高齢者が高齢者を介護する「老老介護」。日本の高齢化社会が進む中、鹿児島県内でも不安を抱きながら日々介護する人や、地域での互助活動に取り組む団体もある。

一日中続く介護の現実

鹿児島市に住む80歳の夫と86歳の妻の家庭。夫が妻の介護を一人で担っている。妻は2年前、手のこわばりや姿勢を保つことが難しくなる難病と診断され、要介護5に認定された。当初は施設に通院していたが、本人の希望で2024年から在宅介護に切り替えた。

食事は夫が担当し、妻が食べやすいよう柔らかい食材を使い、一口大にした料理を時間をかけて食べさせている。夫は介護を始めた当初の心境を「最初はずっと、介護をさせられている、命令されてしているような気持ちになっていた」と振り返る。

80歳の夫が86歳の妻の介護をしている
80歳の夫が86歳の妻の介護をしている
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昼すぎから夕方までは訪問看護を活用。夫はこの時間を買い物や友人との交流にあてる。「オンオフが少しはできた方がいい。そうしないと自分が縛り付けられているようになってしまう」と語る夫だが、「(介護は)終わりが分かってないから。ここまですれば終わりということもない」と介護の長期化に対する不安も抱えている。

しかし、最近では「素直に見られるようになったらいいな。顔を向けられたら一番いいんじゃないかな。最近愛おしくなりました」と心境の変化も見られる。

深刻化する高齢化と「老老介護」

鹿児島県の高齢化率は32.5%と全国平均(28.8%)を上回り、南大隅町や錦江町では40%を超える。高齢化率の上昇に伴い、「老老介護」の世帯も増加している。

体力の低下などで介護する側に大きな負担がかかる中、鹿児島県内では悲劇も発生している。2024年8月、阿久根市で77歳の夫が認知症の75歳の妻を介護疲れで殺害する事件が起きた。実刑判決を受けた夫は裁判で自分も死ぬつもりだったとを明かした。

介護疲れは社会問題となっている
介護疲れは社会問題となっている

鹿児島大学医学部の池田由里子助教は「更なる負担につながらないように手を差し伸べる、もしくは差し伸べたいと思うようなコミュニティー作りが大事」と指摘する。

地域で支える取り組み

鹿児島県では2014年から「高齢者地域支え合いグループポイント事業」を実施。65歳以上の高齢者3人以上のグループでボランティアなどを行うとポイントがたまり、地域商品券などに交換できる仕組みだ。2024年は約3万7000人がこの活動に参加した。

高齢化率41.4%の肝付町では、「いったんもめんと結いの会」が活動している。71歳から86歳の12人のメンバーが毎週水曜日に「おかずのおすそ分け活動」に取り組む。食材を細かく切るなど、高齢者が食べやすいよう工夫されたおかずは、地域住民の見守りも兼ねて直接届けられる。

活動を9年続けるメンバーは「(活動でポイントが貰えることは)皆さん張り合いになります」「みんなそれぞれに薬をのみながらだけど、みんなが薬を全くのまないということは少ないから、私だけでじゃないんだと思ってそこでも元気をもらえる」と語る。

いったんもめんと結いの会(鹿児島・肝付町)
いったんもめんと結いの会(鹿児島・肝付町)

残された課題

しかし、池田助教は「新しいコミュニティーに属することが苦手な方もいる現実がある」と指摘し、そうした人々への支援が課題だと語る。

老老介護の家庭にどうアプローチし、どんなサービスを提供するのか。高齢化社会が進む中、国全体で考えなければいけない大きな課題と言えるだろう。

(動画で見る:高齢化率40%を超えたまち 老老介護の現状を追う

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鹿児島テレビ
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