国内最大級の洋菓子コンテスト「ジャパン・ケーキショー」。
全国のパティシエが洋菓子の芸術性を競う作品展で、世界に羽ばたく「登竜門」とも呼ばれています。
10月13日から開かれたこの大会に、山陰から挑んだ若きパティシエたちに密着しました。
3年前にオープンした出雲市のパティスリー「GrandChainon(グランシェノン)」。
オーナーシェフの福間将司さんは、国内最大級の洋菓子コンテスト「ジャパン・ケーキショー」で2度の優勝経験を持つ実力派のパティシエです。
小畠遥さん:
(福間さんが)優勝されているので、私もチョコのピエス(チョコ細工)を学びたくて入った。
パティシエのひとり、小畠遥さん。
前の店で一緒だった福間さんのもとで腕を磨きたいと、同僚だった堀井勉さんとこの店にやってきました。
店に入って2年目の細野流未さんとともに「ジャパン・ケーキショー」に挑みます。
コンテストまであと2週間。
営業を終えた午後6時…作品づくりが始まります。
「全然途中なので、何が何だか分からない状態なんですけど…」と話す小島さん。
全てチョコで作品を仕上げていく。
小畠さんがエントリーするのは、チョコレート細工とホールケーキの組み合わせで味と技を競う部門。
テーマを美しく表現する造形技術と味のクオリティの両立が求められます。
4回目の出場となるこのコンテスト、今回初めて挑む部門で目指すのは「優勝」です。
6月に開かれた西日本地区のコンテストで準優勝を獲得した作品を改良することにしました。
材料のチョコレートをやわらかくして形を作っていきます。
小畠遥さん:
手の熱でやると、やわらかくなるので、こういったところを均していく。
ここに例えば穴が開いた時に、穴の上から(色を)吹き付けると、すごく目立ってしまう。これが粗につながって、そこも減点ポイントになってしまう。
製作にかかるのは1か月ほど。
審査では、チョコレート細工の出来がポイントになるため、細かな部分にまで目を配ります。
小畠遥さん:
作業は(深夜の)2時、3時にこれからなっていくのでは。
飲みに行きたいとか思うんですけど、それをぐっとこらえて…夜に残ってコンテストの練習をする。それなら勝たないとね。
一方、堀井さんと細野さんは、「グラン・ガトー部門」にエントリー。
ホールケーキの味と見た目を競います。
このコンテストで過去2回、銅賞と銀賞に輝いた堀井さん。
今回は狙うのは最優秀賞です。
半年以上をかけて味やデザインを構想。
ようやくたどり着いたのは、チョコレートとレモンの組み合わせ、インパクトの強いケーキです。
オーナーシェフ・福間将司さん:
すごくいい感じだね。味はもうこれで決定だね。
堀井勉さん
あとは飾りですね。
200を超える出品作のうち、味の審査に進むのは約30点。
いかに審査員の目にとまるか「見た目」がカギになります。
堀井勉さん:
これが今回作った型なんですけど、この大会のために作りました。
まずは、形で目を引く作戦です。
堀井勉さん:
トライアンドエラーを繰り返すしかないという感じになります。
厨房にもうひとり…初挑戦の細野さん。
オーナーの福間さんや数々の大会で結果を残してきた先輩2人に憧れ、2024年7月に北海道からやってきました。
細野流未さん:
もうやめよう。桃の味はダメだということになって…まだ味が完成していないとところです。
Q.ちょっと出遅れてますか。
はい。ちょっとどころじゃない。
桃に代えて、ユズとオレンジを使うことにしましたが…。
細野流未さん:
完成が見えている人たちと見えていない人と今、差が出ています。
試行錯誤を続けるうちに明け方ということも…。
初めての挑戦、悔いを残したくはありません。
細野流未さん:
シェフの言った通りの味を作ったところで、気持ちの受け取り方も多分違ったでしょうし、1回ここで自分でやるんだと決めたことをやって、ダメだった時の腑の落ち方はすごく早かったですね。
最後の追い込み、理想の形をひたすら追い求めました。
東京出発当日、厨房では急ピッチで作品の仕上げです。
堀井勉さん:
完成です。これで、あとは持っていくだけ。
堀井さんはデザインを変更、華やかさとレモンのみずみずしさを際立たせました。
堀井勉さん:
いけると思います。今回は今まででは一番自信があるので。
一方、細野さんは…。
細野流未さん:
飾りを今必死に…。きれいなものを作らないといけないので、今はそこに神経を注いで、昨夜から家に帰らずに…。
オレンジやユズをイメージして飾りつけた可憐なケーキ。
最後はほぼ徹夜で追い込み、なんとか仕上げました。
細野流未さん:
おいしいと思いながら作れるケーキだったので、こうだったらどうしようと(悩む)いうことはなく、自信を持って仕込めました。
そして小畠さん…。
小畠遥さん:
(チョコの高さが)4~5センチ高かったので、それを下にずらすという作業を今から。
出発直前にまさかのトラブル。
ケースの高さをオーバーしていました。
この時の時刻は、午後1時20分。出発まで1時間40分。
締め切りまでに東京に届けるため、時間との戦いです。
1時間後。
小島遥さん:
無事に終わりました。パーツを付け替えるという作業を今して。
表情は晴れやかです。
出来上がったのがこちら。
アンドロイド風のトカゲを中央に配置。全てがチョコレートとは思えない作品です。
ケースに入れるのは4人がかり…。
蝶のパーツも位置を変えて、収まりました。
小畠遥さん:
いい結果を待つだけです。無事に運ぶというところ。じゃないと意味がなくなってしまうので。
最後にして最大の難関が「運搬」です。
美術品のように慎重に…緊張感が漂います。
東京まで約18時間、作品を無傷で届けるため、温度と揺れに注意を払います。
そして翌日、東京の会場に到着。
作品は…無傷でした。
「寝る間も惜しみ」心血を注いで作り上げた作品。
審査の結果は…。
小畠遥さん:
入ってない。
小畠さんと堀井さんは入賞を逃しましたが…。
細野流未さん:
え、入ってる!グラン・ガトー銅賞。
オーナーシェフ・福間将司さん:
え!おめでとう。
初挑戦の細野さんは、銅賞を受賞しました!
年に1度の大舞台に挑んだ若手パティシエたち。
うれしさと悔しさ、そして頂点を目指して費やした時間を糧に、1年後の日本一を目指します。