今年は昭和100年を迎える節目の年。激動のこの100年、社会を伝える教科書も移り変わってきました。教科書は、子供たちに何をどう伝えてきたのか取材しました。
坂井市の教育博物館で開かれている「教科書で辿る昭和100年」会場には、昭和初期から順に、教科書を通じて時代ごとの特徴がまとめられています。
この100年の間にあった歴史的な出来事が、教科書を通じてどのように子供たちに伝えられてきたのかを知ってもらおうと企画されました。
並んでいる中で目立つのは、国語の教科書。その理由について教育博物館の柏谷修一さんは「国語の教科書にはノンフィクションや物語があり、子供たちに伝えたい内容がよく反映されている」とします。
特に力を入れたのは、昭和16年の太平洋戦争開戦から昭和20年の終戦まで。開戦とともに小学校は軍国教育を行う国民学校に変わり、教科書は軍国主義・忠君愛国を説く内容が目立つようになりました。
柏谷さんは「例えば、足し算や引き算を勉強する小学校1年生の算数の教科書には、さるかに合戦の絵が描かれていて、さるが青いカキを投げているのに対し、カニが機関銃で応戦している」と解説します。
戦後は一転、軍国主義が禁止され、軍事的な記述や戦争を美化するような部分を墨で塗る「墨塗り教科書」が使われるようになりました。
よく見ると、墨の部分が薄いため書いてある文字が見えます。「本来なら消えている内容が見ることができる貴重な資料。例えばお父さんは「出征」と書いてある部分は「病気」に変えている」（柏谷さん）
急激な経済成長を遂げた昭和30年代、40年代には、高度経済成長を象徴するダムの建設や新幹線、高速道路の開通などが教科書で取り上げられました。
昭和50年代、60年代になると、地球の温暖化やオゾン層の破壊など、国内だけでなく海外にも目を向けた説明文が目立つようになります。「この時代から、国語で社会的な事象を取り上げることが減ってきている。読み書きも大事だが、それ以上に発表やまとめたりということを重視するようになり減ってきた」（柏谷さん）
平成に入り、考える力や体験的な学びに重点が置かれるようになってからは、時事的な話題の取り扱いが減りました。
そうした傾向にあっても、ほとんどの教科書で扱われるテーマがあります。
それは、戦争や震災の被害者のことです。
「当時は記憶に新しいがだんだん忘れていく。そういったことをいつまでも忘れずにいてほしいと考えているのではないか」（柏谷さん）
教科書を通して振り返るこの100年。時代ごとの子供たちの学びには、日本社会の変化が色濃く映し出されていました。
企画展は、12月14日まで、坂井市の教育博物館で開かれています。
