北海道南部の漁港で12月、養殖魚が全滅する被害が相次いでいます。イワシの大群が漁港に押し寄せ、海水中の酸素濃度が低下したことが原因とみられています。専門家は「今後も近くの漁港で同様の現象が起きる可能性がある」と警戒を呼びかけています。


 18日午前、松前町の江良漁港で異様な光景が広がっていました。いけすの網に大量のイワシが突き刺さり、養殖用ホッケ約2000匹が全て死んでいたのです。このホッケは冬に釣って集め、いけすで育てたのち、2026年春ごろに水揚げする予定でした。陸にはイワシが打ちあがり、船の近くにも浮いていました。


 被害は松前町だけではありません。14日朝にはせたな町の久遠漁港で養殖トラウトサーモン約6600匹が、17日朝には上ノ国町の上ノ国漁港大崎地区でも約5000匹が死んでいるのが見つかりました。

 久遠漁港では来年5月ごろに水揚げし、約2500万円の売り上げを見込んでいました。上ノ国漁港では2025年から養殖事業を始めたばかりで、初期費用2650万円をかけ、約1000万円の売り上げを予定していたといいます。


 なぜイワシの大群が漁港になだれ込んだのでしょうか。

 北海道大学大学院水産科学研究院の中屋光裕准教授は「何か大きい生物に追われて、パニック状態になって泳いできた可能性が高い」と指摘します。

 地元の人も「イルカに追いかけられたのかな。イルカがいっぱいいたから」と話していました。

 パニック状態で泳いだ魚は通常より多くの酸素を消費するため、一斉に港に押し寄せることで周辺の酸素が急激に減少し、養殖魚の大量死につながったとみられています。


 北海道南部では過去にも同様の現象が起きています。2023年12月には函館市の港に大量のイワシが押し寄せ、翌月には骨などの残骸が海岸を埋め尽くしました。

 中屋准教授は「海水温が下がり、魚が南下してきている。今後も近くの漁港で同様の現象が起きる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。

北海道文化放送
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