ブ~ンと厭な羽音とともに近付いてくる蚊。夏に出没する鬱陶しい存在だが、街で話を聞くと「この夏、あまり刺されなかった」という声が多く聞かれた。蚊の生態について調べてみた。
蚊が活発になるの気温は25~30度
害虫について研究する九州大学農学研究院の藤田龍介准教授。同行して蚊の生態を教えてもらった。

「ヤブ蚊が多いのは、文字通り藪が多いところなので、木陰とかから人を目がけて襲ってくる」と木陰で虫取り網を操る藤田准教授。網には、たくさんの蚊が捕獲されていた。

藤田准教授によると、この夏、蚊に刺される人が少ない結果になったのには記録的だった暑さが関係しているという。

「暑過ぎると直射日光を浴びた蚊は、脱水症状を起こして死んじゃうので、ずっと日陰で休んでいます。で、気温が下がってきて、陰が増えてくると、今度は活動が活発になるので、大体、蚊が多いのは25~30度。この気温が一番、蚊にとって心地いいというか、活性が高くなる温度」

実は、暑さがピークの7月から8月にかけては、日陰になる場所に隠れていることが多く、暑さが和らぐ9月中旬から10月下旬にかけて、活動が本格化するという。まさにこれから蚊に悩まされるシーズンなのだ。
デング熱とチクングニア熱に要注意
「いま日本で気をつけるべきなのは、デング熱とチクングニア熱の2つ」。特に2025年は、蚊が媒介して起こる感染症に注意が必要だと藤田准教授はいう。

「基本的に人や動物。感染した人がいるとすると、吸血したときに血液中のウイルスが蚊に取り込まれて、次に吸血するときにその人間の血管の中に直接ウイルスが打ち込まれてしまう」というのだ。

2014年に日本でも流行したデング熱。発熱や発疹、頭痛などの症状が現れ、重症化すると死に至ることもある感染症だが、2025年は東南アジアのほかアメリカでも感染者が相次いでいるという。

さらにデング熱とともに、警戒が強まっているのが、チクングニア熱だ。藤田准教授によると「症状としてはデングに非常によく似てて発熱と発疹がある。あと特徴的なのは関節の神経痛ですね。通常のデングよりちょっと厳しい症状が出る」という。

8月から中国の広東省で爆発的に感染が広がっているチクングニア熱。インバウンドや海外からの帰国者など人の往来が増える中、ウイルスが日本に入ってくるのも時間の問題だという。

「8月に福岡空港の空港検疫の方で輸入感染症例というのが報告されているので、空港までは来ていると。あとはもうそこを抜けてしまうか、上手くそこで止められるかという、本当に今水際のキワキワのところという状態です」

「リスクそのものは今、過去最高になっている状態です。今の間違いなく過去最高」と藤田准教授は警鐘を鳴らす。
肌に優しい弱酸性虫よけスプレー
蚊から身を守るにはどうすればいいのか。福岡市のホームセンター『グッデイ姪浜店』でおすすめの、対策グッズを教えてもらった。

数ある商品の中でスタッフのイチ押しは、2025年に発売された肌に優しい弱酸性の虫よけスプレー。小さな子どもも安心して使うことができる。ちなみに、虫よけスプレーは、吹きかけるだけでなく、しっかりと塗りこむことが重要なのだという。
感染症で年間約60万人が死亡
蚊は、実は最も人の命を奪う生き物とされていて、WHO(世界保健機関)によると蚊による感染症で、世界では年間約60万人が亡くなっているという。

感染症リスクが、かつてないほど高まっている日本。藤田准教授によると、蚊の発生を防ぐポイントは水を溜めないことだという。蚊は水分のある狭い場所を好み、植木鉢の水受けなどが発生源になりやすいというのだ。蚊は卵から成虫になるまで10日から2週間かかるため、基本的には「週に一度」のペースで溜まった水を捨てると蚊の発生を防ぐことが可能だ。

行楽の秋を迎え外出も多くなるこれからのシーズン、肌の露出を避け、虫よけスプレーを使うなど、より一層の注意が必要となる。刺されるとかゆみだけでなく感染症の原因にもなりうる厄介者、蚊。10月いっぱいは活動期とみられ、油断できない日が続きそうだ。
(テレビ西日本)