今年の頂点を決めるプロ野球日本シリーズが25日から開幕した。
史上最速優勝の阪神タイガースと、2年連続優勝で、ことしこそ頂点を狙う福岡ソフトバンクホークスの激突!
しかし、この熱い戦いを締めくくる恒例の“ビールかけ”が「アサヒグループホールディングス」のサイバー攻撃によるシステム障害の影響で、ビールかけからシャンパンファイトに変更も。
一体何があったのか、ビールが大好きな秦令欧奈アナウンサーが調査した。

■サイバー攻撃で大混乱!アサヒ飲料が品薄状態に
先月29日、アサヒグループホールディングスはサイバー攻撃を受け、システム障害が発生したと発表した。
この影響により、アサヒビール発祥の地・吹田をはじめ全国30ある工場の多くで製造・出荷が停止するという事態に。
さらにビールだけでなく、三ツ矢サイダーやカルピス、ウィルキンソンなど人気商品も品薄状態に陥っている。
これを受け、阪神タイガースは日本一になった場合でも、ビールからシャンパンに変更することを検討中とのこと。
しかも、このサイバー攻撃を行ったロシア系とみられるハッカー集団の名前は「Qilin(キリン)」という、何とも皮肉な話も浮上している。
騒動から約1カ月が経ったいま、「アサヒビールショック」は大阪のビール市場にどのような影響を与えているのだろうか?

■酒屋の現場は…ネット注文からFAXなどで注文するというアナログに逆戻り
ビール大好きな秦令欧奈アナウンサーが大阪・天満にある酒店を訪ね、「酒のながた」の店主・永田博之さんに、騒動前と比べた状況を聞いた。
秦令欧奈アナウンサー:アサヒビールの騒動前と比べるとどうですか?
酒のながた・店主 永田さん:今は『これだけほしい』と言った分はこない。卸売業者から提示された分をいただく。希望数には足りていない。
酒類は一般的に酒造メーカー→卸売業者(問屋)→酒店・コンビニという流れで消費者に届く。
実はいま、サイバー攻撃の影響でネットでの注文ができず、卸売業者がアサヒにFAXなどで注文するというアナログな状態に逆戻りしているのだそう。
そのため、騒動から1カ月たった今も供給が不安定な状況が続いています。
ということは売上も大幅減少…?と思いきや。
秦令欧奈アナウンサー:騒動前に比べて売り上げってどうなっていますか?
酒のながた・店主 永田さん:売り上げとしてはそこまでは落ちていない。

■アサヒビールとサントリーとサッポロのサーバーの口は一緒
いったいなぜ?その秘密を聞いてみると…
永田さん:アサヒビールとサントリーとサッポロ、この3社はサーバーの口は一緒なんで、アサヒさんから借りているサーバーでもサントリービール、サッポロビールは出せます。
秦令欧奈アナウンサー:アサヒからその2つに乗り換えるとしてもコストなく替えられる?
永田さん:アサヒビールがないから、次サッポロ来たら、そのままガチャっとつけれちゃいます」
キリンは唯一受け口が違うものの、ヘッドを交換すればすぐに使用でき、費用もかからないのだそう。

■思わぬ連鎖反応!ビール市場全体に広がる品不足
しかし、これで一件落着とはならず…予想外の連鎖反応が起きていた。
永田さん:アサヒがない、次はサッポロビール、次はサッポロビールがない。次サントリー、サントリーもない。
秦令欧奈アナウンサー:逆にアサヒがなくなったことで、サッポロ、サントリーが売れすぎて…」
永田さん:次はあんまりこれ以上出したら0になるから、またそこで出荷調整で出せなくなる。
アサヒへのサイバー攻撃がきっかけで、いまやビール市場全体に大きな影響が出ているのだ。

■酒店が責められることも
この状況に、別の酒店からは悲痛な声も…。
伊吹屋 店主・小牟礼さん:ある意味地獄ですよ。普通でしたら配達行くだけで終わり。(店に)行って説明、『どうなりました?』と聞かれて一軒一軒丁寧に説明させていただいているんですけど、苦情が僕たちに来る。
『なんで入らんねん!』、さらには『用意しとかないお前らが悪い!』とか…注文かけてもアサヒスーパードライとかは全部欠品です。
(売り上げは)目に見えて落ちてるのは落ちている。ひと月20%ぐらいは落ちていると思いますよ。もう勘弁してくださいですよね…。

■飲食店の対応さまざま…涙ぐましい工夫も
実際にお酒を提供する飲食店でも、様々な対応が迫られている。
秦令欧奈アナウンサー:ここで使われているビールはどこのメーカーですか?
ひよっこ 店主・石佐古さん:ウチはアサヒさんですね。今これともう1つだけ、ギリギリですね。次発注したとき『(どのメーカーか)分からない』って言われているので、ほかのメーカーになるかもしれない。
チューハイの方はもう入ってきていない。サントリーさんに替えてやらせてもらってます。ないってわけにもいかないんで。
こちらに「ひよっこ」では、店独自の涙ぐましい工夫も!
ひよっこ 店主・石佐古さん:どうしてもアサヒがいいっていう人がおるんで、普段置いてないんですけど、缶ビール。アサヒさんが飲みたいっていう人がいてはるんで苦肉の策ですわ。
24缶で5047円なんで(1缶)210円ですね。めっちゃ安かった、割引のやつがあったんです。こんなに長引くとは思ってなかったですけどね。
一方、別のお店では…
びーわん 店主・白濱さん:うち、全然あります。在庫は(騒動後に)早めに取ったんで。
こちらのお店ではなんと9樽も在庫が!
早めに対応した店とそうでない店では、明暗がくっきり分かれていた。

■ビール好きの声は? 現場で聞いてみた
実際にビールを楽しむお客さんたちはどう思っているのだろうか?夜も賑わう金曜午後8時ごろ、天満の「酒の奥田」に向かった!
秦令欧奈アナウンサー:華の金曜日ということもありまして、たくさんの方いらっしゃいます。
客:ビールはアサヒです。
秦令欧奈アナウンサー:いま何杯目ですか?
客:ビールを5杯飲んだ。
隣の常連客:(この人)だいたい11杯くらい飲むから。
客:仕事終わりのビールは最高!
別の客からは、こんな声も。
客:1杯目はアサヒ、2杯目以降はキリン。アサヒめっちゃすっきりしているじゃないですか。のどごしが『くぅっ』とくる感じで後味すっきりしている。
秦令欧奈アナウンサー:じゃあその1杯目のアサヒがなくなってしまうかも…。
客:それは困ります、それは困ると思いますみなさん。

■酒の席での素敵な縁に秦アナ上機嫌!
さらにビールを楽しそうに飲んでいる4人組と話していると、素敵なことが…
客:いま、幻のアサヒ(飲んでる)
秦令欧奈アナウンサー:めちゃくちゃおいしそう…。
客:飲みます?
秦令欧奈アナウンサー:いいんですか?
客:どうぞ!
なんと、会ってすぐにもかかわらず1杯ごちそうしてくれることに!
秦令欧奈アナウンサー:すみません、ありがとうございます!
客:お疲れ“生”です。
秦令欧奈アナウンサー:お疲れ“生”です。うまー!仕事終わりはこのキレです。
さらに!
客:こんにゃく食べられる?
秦令欧奈アナウンサー:いいんですか?
1本60円という超リーズナブルなこんにゃくまでごちそうに!
秦令欧奈アナウンサー:いただきます!
客:熱いで!
秦令欧奈アナウンサー:めちゃくちゃ美味しいです!
客:ビール飲んで!
秦令欧奈アナウンサー:あぁ~!最高です!(みなさん)優しい!
客:かわいいもん!

■さらなる危機!生ビール自体が飲めなくなる可能性も
しかし、ビールと会話を楽しむ中で、「生ビールが飲めなくなってしまうかもしれない」衝撃の事実が判明した。
実はいま「ガスボンベ」が足りないという事態も起こっているのだ!
永田さん:ガスボンベはサーバーでビール出したり、チューハイ出したりするために押し出して、冷たいビール出るんですけど、これが足りなくて…『これがないんです』って言ったら、じゃあうちどうやって生ビール出すのっていう根本的な問題に直面しています。

■「炭酸ガス」が無くなったら本当にまずいけれど…
ビールのキレやうまさに欠かせないのがこの炭酸ガス。
これがないと皆さんが求める“あの生ビール”を味わうことができないのだ!
秦令欧奈アナウンサー:それもアサヒとか各メーカーが出している?
永田さん:そうです。アサヒビールがガスボンベ出せませんってなったら他社に行く。他社さんのがなくなって、もう全部ないです。『いけて1本です』とか言われる日があって、ひやひやですよ、得意先でビール出されへんやんっていわれたら。
秦令欧奈アナウンサー:飲み物以前に、飲み物を出す能力がなくなっちゃう。
この状況が長引けば、店で生ビールが飲めなくなる…そんな事態が現実味を帯びている。
この状況が早く落ち着くことを願って…
秦令欧奈アナウンサー:みなさんも今週一週間、お疲れ“生”です!
(関西テレビ「newsランナー」2025年10月24日放送)

