古くから、日本の家庭で愛されてきた「豆腐」。今、その豆腐の需要が「TOFU」として、欧米を中心に広がっている。
その人気の一方で、日本では、昔よく見かけた「街の豆腐店」が減少している。一体、豆腐業界で何が起きているのか。

■「豆腐」の国内市場規模は1.8倍に伸びる見込み
遣唐使によって奈良時代に中国から伝わり、江戸時代には、一般の家庭にも普及していたとされる「豆腐」。
いまでは商品の多様化などが進み、国内の市場規模は去年のおよそ173億円から2033年には、およそ1.8倍の306億円に伸びる見込みだ。

■製造業者はピーク時の10分の1に減少
しかし、この波に乗れずに苦境にあえぐ人も。実は、豆腐を製造する事業者が減少している。
1960年のピーク時は5万1,519あった事業者が、2023年には10分の1以下の4,277にまで減少。

■なぜ「街の豆腐店」は減っているのか
需要が高まる一方でなぜ、「街の豆腐店」は減っているのか。
取材班が訪れたのは、大阪府の豆腐組合。理事長の竹内さんもかつて、およそ30年間、豆腐店を経営していたが「建物の老朽化」により8年前に店を畳んだ。
大阪府豆腐油揚商工組合竹内啓太事務局長(66):(業界的に)儲かりにくくなった、それが大きい。近所にスーパーができたりとかして、お客さんの流れが変わってしまったとかで、どんどん廃業していく。
かつて、豆腐などの食料品は商店街で買い揃えることが多かったということですが…時代の変化とともにシャッターをおろす店が増え、商店街は衰退。多くの人がスーパーなどに流れてしまった。
大阪府豆腐油揚商工組合竹内啓太事務局長(66):機械の修繕とかそういうメンテナンスに関する費用がどんどん高くなっていったりとか、維持するのが大変になってきた。
そして、追い打ちをかけているのが後継者問題だ。
大阪府豆腐油揚商工組合 竹内啓太事務局長(66):(豆腐店を)やられている方が高齢化してきて、それに伴って後継者の人がいないっていうか、後を継がせたくないっていうような商売に変わってきた。

■街の豆腐店はどのような生き残り策を打っているのか
いまも営業を続ける街の豆腐店は、どのような生き残り策を打っているのか。
明治30年創業の豆腐店「とようけ屋山本」。店自慢の「豆腐」や…一枚一枚丁寧に揚げる「揚げ豆腐」などおよそ130年間、変わらぬ味を守り続けている。
常連客:味が全然違う!どう違うのかっていったら…とにかくおいしい!それしかないですね。スーパーにも150円くらいでありますけど、ここのは高いけど無理して買いますね。
常連客:美味しいのでこの伝統の味は引き継いでもらいたいと思います。
常連客の下支えがあるものの、この店も例に漏れず来店客の数は年々、減少。店の売り上げは、ピーク時と比べて3分の1以下まで減ったということです。
とようけ屋山本三代目 山本久仁佳さん:前は近所を見て、良いものを作ろうと頑張ったものですけど、だんだんと減ってきて、近所から無くなってしまって寂しいです。
これまで手をつけていなかったスーパーへ商品を卸すなど何とか、売り上げを落とさないよう試行錯誤の日々…。

■豆腐の世界の市場規模は、2032年には約1.4倍に達する見込み
そんな厳しい状況の中、“ある期待”を胸に膨らませているのだ!
とようけ屋山本三代目 山本久仁佳さん:こないだもイタリアの女の人が家で豆腐を作っているけど、固くて食べられなくて日本の豆腐を見たいという人が来られましたけど。
(Q:海外の人もよく買いにくる?)
とようけ屋山本三代目 山本久仁佳さん:このごろ多いです。
実はいま、欧米を中心に豆腐の需要が拡大していて世界の市場規模は今の4822億円から、2032年にはいまのおよそ1.4倍の6925億円に達する見込みだ。
とようけ屋山本三代目 山本久仁佳さん:欧米社会でそれがうまくいけば、肉と同じくらいおいしいなと思ってもらえるように、意識してもらえたらまた先が広がるかなと。

■LAではスーパーに多く並ぶ「TOFU」豆腐専門店も
なぜ、アジアで親しまれてきた豆腐が、今、欧米で人気となっているのか?
取材班が向かったのはアメリカ・ロサンゼルス。果たして、どれくらい日本の豆腐が人気なのか?街で調査すると…いきなりみつけた!TOFU「トーフ」の文字!
記者リポート:こちらロサンゼルスにある豆腐専門店ですがお店で手作りで作られているということなんです。ざる豆腐やおからまで売られています。
客:サンキュー。
客:調理は簡単でただゆでるだけ。何も加えなくても十分おいしい。豆腐は体にいいから買っています。
日本で少なくなっている町の豆腐店がアメリカに…お客さんも続々と訪れ、売れ行きも好調のようだ。

■スーパーでも「TOFU」が多く並ぶ
続いて向かったのは地元のスーパー。
記者リポート:こちらのコーナー下段がほとんど豆腐製品ですね。売られているパッケージは『TOFU』と表記されています。
ここでも“ジャパニーズトーフ”はポピュラーのようだ。
客:私は肉の代わりに豆腐を使って料理をします。私はヴィーガンなので肉は食べません。特に硬めの豆腐が好きで、何にでも使えて、食生活を支えてくれるよ。
このお店の豆腐のパッケージ、よく見ると何か見覚えのあるロゴが…日本の食品メーカー「ハウス食品」だ。

■10年間で2倍くらいの売り上げ規模に
ハウス食品の現地事業所で話を聞いた。ちなみにハウス食品と言えばカレーのイメージが強いが…
ハウスフーズUSA友原厚COO:1983年に現地で豆腐事業をされていた会社と一緒に手をとって豆腐事業に参画させていただいたのが始まり。(アメリカでは)われわれは圧倒的に豆腐事業の方が大きいです。アメリカの売り上げの9割以上が豆腐です。
昨今の欧米での人気の高まりについては…
ハウスフーズUSA友原厚COO:健康志向の高まりで、『肉もおいしいけど豆腐も取り入れていこう』という方とか、『完全にベジタリアンとして肉はやめている』方とか増えてきたので、直近の成長を後押ししている部分だと思います。だいたいこの10年間で2倍くらいの規模感になっている。
海外で広がる豆腐の人気!今後も市場の拡大が見込まれますが…日本国内の豆腐は果たして安泰なのか?
全国豆腐連合会青山隆相談役:(豆腐店が)従来の形のままでですね、ずっと継続しているところはだんだんとお客さんもいなくなるというような状況だと思いますね。やはり今の時代にあった形の商品づくりをしていかないといけない。
日本の食卓に欠かせない「豆腐」。今後の動向に注目だ。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年10月2日放送)
