名刺交換減で1企業の経済損失は約21.5億円

新型コロナの感染拡大に伴い、テレワーク勤務とする企業が増え、また外部との打ち合わせや商談がオンラインへと移行したことだろう。

結果として、社外の人と直接会う機会がなくなり、名刺交換をすることも減ったのではないだろうか。

そのような中、「オンライン名刺」機能の提供をし、名刺の管理サービスを展開するSansan株式会社が「コロナ禍における企業の商談・人脈・顧客データに関する調査」を行い、名刺交換の減少が引き起こす1企業当たりの平均経済損失額が年間約21.5億円だと発表した。

調査は、仕事の上で商談をすることがある20代から60代の会社員、経営者・役員1000人を対象に、9月5、6日にウェブアンケートで実施。

その結果、ビジネスのオンライン化で顧客データを蓄積・管理・活用できなくなった人が増加していることが判明。緊急事態宣言前後には顧客データの情報源である名刺の交換枚数が減少し、これがもたらす影響が、仮に100人規模の1企業あたりの平均経済損失額が年間約21.5億円と推計したのだ。

緊急事態宣言前後で名刺交換が約3割減

具体的には、緊急事態宣言前後でオンライン商談が2.5倍に増加し、名刺交換枚数は約3割減少したことが明らかになった。

そして、商談のオンライン化により名刺交換などが減った結果、顧客データを蓄積・管理・活用できなくなった人が26.6%いたという。

提供:Sansan株式会社
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そしてSansanは、今回の調査結果や総務省の「平成28年度経済センサス活動調査」などのデータを元に計算し、本来行えるはずだった1人あたりの名刺交換を年間約201枚、名刺1枚あたりの経済的な価値を約37万円と推計。

企業の年間損失額を試算するために必要な名刺1枚当たりの価値(¥/枚)
=対象業種の国内年間総取引額(¥)÷(対象人数(人)×一人当たりの年間名刺交換枚数(枚/人))

37万円=約1628兆円÷(約2190万人✕約201枚 )

この数値を減少した平均名刺交換枚数などで計算すると、常用雇用が100人以上いる企業の場合、1企業あたりの平均年間経済損失額が約21.5億円となったのだ。

企業の年間損失(¥/企業)=緊急事態宣言前の名刺1枚当たりの価値(¥/枚)×緊急事態宣言前後の名刺交換枚数差(枚)×1企業の人数(人/企業)

約21.5億=約37万円✕約58枚✕100人

提供:Sansan株式会社

100人規模の企業で、年間約21.5億円という経済損失が推計されるとは驚きだ。ただ、afterコロナの時代になっても商談のオンライン化の動きは変わらないだろう。

これまで何気なく行っていた名刺交換には、実はとても重要な役割があったということだが、では今後、経済損失を減らすには会社はどのような対応をするべきなのだろうか? Sansanの担当者に話を聞いた。

名刺交換には3つの価値と役割

ーー今回調査したきっかけを教えて

新型コロナウイルスの影響により、商談のオンラインシフトが加速する中、対面で当たり前に実施していた名刺交換ができず、打ち合わせでアイスブレイクや役職の把握がしづらい、打ち合わせ後に相手の連絡先がわからず、長期的に見ると人脈が活用しづらいといった課題が明らかになってきました。

そこで、ビジネスパーソンの商談状況や、企業の顧客データ基盤の構築が新型コロナウイルスの流行によりどのような影響を受けたのか、実態を明らかにすべく調査を実施しました。

ーーそもそも、名刺交換にはどんな意味がある?

まず名刺の価値・役割としては以下の3つがあると当社は考えます。

1:公式の情報
会社がコストをかけて、部署や役職、連絡先など、ビジネスを始めるために必要最小限の情報を詰め込んでいます。個人のSNSとは大きく異なるのがこの点です。

2:接点情報
名刺を持っているということは、直接の接点があったという証でもあります。

3:人脈=資産
また、名刺情報の蓄積は社員一人ひとり、ひいては組織全体の強みも表していました。

名刺交換するだけで、一瞬でこれらの情報交換を終えることができます。当たり前になりすぎて、見過ごしていたこの名刺の持つ価値が、急激にオンラインへとシフトしたことで浮き彫りになりました。


ーーでは、商談のオンライン化で名刺交換はどう行われていた?

オンライン名刺がない場合は、口頭での挨拶もしくは、メールにより出席者の名前や部署名・役職を補完。その後、手入力により、会社のデータベースや個人のアドレス帳に入力していました。

しかし、これらも抜け漏れや、会社の公式の情報という名刺にはあった正確性が担保されていない、といった課題がありました。
 

ーーafterコロナ時代も名刺交換は減ると予想している?

4月に緊急事態宣言が出されてからは、一時、当社サービス全体で、紙での名刺交換枚数は前年比で5割以上落ち込みました。しかし、宣言解除後、6月16日にオンライン名刺を出してからは徐々に回復傾向にあります。

名刺交換により従来得られていた情報の蓄積ができなくなった、この状況に危機感をもった企業がオンライン名刺の導入を始めています。

オンライン名刺が普及すれば、オンラインおよび紙での名刺交換はビジネスシーンで今後も行われると考えます。

名刺交換減少は会社資産の減少と同じ

ーーでは、顧客データを管理できない人が増加したのはなぜ?

オフラインでは当たり前に行われていた名刺交換ができず、例えば参加者全員の所属や役割を、コンタクト情報として蓄積できないといった弊害です。

これにより、社内全体の顧客情報の減少をもたらし、在宅やリモートワークへ移行し一定期間経たまさしく今、課題として浮き彫りになってきているのだと感じています。
 

ーー「オンライン名刺」の特徴は?

オンライン名刺を活用することで、複数名が参加している商談でも、所属部署や肩書き情報を漏れなく顧客データとして登録することが可能です。また、Sansan上で管理されることで、人事異動などの顧客の変化を把握や、企業情報の収集が効率化され、営業の質・スピードの向上が期待されます。


ーー今後、経済損失を減らすにはどう対応するべき?

名刺交換の減少の大きな要因のひとつは、オンライン会議上では名刺交換をしない(できない)ことです。しかし、オンライン会議もオフラインのリアルな会議と同様に、出会いの情報を蓄積する必要性や重要性に今一度注目すべきだと思います。

まずは、名刺交換の減少=会社の資産の減少であると捉え、経営層が旗振り役となり、オンラインシフトの中で、顧客データの管理と利活用に資源を割く必要性があると考えます。弊社はそのためにも、オンライン名刺交換の利用を強く推進しております。

なお名刺交換の減少で、情報交換などの機会も減ったのではないかとも考えていたが、「ビジネスのオンラインシフトにより、むしろ距離や時間に縛られず、ビジネスの出会いや情報交換の機会は増えた」ということだ。

ちなみに、今回の試算について関西学院大学大学院経営戦略研究科の岡田克彦教授に感想を聞いたコメントもリリースに掲載されていたので、最後にその一部を紹介する。

「今回、名刺交換の減少による『顧客データ危機』が引き起こす経済効果の推計結果を拝見しました。名刺交換の価値評価は厳密には難しく、これよりもずっと大きい可能性も否定できません。確実に言えるのはデータの世紀においては、企業は今後さらに重要になってくる無形資産である『顧客データ』の管理と利活用にどれだけの資源を割くかが自社の将来を左右するということです。」
 

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