3年前、石巻市の障がい者支援施設で入浴介助を受けた女性が、重いやけどを負い、その後死亡した事故で、介助に関わった施設の職員3人が、業務上過失致死の疑いで10月15日、書類送検されました。
書類送検されたのは、石巻市の障がい者支援施設・「ひたかみ園」で、入浴介助に関わっていた現場責任者の30代男性と、20代の女性職員、40代の女性職員の3人です。
警察によりますと、3人は2022年12月、ショートステイを利用していた阿部加奈さん(当時38)の入浴介助中に、風呂の温度確認を怠って重いやけどを負わせ、死亡させた疑いが持たれています。
阿部さんは3日後に、敗血症による呼吸不全のため、搬送先の病院で死亡しました。
警察は、捜査の結果、職員3人がお湯を攪拌=かき混ぜる作業や、温度確認を十分に行わなかったために、阿部さんが40度ではなく50度ほどのお湯に5分間入浴。
死亡させたとして「厳重処分」の意見を付けた上で、15日、業務上過失致死の疑いで書類送検しました。
警察の調べに対し、3人はいずれも、「お湯を攪拌したと思った。確認方法が不十分だった」などと容疑を認めているということです。
亡くなった阿部加奈さんの母親(70代)です。
娘は、「癒やしの加奈ちゃん」と親しまれていたといいます。
阿部さんの母親
「見る影もない。人の体かなというくらいの赤さ。ぎゅっと抱きしめることもできなかった。それが一番つらい」
「私にとっては天使ですかね。天使というか与えられた子供だと思って、障がい者という感覚ではない。ただ本当に生きててほしかったです。もう本当に悔しいです」
今回の事故について、東北福祉大学の関川教授は。
東北福祉大学総合福祉学部 関川伸哉教授
「温度管理というのは、非常に管理しやすい。温度がコントロールできるという安心感があって、そういったところにも落とし穴がある」
”特殊なケース”だったとした上で、介護・福祉分野での人手不足が背景にあるとも指摘します。
東北福祉大学総合福祉学部 関川伸哉教授
「しっかりと情報が共有されていなかったり、指導する先輩がいなかったりすると、若手のスタッフが少ない経験の中で業務をこなしていく中で、あってはならない事故が起きてしまうこともあるかもれない。決して個人の問題として捉えるのではなくて、組織的な問題とか、複合的な要因がこういう事故につながることを理解して、社会全体でこの問題に向き合っていくことが大事」
仙台市泉区の障がい者支援施設です。
日常的に行っている入浴介助の前に、最高温度が40度を超えていないか、4人態勢で確認しているといいます。
障がい者支援施設 仙萩苑 山村光晃さん
「(ひたかみ園の事故は)同職として痛恨の極み。起きてはならない事故だった。実際に設定温度のお湯が供給されているのか、確認することが一番大事」
今回の事故報道を受けて、職員教育の重要性を再認識したといいます。
障がい者支援施設 仙萩苑 山村光晃さん
「やっぱり実地訓練じゃないでしょうか。スタッフには必ずフィードバックをもらうようにしている。1カ月間指導するのはそこにも(意味が)あって、どこまでできて、どこまでできないのか、どこまで理解したのかというところを必ずフィードバックするようにしている」
書類送検を受けて阿部さんの母親は、「二度とこのような事故を起こしてほしくない。職員の教育を徹底してほしい」とコメントしています。