13日に閉幕が迫る大阪・関西万博。運営費は230億円から280億円の黒字になる見通しです。その経済効果は万博会場の内外に波及しています。

関西テレビの秦アナが、万博でがっぽり稼いだ人を徹底調査すると、会場内で約1億5000万円を売り上げた「とんかつ店」を発見。

出店のため5500万円を工面し、半年間会場に泊まり込んだ店主の原動力は、幼いころに訪れた「花博」と“ミラノ万博で活躍した料理人への憧れ”でした

また会場に向かう人の流れによって、売り上げが「1.5倍」になったという居酒屋も。

「ここもパビリオン」と訪れる客もいる中、店には海外パビリオンで活躍するピアニストも訪れていました。

■万博会場内に唯一個人の飲食店として出店を果たした「とんかつ乃ぐち」に密着

まず訪れたのは万博会場内に唯一個人の飲食店として出店を果たした「とんかつ乃ぐち」です。

「とんかつ屋さん、これ僕知ってる。万博にすっごく人気なとんかつ屋さんがあるって聞いたことあります」とテンションが上がる秦アナ。


万博出店前は大阪の中津に店を構え「予約の取れないとんかつ屋さん」として知られていた「とんかつ乃ぐち」。

万博でも連日大盛況で、再び「予約の取れないとんかつ屋さん」として評判になっています。

■「とんかつ乃ぐち」は、とんかつを1貫ずつ提供する珍しいコーススタイル

実際にとんかつを切るところから見せてもらいました。

【秦アナ】「だいぶ長い包丁でとんかつが『スーッ』と切られていきます。そして中は鮮やかなロゼ色。きれいだなぁ」

「とんかつ乃ぐち」は、とんかつを1貫ずつ提供するコーススタイルです。

【野口さん】「まずはロースをお持ちいたしました。『京丹波ぽーく』です。脂身の部分にお醤油をつけてお召し上がりください」

【秦アナ】「笑っちゃうくらい美味しいですよ、本当に。衣が空気をすっごい含んでいるのが分かるので、まるで雲のような食感です。ジュワーッと脂が滝のように、でも全くくどくないんですね。この脂がスーッて喉ごし良く入っていく。芸術みたいな味ですね」

■極上のとんかつを生み出すために多くの工程が

次にいただいたのは、山形県の平田牧場『バークシャー50』のヒレ(シャトーブリアン)です。

【秦アナ】「やわらか!歯が刃物になったのかってぐらいスーって歯が入っていきます。ずっと口の中にいてほしい…同じとんかつと言えど、全く違いますね」

【野口さん】「今の豚の最前線。これが世界的に見て日本が誇る食文化、食材だと思うんですよね。今本当に養豚業界では爆発的に品質が上がってまして、料理にするのも普通のとんかつではなかなか表現できなくて、たどり着いたのがこの低温で揚げることと、1貫ずつお出しするとんかつコーススタイル」

乃ぐちのとんかつは、調理工程も独特です。まず、仕入れた豚肉をミートペーパーに包んで熟成。いらない水分が抜けるまで繰り返し何度も行うことで、豚本来の旨みを感じられるようになるそうです。

さらに、その美味しいお肉をやわらかいままとんかつにするため、ふわっふわのパン粉をまとわせて、低温で揚げた後、温度を上げた油に入れて、表面をサクッとさせることで、極上のとんかつを生み出すのです!

■「5500万円」全て自腹で準備して万博出店した野口さん

野口さんが万博への出店することが決まったのは去年12月末。

オープンが迫る中、出店費用5500万円を全て自腹で用意しなければならず、友人たちからお金を借りて、開幕1週間前になんとかお店を完成させました。

当時は万博に対してネガティブな空気が蔓延し、お金を貸してくれる銀行も少なかったそうです。

それでも野口さんが万博出店にこだわった理由は、小学生の頃に訪れた花博の思い出と、ミラノ万博で料理人が活躍する姿を見たことでした。

【野口さん】「料理人が万博で活躍できるっていうことを知って、自分も日本で必ず国際万博が出た時は日本人の代表の料理人として自分のお店を出してみたいって思ってたら、ミラノ万博に行った2年後に大阪誘致決定。もう出るしかないじゃないですか」

■「会場泊まり込み」万博で極限の働き方

野口さんの1日は想像を絶する忙しさです。

朝6時に起床し7時から仕込みを開始。11時から午後3時までランチ営業で4回転をさばいた後、午後3時からテイクアウトの準備をします。

午後5時にはディナー営業で3回転こなし、10時に閉店。その後片付けと翌日の準備をして深夜1時にようやく1日が終わります。

しかも驚くべきことに、野口さんは万博期間中ずっと会場内に泊まり込んでいるということ。

【秦アナ】「寝るところがどこかにあるんですか?」

【野口さん】「さすがに外で寝ると怒られちゃいますので、店舗の中でもう仮眠を取って。はじめからもうその想定で、この万博を通して一番万博で働きたいですし、かぶりつきで万博の時間も謳歌したかったので」

そんな過酷な環境にもかかわらず「めちゃくちゃ楽しいですね。最高です。自分のやりたい仕事ができて、万博に来られる方が本当にエネルギッシュで。皆さん笑顔で!」と笑顔で答える野口さん。

なんと、半年間の売り上げは前の店舗の約10倍の約1億5000万円にのぼるそうです。

【野口さん】「とんかつを食べてもらうというシンプルな仕事において、その1億5000万円を半年でっていうのはやっぱりちょっと信じられないですよね」

■「掛け算でもっととんかつを盛り上げていきたい」コラボメニュー開発

野口さんは万博をきっかけに新たな挑戦も始めています。それがコラボメニューの開発です。

和食の料理人・清水研羊さん、兵庫県加西市の農業者・北條聖一郎さんととも協力して誕生したのは、播州育ちのお米と醤油で作った混ぜご飯を野口さんが厳選した豚肉で巻いたライスコロッケ。万博を通して新たな食文化を発信しています。

「掛け算でもっととんかつを盛り上げていきたいですし、もっと世界に通用するようなパフォーマンス、これが日本の文化だと思うんです」と野口さん。

【秦アナ】「世界のとんかつ職人にめちゃくちゃ応援しております。おっカネ~ニュースなのでいつもお金のことしか頭にないんですけど、お金っていうよりは野口さんが本当にワクワクしながら仕事をしているというところに胸を打たれました!」
【野口さん】「お金はすごく大事です!」

■「いつもの1.5倍」万博会場外でも経済効果

万博効果は会場だけでなく、会場外の飲食店にも広がっています。

電車で万博へ行く人の多くが利用する乗り換え拠点・弁天町駅前のレトロな「居酒屋なかもと」も万博効果で潤っていました。

【秦アナ】「万博効果っていうのは感じてらっしゃいますか?」
【店主の中元恒夫さん】「もうすごく感じてます。カップルの方、若い女性の方とか、結構お目にかかるからね。今までそういうことはあんまりなかったですよね」

売り上げは以前の「1.5倍」に達した月もあるといいます。

「万博今から行くんですけど、中に入ったら並ぶじゃないですか。なので、ちょっとブラッと寄って先に食べてしまおうと」という理由で立ち寄る客も多いとのこと。

■万博に来場する日本人だけではなく海外パビリオンで活動するピアニストも

秦アナがお店で出会ったのは、万博のパビリオンで、ショパンコンサートで演奏しているというポーランドのピアニスト。

「どのメニューがいいですか?何か伝統的なものを」とおすすめメニューを聞かれました。

【秦アナ】「Japanese traditional menu..そば…うどん…」
【客】「麺類じゃないものは?」
【秦アナ】「Every menu is great!(全部おいしいよ)」

■「体力的にはやっぱりしんどい」半年も「万博の効果はありがたかった」

万博が終わってしまうことについて、「また元に戻るから。平穏な」と店主の中元さん。昼前の午前11時から満員になることもあり、「体力的にはやっぱりしんどい」と激動の半年間を語ります。

【中元さん】「物価高ですからね、何でもコストが高くなってるでしょう。ですからこういう万博の効果のありがたかったですね。売り上げが上がったからね」と万博に感謝も。

【秦アナ】「何度も期間中いらっしゃった方とかもいるんですか?」
【中元さん】「結構いますよ。『なかもとパビリオン』が最後やっていう人が」
【秦アナ】「なかもとパビリオン!?ここも万博の一部として捉えてる方も」
【中元さん】「そういう人もいましたね 嬉しい言葉やったけど」

「万博パビリオン」の一つとして楽しむ人も増えているとのことでした。

大阪・関西万博は会場内外で大きな経済効果を生み出しました。個人経営の飲食店では、野口さんのように「夢」を追って万博に参加した人も、会場外で恩恵を受けた人も、それぞれの形で万博効果を実感しているようです。

(関西テレビ「newsランナー」 2025年10月10日放送)

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