静岡県伊東市の市議会では10月31日臨時会で不信任決議案が出され、田久保眞紀 市長は失職する見通しです。こうした中、議論を呼んでいるのが “市長がもつ議会の解散権”。一連の経緯と市長の権限を考えます。
伊東市・田久保眞紀 市長(5月18日):
どうして誰かが決めたことに従わなければいけないのでしょう。一体、市政は誰のためにあるのでしょう。これは選挙の革命です、伊東の革命なんです
5月に行われた伊東市長選挙。
田久保眞紀 市長は、しがらみのない政治と市民の為の改革を訴えて選挙戦を戦いました。
そして3期目を目指した現職との一騎打ちを制し、市長に就任しました。
大きな拍手に笑顔で応えて市役所庁舎に入り、市職員へのあいさつでは…
伊東市・田久保眞紀 市長(5月29日):
伊東市役所がすばらしい職場として、一緒に仕事ができて良かったと言われるようなリーダーになれるよう誠心誠意努めてまいります
しかし…
伊東市・田久保眞紀 市長(7月2日):
卒業は確認できませんでした。除籍であるとその場(東洋大学)で判明しました
伊東市・田久保眞紀 市長(10月):
嘘はついていません
応援演説中に詰め寄る人(10月):
あんたは嘘をついた
伊東市・田久保眞紀 市長(10月):
嘘はついていません
東洋大学を除籍になっていたのに、一体なぜ、卒業と思い込んでいたのか?
当時の議長・副議長に見せた“卒業証書”は本物だったのか、一体何だったのか?
警察の捜査を理由にあげ、議員にも市民にも納得のいく説明をすることはなく、自らに不信任を突きつけた市議会を解散しました。
市議会議員の選挙戦が始まると自らを支持する新人候補の応援に。
伊東市・田久保眞紀 市長(10月12日):
いま、まず市議会を変える。私たちが灯した改革の灯を決して消さない。このことがいま一番大事なこと。さあ皆さん、誰を選びますか
結果は定数20に対して市長の不信任に賛同する人の当選が19人でした。
一連の田久保市長の行動に異を唱えたのが、静岡市の難波市長です。
静岡市・難波喬司 市長(10月21日):
自分の問題を棚上げして議会が悪いんだと言って議会を解散した。解散権に対する制限を何らかの形で設ける必要がある。時間のムダ、費用のムダ
鈴木知事は…。
鈴木康友 知事(10月27日):
一応、ルールに基づいてやることなので、ムダか、ムダではないか価値判断は私はこの場では控えたい。市政が混乱し、停滞したことはやはり大きな問題だろう。もう少し別の決断もあったのではないか
総務省の元官僚として地方自治に詳しく、かつて県の副知事もつとめた静岡大学の大村教授も疑問視しています。
静岡大学・大村慎一 客員教授:
個人的な問題に起因するので、議会を解散するのは適切ではなかったのでは。他に選択肢として、自分が失職して出直し選挙に出る選択肢もあった。その方が市民・有権者から見れば分かりやすかった
個人的な問題での議会解散は沖縄県でも大きな議論に…。
南城市の市議会です。
南城市議会議員(9月26日):
古謝市長の不信任を求めます
南城市議会議員(9月26日):
発議第4号については可決されました
南城市・古謝景春 市長は自らのセクハラ問題で不信任を突きつけられると議会を解散しました。
南城市・古謝景春 市長(10月6日):
大変不本意であり、私がこのまま辞職するとこれまで否定してきた事案まで事実として認めることになると判断したことから、辞職しません
南城市の市議選は、11月9日に投開票が行われます。
静岡大学・大村慎一 客員教授:
市長側に不適切な問題で、解散、選挙ということが全国で頻発すればそれは行政の停滞が全国的に出てくることになるので、その場合、制度を見直すべきではないか声が出てきてもおかしくはない
ただ「制度を見直すハードルは高い」と大村教授は話します。
市長と議会の関係は「二元代表制」と呼ばれ、緊張感とバランスが重要です。
制度の見直しは両者の関係性に関わるからです。
今回、議会解散権が行使され、多くの人の労力と約6300万円かけて行われた市議選。
このあと更に前回3000万円かかった市長選が見込まれます。
混乱の続く伊東市…有権者はどう受け止めればよいのでしょう。
静岡大学・大村慎一 客員教授:
議会解散に要した経費や時間が適切であったかどうかは(市長選)争点になり得るので、もう一回そこで伊東市民が判断する余地も生まれる
伊東市・田久保眞紀 市長(5月18日):
市民が本当に立ち上がって、これは違うと言えば世の中は変わる。私はそれをずっと見てきました。伊東を変える。伊東から日本の政治も変えていく。それくらいの心意気で頑張っていきたい
5月29日に就任した田久保市長。
あれから5カ月。
一連の問題で大きな山場となり、市長継続の是非を決する市議会の臨時会は10月31日に開かれます。