三重県立相可高校の「高校生レストラン」は、かつてテレビドラマ化もされ、一躍注目を集めました。店がオープンした20年前、厨房に立っていた生徒が、今は“顧問の先生”となり、新たな挑戦も始めています。

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■オープンから20年…「高校生レストラン」変わらぬ人気

三重県多気町にある「まごの店」は、県立相可高校の調理クラブの生徒達が、調理や接客を行う「高校生レストラン」です。学校では教えることが難しい、接客やコスト管理などの仕事を体験してもらおうと、2005年に店舗をオープンしました。

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日本初の「高校生レストラン」として、テレビドラマにもなり、全国にその名を知られるようになりました。

今も行列ができる人気店で、料理人を目指す高校生たちが、巧みな包丁さばきで、プロ顔負けの料理を提供します。

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人気メニューの「花御膳」は、天ぷらや茶碗蒸しのほか、昆布とカツオの出汁をたっぷり使った、名物の出汁巻き卵を味わえます。

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女性客ら:
「プロの味でした、出汁がよく効いてて、おいしかったね」
「私は高校生の若い人達がすごく真剣にやってるのにね、ものすごくそれがね、嬉しいっていうか」

■20年前の生徒が“先生”に…伝えたい「プロ意識」

2025年、「まごの店」は開店から20年の節目を迎えました。

顧問の西岡宏起さん(38)は、相可高校の卒業生で、20年前に厨房に立っていた「最初のメンバー」です。

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西岡さん:
「当時は高校生なので、何が何だか分からない状況で、忙しすぎてというか、もう顔を上げる暇もないぐらい本当にお店で料理に向き合ってた」

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お客さんからの「おいしかった」と言う声が、やりがいになっていたという西岡さん。

西岡さんは「まごの店」を立ち上げた恩師の村林新吾さんの後を継ぎ、2020年に顧問になりました。

恩師の後継者というプレッシャーに、教えることの難しさを実感しながら、西岡さんは模索を続けてきました。

西岡さん:
「(恩師の)村林先生の作る料理が本当においしくて、料理って何でこうするの?っていう全部理由があるわけなんですよね。やっぱその理由を知らないと教えることができないわけです。自分の力不足の部分もそこでわかりましたし」

生徒達に求めるのは「お客様ファースト」、指導にも熱がこもります。

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指導する西岡さん:
「切り方も押して切ったらあかん。全部皮むけてるやん。でかいでかい、真っすぐ切らなあかんよ。全部曲がっとるやん」
「どんだけ高いもんかわかっとるか?1個1000円するんさ、自分の切り方で無駄になってまったやん。それぐらい重要なことなの」

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西岡さん:
「一番お客さんのことを考えなあかんので、高校生だろうが、お客さんにお金頂いてる以上はプロと一緒なんです。やっぱり料理に関しては手を抜いたらあかんし、本物の料理を作るっていうことは、心がけてやってます」

“プロ意識を持って本物の料理を提供する”、それが「まごの店」の伝統です。

生徒ら:
「厳しくてなんぼの世界だと思うので料理の世界って、自分は全然それでいい」
「ちゃんと僕達も頑張ってれば、それに応えてくれる先生なので。絶対信頼置けると思います」

■一粒に込められた思い…料理人の“心”も学ぶ

「まごの店」で学ぶのは、技術だけではありません。ある日の早朝、西岡さんは1年生の部員を連れて、市場を訪れました。

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なじみの店を訪れ、高校時代から目利きを続けてきた経験を生徒に伝えます。

西岡さん:
「魚の目利きであったりとか、そういうことも大事になるので。きょうも生徒一緒に来てますけど、勉強の1つになります」

生徒:
「先生が選んでいる商品とほかの商品がどう違うか、見極めれたらいいなって気持ちで来てます」

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西岡さんが、新たに始めた取り組みもあります。

鈴鹿市の農家での「稲刈り体験」です。5月に自分たちが手で植えた苗を、鎌を使って丁寧に刈り取ります。

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収穫するのは三重県のブランド米「結びの神」です。粒が大きく、しっかりとした強い甘味が特徴で、「まごの店」でも提供しています。

農家の男性:
「一粒一粒、命があってですね、生産者が愛情を込めて育て上げる。それを本当に伝えていってほしいなと思います」

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生産者の思いに触れることで、食材への愛情が深まります。

生徒ら:
「どんだけ大変かもわかっていなかったので、すごくいい経験ができたと思います」
「洗う時、一粒一粒に感謝を込めたり、よそう時や炊くときなど、一粒もあまり無駄にしないようにしていきたいと思います」

西岡さん:
「料理する上で、お米の作られていく過程、あとは農家さんの思いというものも、やっぱり料理人として、お客さんにやっぱ届けないと僕はいかんなと思うんですね。こういう風に体験することで、親しみ持ってご飯をお客さんに届けられるかな」

20年間変わらない、「まごの店」の信念。店の壁には、著名な料理人の名言とともに、西岡さんの言葉が記されています。

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『料理人は、食材とそれを作った生産者の背景や思いを、お客様に伝える通訳者である』

■“三重の食”をアピール 東京で「出張高校生レストラン」

2025年9月、相可高校調理クラブの生徒たちが東京・日本橋にやってきました。

三重県のアンテナショップ「三重テラス」で、2日間限定で行われる『出張高校生レストラン』。多気町のふるさと納税の返礼品として、1日12組限定で、和食のフルコースを提供します。

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普段「まごの店」に来られないお客さんのために、慣れない厨房で、腕を振るいます。

地元・多気町で採れた野菜などを贅沢に盛り付けた前菜。

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造りには、伊勢まだいと伊勢海老の昆布締め。三重県産の食材をふんだんに使ったメニューです。

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メインディッシュは松阪牛のローストビーフ、ソースには学校で採れたバジルなどを使い、彩りも鮮やかです。

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「秋刀魚寿司」は、米のおいしさが最も際立つ、お寿司に仕上げました。

西岡さん:
「このお米がですね、結びの神という品種なんですが、非常に粒が大きくて味もしっかりしてて、もっちりと食べ応えのあるお米です」

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訪れた客ら:
「(Q何がおいしかった?)秋刀魚のお寿司。本当の食材の味であったり、本物を体験することができてよかった」
「全然高校生とは思えないくらいの仕上がりというか、プロといってもいいんじゃないかってくらい、すべておいしかったです」

西岡さん:
「本日はどうもありがとうございました。この子たちには僕は本物の料理っていうのを教えたい。『これから本当に期待できる子たちやな』というふうに思いながら、日々僕も勉強しています」

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女子生徒:
「デセールコースという、すべてがデザートになったコースを、将来したいと考えております」

男子生徒:
「自分の将来の夢は一流のフランス料理人になって、最終的には自分のお店を持つことが夢です。この経験を胸にこれから成長してまいりますので、これからも応援よろしくお願いします」

「出張高校生レストラン」は大成功、生徒たちにとっても、かけがえのない経験となりました。

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西岡さん:
「普段以上に感謝の気持ちを込めて、この子達は料理を今回作れたと思うんですね。お客さんのことを思って手を抜かずに一生懸命やること、これがやっぱ大事なことなんですよね。そこは毎年毎年、やっぱりこう進化していかなあかんところでもありますので、相可高校の進化を見ていただけるかなと思います」

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