを一手に手掛ける。
(Q.国産タケノコと京都産の違いは?)
工場長:国産はちょっと硬いんです。京都産は個体差あるけど柔らかい。
記者:触っていいですか?あ、全然違いますね。
京都産のタケノコは、美しい色の白さや、身の柔らかさが特徴で、全国の料理人が買い求める。
そのタケノコが今年、異常な事態に見舞われているというのだ。

■2025年は異常な大不作
工場長:奇数年ばかり並べてるんですけど、タケノコは豊作年と不作年が交互に来る。ことしは不作年といわれる年で、2021年からすると3分の1くらい。
この地域で、タケノコが不作になる奇数年。中でも、2025年のことしは、異常な大不作に。
一体、今、京都の竹林で何が起きているのか。

■「蛾に葉を食べられた」 葉が茶色く変色した竹林
実情を探るべく、取材班がタケノコ畑に案内してもらうと…。
(Q.この時期の竹の葉は緑?)
小川食品工業 小川昇吾農園部長:竹は春、タケノコの収穫が終わるころに(葉を)落として生え変わる分もあるけど、今の時期は青々としてるのが基本。
小川食品工業が管理する竹林は、青々と元気な葉を付けているが、隣の別の畑はというと…。
(Q.全く違う光景ですね?)
小川食品工業 小川昇吾農園部長:そうですね。
広がっていたのは、葉が茶色く変色した竹林。
一体なぜこのようなことになっているのだろうか。
小川食品工業 小川昇吾農園部長:蛾(が)に葉を食べられた。(うちの竹にも)おととし少し出ていたけど、なんの虫か分からん。去年で分かったんです。シナチクノメイガということが。

■中国原産のシナチクノメイガ 被害ウケた畑のタケノコ収穫量は激減
京都の竹林に異変をもたらしているのは、中国原産のシナチクノメイガという蛾。竹に寄生した幼虫が葉を食べることで竹が弱り、タケノコの成長を妨げるのだ。
5年前に愛知県で初めて確認されたこの蛾。輸入した竹に卵やさなぎが付着し、持ち込まれたと考えられ、その後、京都や兵庫、大阪でも確認されている。
小川食品工業 小川昇吾農園部長:今年は疲れましたわ…。このやぶで(タケノコが)出たのが畑の下の方だけだった。ここだけで終わった…。
(Q.他、全部ダメ?)
小川食品工業 小川昇吾農園部長:ひょろひょろばっかり。
去年、蛾の被害を受けたこの畑の収穫量は、激減したという。
京都府によると現在、タケノコへの顕著な被害が確認されているのは、長岡京市や向日市、京都市西京区など。
しかし取材を進めると、その生息域が拡大している実態も見えてきた。

■青いはずの竹林が茶色に…「全く無事ではない」と府の職員
取材班が向かったのは、長岡京市とは市街地を挟んで反対側のエリアだ。
蛾の被害調査をしている京都府の職員に同行してもらい、タケノコ畑に向かうと…
筍農家 前田陽彦さん:ひどいでしょ。
京都乙訓農業改良普及センター 岩川秀行さん:ちょこちょこやられてますね。
筍農家 前田陽彦さん:かなりやられてます。この辺は。
京都乙訓農業改良普及センター 岩川秀行さん:上見たときに、真っ暗に近いのが正常なんですよ。全く無事ではない。
こちらの畑では、ことし6月ごろに被害を確認。
前田さんはタケノコ畑の変化をドローンで記録していた。
6月ごろに撮影した映像では青々としていた竹林が、9月の映像では茶色に変色してしまっているのが分かる。

■「ことしはもっとやばい」 京都で広がる蛾の被害
竹には蛾の痕跡が今も残されていた。
京都乙訓農業改良普及センター 岩川秀行さん:これこれこれ。残骸はあります。中にこういう繭を作って…。これは“キモンホソバノメイガ”。
見つかったのはシナチクノメイガとは、別の種類の中国原産の蛾が羽化した繭。
見えてきたのは、複数の種類の蛾が京都で広がっている実態だった。
筍農家 前田陽彦さん:毎年軽トラック1台分ぐらい掘るんですよ、タケノコを。半分以下、もっと少なかったですかね去年。ことしはもっとやばいと思いますよ、この状況やと。収穫量は下がると思います。ゼロではないですけど。
深刻な京都の名産品タケノコへの被害。

■竹林でも蛾の幼虫のふんを発見
さらに京都といえば美しい竹林が観光名所となっているが、そういった場所への影響はないのだろうか。
「newsランナー」は蛾の生態に詳しい大阪公立大学の吉安裕客員研究員に同行してもらい、嵐山周辺で被害の実態を調査することに。
向かった場所は、嵐山の中心部から車で20分ほど南の山の中。
調査を始めてから2時間ほどがたったころ…。
大阪公立大学 吉安裕客員研究員:これこれ。
吉安さんが何かを見つけた。
大阪公立大学 吉安裕客員研究員:こういうふうにして、(葉を)食べるんですよ。ふんがあるでしょ。
(Q.蛾の幼虫のふんですか)
大阪公立大学 吉安裕客員研究員:そうです。

■観光地も被害 「蛾の天敵少なく、まとまった規模の竹林が多い」拡大の要因か
さらにその奥に進むと…広がっていたのは、被害のあったタケノコ畑と同じような光景。
幼虫を確認することはできなかったため、「どの種類の蛾かは、断定はできない」とのことだが…。
(Q.外来の蛾の可能性は?)
大阪公立大学 吉安裕客員研究員:ありますね。もう大阪まで来てるんだから…。ほとんど下草もないし、環境要因としては、蛾の幼虫が(エサを)独り占めみたいな。
京都には天敵となる生物が少なく、まとまった規模の竹林が多いことも爆発的に被害が拡大している要因だと指摘する。

■対策は農薬の使用
京都が誇る観光名所・嵐山にも刻一刻と迫る蛾の脅威。
京都府ではことしから緊急の対策として、蛾に有効な農薬「エスマルクDF」の使用を許可。
※希釈して使用することで人体にほぼ影響なし
取材した小川食品の畑ではことし、その農薬を利用したおかげで竹の葉が守られた。
春の味覚、そして美しい景観を守るために迅速な対策が求められている。
(関西テレビ「newsランナー」2025年10月30日放送)


 
       
         
         
        