富山地方鉄道が「運転手不足」を理由に、県内17路線の路線バスを10月1日から廃止した。平日50便、休日45便の減便となり、県民の日常生活に大きな影響を及ぼしている。


戸惑うバス利用者たち


富山市内の停留所では、路線バスの大幅な減便に伴い、新たな時刻表の貼り替え作業が行われた。

バス利用者からは「春日温泉に行く時間が今日から変わったので書いて帰ろうと思って。帰ってくる時間が遅いのが心配」「仕方ない。運転手がいないというのだから」といった声が聞かれた。
細入地域の住民「見捨てられているよう」

廃止となった路線の一つ、猪谷線は富山市細入地域の重要な交通手段だった。これまでは市街地から国道41号線を通って1本で行くことができたが、10月1日からは笹津駅でJR高山本線に乗り換えなければならなくなった。

住民からは「笹津から猪谷行きの時刻表を書いてきたら全然列車がない」「まるで見捨てられているよう」という困惑の声が上がっている。
地域経済への打撃と若者流出の懸念


沿線の温泉施設「楽今日館」は利用者減少による売上への影響を懸念している。吉岡暢大支配人は「免許を持っている方は自家用車でいらっしゃる方も多いが、免許を返納してバスを利用している方も多い。そういう方が当館を利用できなくなると営業面でも懸念材料だ」と話す。

さらに細入自治会連合会の江尻裕亮会長は若者の流出を危惧している。「地域住民はJR高山本線の沿線よりも国道41号線を使った大沢野や旧富山市の南部地区の医療機関や買い物で国道41号線が生活圏。JRの駅舎が付近にない地域の若者は地域外に転出するということを言う総代もいる」と述べた。
今後もさらなる廃止の可能性

富山地方鉄道は今回の路線廃止後も運転手が13人不足している状況だ。同社自動車部の奥村大営業課長は「利用者の多いところはなるべく維持していきたいが、労働力が不足していくと現実的に運行できないということが続く可能性がある」と説明。「代替措置がある路線や利用者が少ない路線をやむなく廃止にせざるを得ない場合がある」と今後の見通しを示した。
路線バス廃止を受け、細入地域の自治会連合会は富山市にコミュニティバスやシルバータクシーの導入を求めている。