鹿児島・志布志市の新人職員3人が市の魅力を伝える動画作りに挑戦した。3日という短い制作期間だったが、取材を通して市民と交流したり、3人で協力してすべてを完結させるなど、得られた成果は大きかったようだ。
市の新人職員にPR動画作成のミッション
鹿児島県志布志市は大隅半島の東側、宮崎県との境にある。太平洋に面していて、約26000人が暮らす風光明媚な街だ。農業・漁業・畜産業が盛んで、特産品も多い。
その志布志市の市役所で働く、健康長寿課の菅野壱圭さんと税務課の長井晃輝さん、そしてこども子育て課の阿部ひなたさんの3人は、2025年4月入庁した新人職員。
「市民の笑顔をたくさんつくれるような職員に」「市民が笑顔で暮らせるように」「市民の期待に応えられる職員に」と、みんな仕事のやる気が満々だ。
3人は、普段は違う部署で働いているが、今回はそろって志布志市の製茶工場を訪れ、それぞれ手にしたスマートフォンでお茶を入れるスタッフなどを撮影していた。というのも、彼らには『志布志市をPRする動画を作れ』というミッションが課せられたのだ。

収穫!撮影を通して多くの市民と交流

これは、計画力や課題解決力を身につけながら、地域に愛着を持ってもらおうと、志布志市が東京の映像制作会社と行った取り組みで、地元の高校生も参加した。
期間はたったの3日間。しかも企画から打ち合わせのアポイントメント、撮影、編集まで全てを同期で協力して行わなければならないという厳しい条件付きだ。

「朝から夕方にかけての1日観光巡りといったテーマの動画を作っています。」と菅野さん。テーマについて、3人で丸1日を費やして話し合ったという。
移住や産業などさまざまな意見も出たが、最終的に「観光」に決定。『志布志市へ車で観光に訪れる、20代から40代の人たちをターゲット』に制作することにした。グルメを中心に志布志の穴場スポットを回り、2分ほどにまとめるという。
3人は茶器を手に取ってスマートフォンを近づけたり、撮影するアングルや倍率を変えたり。時折専門家の指導を受けながら、真剣に取り組んでいた。

このほか、商店街にある食堂を訪れ、シラスやハモを使ったご当地丼なども撮影した。
取材に協力したお茶の直売所スタッフは「私も同じ新入社員という立場なので、一緒に頑張ってもらいたいです。」と3人にエールを送った。撮影を通して多くの市民と交流ができたのも、彼らとって大きな収穫だったに違いない。
編集で苦戦の市職員と余裕の女子高校生
最終日の3日目は、朝から編集作業にかかる。だが、撮影した映像への思い入れが強くなってしまい、短くまとめるのにかなり苦労している様子。
午後3時半。締め切りがあと1時間に迫った。「なかなか、てこずっていると思います。終わらせないといけないので、終わらせます。」と長井さん。顔には疲れが色濃く出ていて、焦りのせいか、表情は少しこわばっている。
一方、対照的だったのは、ミッションに参加した尚志館高校の女子高生たち。動画編集に慣れているのか「あとは2割のテロップとか」と余裕を見せた。余裕ですねという問いには「余裕ですっ。」歯切れよく答えると、「あははは。」と笑顔を見せた。

PR動画完成!YouTubeで公開予定
その後、新人職員チームはラストスパートをかけ、どうにか時間内にPR動画が完成した。
動画は今後、志布志市のYouTubeチャンネルで公開予定ということだが、内容を一部紹介しよう。
オープニングは、タイトルの「志(こころざし)溢(あふ)れる街 志布志」の文字と波打ち際の映像で始まった。
食堂のシーンでは、黒い角盆に香の物、汁椀、徳利、そして丼が乗っている。スッと丼のふたが開くと、中にはシラスと鱧(ハモ)天がたっぷり。彩りもよく、食欲がそそられる。盆の奥に、志布志特産の焼酎が置いてあるのも見逃してはならない。
製茶工場では、お茶屋さんの赤いのれんが心地よさそうに風に揺れている。のれんをくぐって中に入ると、店員がお茶の入った急須を手のひらに乗せ、ゆっくりしたペースでぐるぐると回している。手間を惜しまず丁寧に入れられた緑茶。コロンとかわいい透明のグラスに注ぐと、緑色の美しいグラデーションが生まれた。

地元愛♡増し増しでミッションクリア!

無事にミッションをクリアした新人職員たち。阿部さんは「すごく楽しかったです。観光PRを作る機会がありましたら、生かしていきたいなと思います。」とやりきった表情で語った。
「自然もありつつ、住民の皆さんが便利に暮らせる施設や店舗などもあり、非常に暮らしやすい町だと思います。」インタビューでも、志布志のPRを忘れない長井さんだった。
同期との絆はもちろん、志布志市の新人職員たちの地元愛もさらに増したようだ。