観光客でにぎわう京都・嵐山。その観光名所「竹林の小径」で、横行している迷惑行為が“竹への落書き”だ。

「newsランナー」の独自調査では、300本以上の竹に落書きが見つかった。

京都府立植物園 樹木医:傷がつくことによって、そこの細胞はもう再生することはない。

人気観光地での「落書き行為」。その実態に迫る。

嵐山の絶景竹林で相次ぐ「落書き」
嵐山の絶景竹林で相次ぐ「落書き」
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■「落書き禁止」を呼び掛ける看板も効果なし アルファベット、ハングル、カタカナ、数字などで落書き

記者リポート:嵐山にきています。多くの観光客でにぎわっています。

暑さも和らぎ、大勢の観光客が訪れる京都「嵐山」。このエリアでシンボル的なスポットとして人気なのが「竹林の小径」だ。

記者リポート:嵐山の観光名所“竹林の小径”に来ているのですが、外国人観光客の姿が多くあります。非常に多いです。

通路の脇に生い茂る青々とした竹。空を覆う竹林が整然と立ち並ぶ様子は、まるで“竹のトンネル”を歩いているようだ。

広島から来た観光客:すごいきれいでびっくりしました。

メキシコから来た観光客:リフレッシュできるし、私たちの国とは雰囲気が違うわね。あなたはどう思う?
メキシコから来た観光客:とても落ち着くよ。

と、心が癒される京都の観光名所。

しかし「竹への落書き」という迷惑行為が相次いでいるのだ。

心が癒される京都の観光名所「竹林の小径」
心が癒される京都の観光名所「竹林の小径」

記者リポート:見てください、落書きがあります。何かで削ったような跡です。書かれている文字はアルファベットです。

記者リポート:ハートマークの中にイニシャルのようなものがあります。カップルが記念に残したのでしょうか。

アルファベットやハングル、カタカナに数字などさまざまな文字が。

「落書き禁止」を呼び掛ける看板も設置されているが、残念ながら効果はないようだ。

落書きの中には「ECO」と書かれたものもあったが、全然エコではない!

中には上から下までびっしりと「落書き」されている竹も。

アルファベットやハングル、カタカナに数字などさまざまな文字で落書き
アルファベットやハングル、カタカナに数字などさまざまな文字で落書き

■7年前から増え始め…300本以上も確認

実はこの“迷惑行為”、いまに始まったわけではない。落書きは今から7年前、2018年ごろから増えはじめたと言う。

記者リポート:韓国語で『また来るキムホグン』と、名前を書いています。

この時点で、被害に遭った竹は、およそ100本ほどだった。

コロナ禍で、いったん落書きは減ったが、ここ最近、再び増え始めたということだ。

実際に取材班が落書きされた竹の数を調査してみると…なんと!300本以上の竹で確認された。

観光客:こういった伝統のものなので、あんまり良くないかなと。

観光客:はっきり言って、どうかしてると思ってますけど。なぜそんなことするのか分かんない。

アメリカから来た観光客:とても悲しい…ここまで育つのに時間がかかるのに。

いまに始まったわけではない
いまに始まったわけではない

■落書き隠す“養生テープ” 人力車に啓発ポスターで対策も

京都市が10月行った調査でも、落書きが見つかった竹は少なくとも350本。

竹林の一部には、落書きを隠すため養生テープが張られたものがあった。

テープを張っているのは、この辺りの竹林の管理も行っている人力車の「えびす屋」のスタッフ。

運営会社の満井さんに話を聞いた。

えびす屋總本店 満井一貴さん:見栄えも良くないですし、できれば(養生テープは)したくはないですけど、落書きされているよりは、貼ってるほうがましかなと。

(Q.だいたい何年前から始まった?)
えびす屋總本店 満井一貴さん:7~8年前かなという気はするんですけど。この1年、2年ぐらい増えてきたかなという気はしますね。何か先のとがったもので、傷を入れているのが多いです。

「えびす屋」の人力車に啓発ポスターを張っているが、落書きは後を絶たず。

えびす屋總本店 満井一貴さん:隠して、また違う所に(落書きを)やって隠して、貼っても貼っても繰り返しなので、やっぱり我々もきれいな景色を見ていただきたいので、こういう落書きはやめてほしいと思います。

えびす屋總本店 満井一貴さん
えびす屋總本店 満井一貴さん

■竹の生育にも影響 「傷ついた細胞は再生しない」

景観を損ねるだけではなく、竹の生育にも影響があるそうで、取材班は、京都府立植物園で専門家に話を聞いた。

京都府立植物園 樹木医・中井貞さん:表面も全て植物細胞で成り立っていて、傷がつくことによって、そこの細胞はもう再生することはない。

(Q.以前の色を取り戻すことは難しい?)
京都府立植物園 樹木医・中井貞さん:その箇所が再生するということはないですね。植物に傷をつけるというのは、やめていただきたい。

竹の生育にも影響がある
竹の生育にも影響がある

■傷つけられた竹が人に被害を及ぼす可能性も

さらに、「落書きによって竹が倒れる危険もある」と指摘する。

京都府立植物園 樹木医・中井貞さん:(落書きが)少しの量であれば、それほど影響はないかと思いますが、それが全体に行き渡るような感じで傷がつくと、その植物体全体が、いわゆる『光合成』をしてるんですけれども、できづらくなって、枯れてしまうことが考えられる。放っておくと倒れてしまいます。

人の手で傷つけられた竹が、いずれ人に被害を及ぼす恐れもあり、京都市は「落書きをされた竹の伐採も検討している」ということだ。

人気観光地での許しがたい「迷惑行為」。訪れた人、一人一人のマナーが問われている。

京都府立植物園 樹木医・中井貞さん
京都府立植物園 樹木医・中井貞さん

■落書きは「器物損壊」になることも 藤井教授「罰金取る制度も必要では」

竹への落書きは「器物損壊罪」になる恐れもあり、有罪になると3年以下の拘禁刑、または30万円以下の罰金・過料となる。

京都大学大学院の藤井聡教授は、「落書きは犯罪であるということを示して、また5~10万円とかしっかりした罰金を取るという制度も作って、『見つけたら罰金』ということも示して、時折パトロールをして取り締まるようなことがあれば、なくなっていくのでは」と指摘した。

罰則を強化して抑止につなげるのは悲しいことだが、必要になってくるかもしれない。

(関西テレビ「newsランナー」2025年10月17日放送)

関西テレビ
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