長野市で猫39匹が保護された「多頭飼育崩壊」のその後。保健所の収容が満杯状態になり心配されたが、多くが新たな家族に引き取られた。8歳の保護猫と新たな生活を始めた家族は「毎日少しずつ距離が近づいている」と話している。
多頭飼育崩壊”39匹を保護
8歳のメス猫「キラ」。この夏、長野市で起きた多頭飼育崩壊で保護され、譲渡先の家庭で新生活を始めている。
元の飼い主は、1人暮らしをしていた60代の男性。男性は7月末、突然体調を崩して入院。ペットの猫が増え過ぎて正常な状態で飼えなくなった「多頭飼育崩壊」が起きていて、39匹が置き去りになった。
保健所は8月上旬までに全てを保護し、猫舎は一気に収容限度を超えた。
8歳「キラ」を引き取る
長野市内に住む青井さん。保健所のSOSを知って譲渡会に参加し、1カ月前に「キラ」を引き取った。
「キラ」はまずケージの中で家に慣れ、1週間前から猫の部屋ですでに飼っていた4匹の猫と同居を始めた。
一番の先輩、リーダー格の「モモ」。次に家に来たシャイな「ベル」。3歳のきょうだい「姫」と「ユン」。モモ以外は皆、保護猫だ。
なかなか距離が縮まらない…
お互い警戒心も残しつつほどよい距離感で過ごしているようだが、なかなか縮まらないのは人との距離。
青井千穂さん：
「これからです。まだまだだね」
おもちゃで誘うと―。
青井千穂さん：
「あ、違う、違うんだ。君じゃないんだ」
おもちゃにすぐ反応し、楽しそうに遊ぶ先輩猫たち。肝心の「キラ」は、その様子を不思議そうに見つめるだけ。
青井千穂さん：
「けんかしない。なかなか、ですね。今までの子に比べたら全然手ごわい。8歳、性格も出来上がってるし、今までの環境と全然違う所に来たので」
子猫のように小さい体
気になることがもう1つ。体の大きさ。「キラ」は8歳ながら、子猫のように小さいのだ。
ごはんやおやつは、栄養価の高いものを意識して与えている。
青井さん：
「体重が2.4kgだった、最初。ガリガリ（やせていた）。2.4kgなんて子猫の重さ」
前の家では、ごはんにありつけないことが多かったのだろうか。
青井さん：
「おいしい？」
譲渡先が見つからない猫も
8月の譲渡会から1カ月余り―。
39匹の猫たちは30匹が譲渡された。2匹は病気で死んでしまい、今、保健所には7匹が残っている。
多頭飼育崩壊で保護された猫のほとんどは、飼い主と触れ合ったり、声をかけられたりする機会があまりなく人慣れしていない。
この日の譲渡会でも、固まったように動かない多頭飼育崩壊の猫をよそに人懐っこい猫が人気だった。
長野市動物愛護センター・関口徳之さん：
「臆病だったり、とっつきづらそうな猫だと、譲渡に時間がかかる。気長に慣らしていただける、慣れなくても生涯面倒見てもいいよと、そんな気持ちが譲り受けてくれる方には必要になる」
譲渡会と共に行われたペットの慰霊祭。2024年度、譲渡先が見つからないまま長野市保健所で一生を終えた保護猫は18匹だった。全体の14%に当たる。
以前は定期的に行っていた殺処分も、今は苦痛を取り除くためやむを得ない安楽死だけ。多くは病気や高齢による自然死だ。
「少しずつ距離が近づいている」
「キラ」を譲り受けた青井さんは当初、他の猫を希望していたそう。抽選で漏れ、残った中から「キラ」を連れ帰った。
青井千穂さん：
「キラを引き取ってよかったよね。他の猫でもそう思うよね」
娘・奏和さん：
「（キラと）たくさん遊びたい。（遊べるようになるかな、どう？）あんまり（そう）なんないと思う」
飼い始めてから1カ月ほど。少しずつだが変化も見えるそう。
「ニャン、ニャン」
青井千穂さん：
「人がいなくなると鳴き声がするんです。寂しいとか、いてほしいって思ってくれているのかな」
娘・奏和さん：
「（どんなふうに鳴く？）子犬（みたいに）」
青井千穂さん：
「子犬みたいに、かわいい声だよね」
さらに9月22日の夜には―。
（青井さんからのメッセージ）
「さっき、ついに私の座る近くでくつろぎ始めました。まだ慣れないし、動くと逃げちゃうので動けないですが、感動中です」
「キラ」のペースで少しずつ距離を縮め、それを楽しむ家族。過酷な環境を生き抜いた猫たちが、人と一緒に幸せになれるよう願いながら毎日を過ごしている。
青井千穂さん：
「人間の思うようにはいかない。それがまた本当にかわいい。毎日毎日、ちょっとずつちょっとずつ、近づいてきてるのかなって思いながら」
