市街地に出てくるクマにどう対処するか。10月24日、札幌市で北海道内で初めて「緊急銃猟」が実施された。
クマ2頭が駆除され、住民の被害はなかったが、課題も見えてきた。
「緊急銃猟」によりクマ2頭の緊迫の駆除劇
「バン!」(発砲の音)
「いま銃声が聞こえました」(吉村直人記者)
10月24日午後2時30分すぎ、自治体の判断で発砲できる「緊急銃猟」により、クマ2頭が駆除された。
北海道内で初の実施だ。

このクマ2頭が目撃されたのは10月24日午後0時30分ごろ、札幌市西区の「西野すみれ公園」周辺だ。
体長は約70センチから80センチ。
2頭は10月23日と同じ個体とみられ、公園から山のほうへ移動した後、居座り続けたため、札幌市は市民に緊急の危険があるとして「緊急銃猟」の判断を下し、駆除に至った。

「住宅がたくさん立ち並んでいる場所なので、緊急銃猟の選択がまず第一優先になった。ある程度こちらのほうでうまく手順を踏んで、順序だててやっていくことができた」(札幌市環境共生担当課 坂田一人課長)

迅速な対応と羞恥徹底への課題
初の緊急銃猟は事故なくできたものの、課題も見えてきた。
1つ目は手順の多さだ。
通報から駆除まで2時間あまり。
この対応のスピードを住民はどう捉えているのか。

「ベストなんじゃないか」
「遅いですね。もっともっと早く(してほしい)。全然外に出られない」(いずれも付近の住民)
もしクマが動き回ればスムーズに対応できるのか、懸念が残る。

2つ目の課題は「周知の徹底」だ。
現場の公園周辺では駆除前日の10月23日にも、2頭のクマが出没を繰り返していた。
緊急銃猟が準備されたが、現場に近づいた住民の対応をしている間にクマが姿を消す一幕があった。

札幌市によると、10月23日の規制対象世帯は669世帯。
10月24日は457世帯が対象となった。
対象になれば現場付近は通行禁止となり、エリア外への避難か、屋内に退避することになる。
札幌市は両日ともに札幌市のホームページやSNSで発信したほか、現場で危険性の高い世帯を中心に戸別に訪問して呼びかけたとしている。

住民は―。
「(警察の戸別訪問で)出ないで下さいと言われた。警察も大変だと思った」
「市のホームページで知った。警察が『外に出ないように』と来た」
「もっと大きな声でゆっくり回ってほしかった。聞こえなかった人も。高齢者は耳が遠いから」(いずれも付近の住民)
札幌市がすべての世帯を戸別訪問することは現実的ではないのも事実だ。
北海道内初の緊急銃猟。
今後に向けて、さらなる検討も必要になりそうだ。

では今回の「緊急銃猟」と、今まで主に行われてきた「警察官職務執行法」による発砲では、何が違うのだろうか。
環境省のガイドラインによると、「緊急銃猟」は、クマが人の日常生活圏に侵入し、その後安全確保を行い住民などに弾が当たる恐れがない場合に、自治体の判断によって撃つことができる。
例えばクマが建物に入り込んだ場合などの膠着状態にある時に、緊急銃猟が行われる。
一方で「警察官職務執行法」は、クマが人里に出没し具体的に危険が生じ、特に急を要する場合に警察官が発砲の命令を出す。
例えば公園に出没したクマが人に接近している場合など、差し迫った場面で使用される。

今回の緊急銃猟は、通報から駆除まで2時間あまりを要した。手順は順調だったのか。
「私としては非常にスムーズに感じました。札幌市の職員の方がいろんな手続きをされている姿を目の当たりにしましたが、粛々と進んでいたというのが私たちの感想。緊急銃猟の4つの要件を満たすために、フルスピードですべての手順をこなしていた。頭が下がる思いです」(ヒグマ防除隊隊長の玉木康雄さん)
「私たちハンターが現場に着いた時点で、およそ半分までは完成しているんです。通行禁止や避難誘導は、ある程度警察の方との協力を得ながら進めておけば、私たちが到着した時点で要件があらかた満たされている。そして緊急銃猟を行うことを発表した後、初めて私たちに赤い腕章が手渡されます。今回の札幌市の例は、おそらく日本全国の中でもモデルケースになるぐらい、しっかりと手順を踏んだ完璧なものだったと私は思います」(玉木さん)

実は前日23日にも、緊急銃猟が一時検討されていた。
だが住民が現場に近づいてしまい発砲ができず、その間にクマが山に立ち去ったため中止に。
この日に関しては、撃てる状況にあったのだろうか。
「正直に申し上げると、前日の方がはるかに射程距離が短かく、より安全に確実に捕獲できる条件は満たされていました。翌日24日は確実に捕獲はできましたが、難易度は3倍以上に広がっていました」(玉木さん)
「可能な限り条件を十分以上に満たせている時の方が、安全に捕獲できる。そういったことを考えると、住民の方へ周知いただき、そして皆さんからもご協力いただいた上で、緊急銃猟をしていく必要があると思います」(玉木さん)

 
       
         
         
        