岩手県内では10月17日に北上市でクマに襲われたとみられる温泉の従業員の遺体が見つかるなど、人身被害の深刻さは過去にない事態となっています。
専門家は「完全にフェーズが変わった」として、警戒を呼びかけています。
クマの生態に詳しい森林総合研究所の大西尚樹さんは、北上市でクマによるものとみられる人身被害が発生したことを受け、危機感を示しています。
森林総合研究所 大西尚樹さん
「完全にフェーズが変わったという印象。普通ではない、まれなケース」
10月17日、北上市和賀町岩崎新田の山林で身元不明の男性の遺体が見つかり、そばにいた約1.5mのクマが猟友会によって駆除されました。
現場からほど近い温泉では、前日の16日に露天風呂の清掃作業をしていた男性従業員が行方不明となっていて、遺体はクマに襲われたこの男性従業員とみられています。
10月8日には、17日の現場から約2km離れた山林でクマに襲われた別の男性が遺体で見つかっていて、市は17日に駆除したクマのDNA鑑定を進め、同一の個体かどうかを調べています。
森林総合研究所 大西尚樹さん
「クマが食べるために人を襲ったことが確定したわけではないけど、『今まで大きくて怖いと思っていたけど、 意外と簡単に人間は倒せる』と覚える。そうすると『食べるために狙う』という発想を持ってしまう」
17日に駆除されたクマが調べられた結果、脂肪が少なかったことが判明していて、これについて大西さんは一つの見解を示しています。
森林総合研究所 大西尚樹さん
「駆除された個体の脂の乗りが悪いということは、山の中の餌が少ないということがわかると思う」
この上で大西さんは、2025年は山の中のクマの餌が少ないため「市街地での出没に
拍車がかかっている」として、人身被害のリスクが高まっていると話します。
森林総合研究所 大西尚樹さん
「完全にクマ生息圏が、人間の生息圏に入り込んで、山の方がかなり高密度になっている。(クマに)出合ってしまう確率は、10年前に比べると格段に上がっている」
北上市では2025年7月に、81歳の女性がクマに襲われ自宅で死亡しているのが見つかっているほか、20日は盛岡市本宮で1頭のクマが捕獲されるなど、県内では市街地の出没も高止まりとなっている状況を、大西さんは次のように表現します。
森林総合研究所 大西尚樹さん
「異常ではなく、これが普通になると思う。11月も出没は相次ぐと思うので、12月までは警戒したままでいてほしい」
大西さんは「地域にクマを寄せ付けないことが大切」だとして、柿の木から早めに柿を取ることや、ごみを前の日に出さずに朝に出すことを徹底することなど、対策を取るよう呼び掛けています。