10月、佐賀市に“おふくろの味”を楽しめるアットホームな食堂が開店しました。立ち上げたのは、長年、福祉の現場で働いてきた65歳の女性。「みんなで集える場所を作りたい」。オープンまでの歩みに密着しました。
「ありがとうございます、第1号でほんとにこれから御贔屓お願いします」
10月17日、佐賀市天祐にオープンした「みんなの食堂セロリ」
自宅のような雰囲気で日替わりの家庭料理を楽しむことができます。
【来店客】
「優しいお味でおいしいです、何回来ても飽きなさそうな色んな種類がありますので」
「みんなでこう作っていこういう勢いがいいですね、おばちゃんたち頑張ってます」
食堂を立ち上げたのは小池美鈴さん65歳。
【小池美鈴さん】
「高齢者の仲間入りする時にやっぱり福祉などの経験を生かして社会に最後は貢献したいなと」
食堂のコンセプトは、誰もが気軽に集まれる場所。スタッフには、福祉分野の関係者も多くいます。
【放課後等デイサービスで勤務】
「始められるって聞いたらもうボランティアしますってことで、まだまだ問題点もあったので、今後に生かせたらと思います」
【小池美鈴さん】
「人のつながりとかそういうのの大事さっていうのはこの食堂を作りながらも実感しましたね」
「おはようございます」
「中国出身のせん…せんちゃんです」
「(笑)」
「私は85歳です」
食堂の開店準備が本格的に始まったのは7月。
集まったスタッフは、年齢やルーツ、できることがそれぞれ違います。
「下ね、バケツがある、気を付けて」
【スタッフ(視覚障害者)】
「なかなか新しい人と出会う機会ないじゃないですか?最近だと、でもこうやってみんなでこう一緒にやっていくって本当いいですよね」
【小池美鈴さん】
「初めて会ったもの同士がもうどんどんお友達になっていく、そういう人の繋がりができていく、目指してた食堂になっていってるなって」
愛媛県出身の小池さんは京都府の短大で福祉を学び、卒業後は兵庫県で重い障害を持つ子どものケアをしてきたほか、佐賀県に移住後はケアマネージャーなどとして40年ほど福祉の現場で働いてきました。
また、認知症の人やその家族などが参加する「認知症カフェ」にも携わってきました。
【小池美鈴さん】
「多様な人が集まれる場所とか認知症の人が活躍できる場所とかそういうのがなかなかない、皆さんの思いが集まって手作りで食堂を作ってみよう」
この日、小池さんは書類に目を通していました。
【小池美鈴さん】
「こっちとこっちが10万円以下ずつである、そんならよか、それで」
【小池美鈴さん】
「県の支援金の係の方と打ち合わせすることがあるのでその準備です、経営を維持していくっていうところだけは守らないといけないので」
かつてこの場所は、「宅老所てんゆう」という高齢者などが自宅のような雰囲気でケアを受けられる民間の福祉施設でした。
20年以上にわたって親しまれてきましたが、去年11月に閉鎖されました。
【小池美鈴さん】
「宅老所が地域を支えてきたんですけれども、経営的に非常に難しくなって、たすけあいさが(福祉事業行うNPO法人)の最後の宅老所として残ってたところなんです。大家さんから社会的に活用できるなら、安いお家賃で提供していいと」
オープンを直前に控えた10月7日、大きな絵を持ってきたのは、すぐそばにある佐賀北高校の美術部の生徒たちです。
自分たちの作品を、食堂に飾り付けていきます。
【佐賀北高校美術部3年生 岸川未來さん】
「芸術でいろんな世代の人たちと協力して心に残る経験を届けたいです」
【小池さん】
「こんな立派な絵が来るとはとても思ってなかったのでもうほんとびっくり、もう美術館のようで、もう感激です」
自らの夢とこの場所の重なりを感じている生徒も。
【佐賀北高校美術部3年生 飯盛帆乃花さん】
「保育士になったらお母さんたちのケアもしたいなって考えていたのでこういう場が近くにあってすごい嬉しい」
【小池美鈴さん】
「赤ちゃんとかを連れたお母さんたちとかがね、来れるようにあえて、あの床にしなくて畳を残した」
「また何かあったらお話しに来て」
「来ます絶対」
「うん、うん、うん」
「この部屋でご飯食べよう」
「みそ汁の具も農家さんなどからナスもろたらナスになるし、お芋もろたらお芋になるし」
オープンの日の朝、他のスタッフよりひと足先にキッチンに立った小池さんは介護の仕事をしていたときのことを思い出します。
【小池美鈴さん】
「同僚のヘルパーさんの弁当を朝に作ってあげたりしてたんですね、そのときの味を知っている人がお客さんになってくれたりとか今のこの店のメンバーになってくれたりする」
この日は小池さんと、3人のメンバーが調理を担当、その中にはかつてこの場所にあった宅老所で立ち上げ当初からスタッフをしていた女性の姿も。
【五郎川照代さん】
「当時を思い出すっていうかこれが普通かな」
Q.いつも通りの日常みたいな
「そうそうそう、そういう感じね」
スタッフの中で最高齢となる86歳の五郎川さん、この日は調理から接客まで忙しく動き回りながら当時のことを懐かしみます。
【五郎川照代さん】
「当時の利用者の人たちは楽しいことも悩み事も家庭の事情もなんでも話してくださるからね、私も勉強させてもらったよ」
「これどこの?」
「(笑)どこのでしょうね」
「私が知らないと」
【小池さん】
「仕組みがセルフになってましてここがお盆ですね」
店のメニューは、白ご飯・お味噌汁などのセットが400円。それに加えて、数百円のお惣菜が並びます。
オープン日の客は約3時間で10人ほど。
「みんなの食堂」は、まだ始まったばかりです。
【小池さん】
「ゆくゆくはカフェをやりたいと思っているんですけどね、また色々教えてもらって」
【小池美鈴さん】
「少ないなら少ないなりに1人1人とお話ができるので、今私が思い描いているものじゃないところにそれぞれのお力を借りて広がっていけたらなと、まだまだこれからだと思っています」
「みんなの食堂セロリ」はボランティアや食材の提供などの協力も引き続き呼びかけていて、「興味のある人はぜひ一度お店に来てほしい」と小池さんは話していました。
年内は水曜日と土曜日以外のランチタイムに営業する予定で、詳しくは公式インスタグラムを確認してほしいということです。