仙台市に住む20代の男性が、警察官を装って事故処理や交通整理にあたっていたとして、宮城県警は6日、男性を道路運送車両法違反(不正改造)などの疑いで書類送検したと発表した。男性はバイクを“黒バイ”仕様に不正改造し、現場で「宮城県警 暴取隊です」と名乗っていたという。
黒バイ風にバイク改造 赤色灯とサイレン装備
書類送検されたのは、仙台市泉区に住む20代の飲食店従業員の男。警察によると、男性は今年8月3日、所有するバイクに赤色灯やサイレンを取り付け、不正改造。8月28日と9月2日には、無免許のまま泉区内の国道などを走行した疑いがもたれている。
バイクは、スズキの「Vストローム250」。メーカー公式サイトでは「パワフルさと扱いやすさを両立したスポーツアドベンチャーツアラー」として紹介されているが、男性はそもそも運転免許を持っていなかった。
事故現場で「宮城県警 暴取隊」と名乗る
9月2日午後、泉区内で発生した交通事故の現場に、男性は“自ら駆けつけた”。事故車両の前に立ち、「宮城県警暴取隊です。暴走族対処部隊になります」と当事者に声をかけ、警察官に成りすまして交通整理を行ったとされる。
以前から泉区内では、現場に到着した本物の警察官が不審な男性の存在に気づくことがあったものの、「事故処理の途中で姿を消していた」という。不可解な状況に、署員が不審を抱いていた。
「警察官に憧れていた」赤色灯はネット購入
男性は警察の調べに対し、容疑を認めた上で、「警察、特に白バイに強く憧れていた。真似てバイクを改造し、危険運転の車両を止めたり、事故車の誘導をしたりしていた」と話しているという。
バイクに取り付けた装備はインターネット通販で購入。運転中は黒色のつなぎを着用し、両腕に警察エンブレムを模したワッペン様の装飾も施していた。いわゆる「警察マニア」とみられる。
そもそも“黒バイ”は今の宮城県警には存在しない
男性が憧れた「黒バイ」は、かつて暴走族対策用に夜間運用された覆面バイク部隊。車体を目立たない黒に塗装していたことから、俗に「黒バイ」と呼ばれた。
現在も一部の警察では導入例があるが、宮城県警では少なくとも東日本大震災以降は運用していない。つまり、県内で“黒バイ隊員”を名乗る人物がいれば、それ自体が不自然な存在だった。
「不審な黒バイがいる」住民の通報で発覚
この事件は、近隣住民からの「不審な黒バイを見かけた」「宮城には黒バイはいないのでは」といった通報をきっかけに発覚した。
男性は事故現場のような緊迫した状況で、まるで警察官のようにふるまっていた。しかしその正体は、免許も持たずに改造バイクを駆る「なんちゃって警官」だった。
宮城県警は、今後こうした行為が本物の捜査や交通業務を妨害しかねないとして、注意を呼びかけている。