違法薬物事件が相次ぐ中、麻薬成分を含む「お茶」を製造・販売した罪などに問われ、一審で有罪となったものの、無罪を主張し続けている被告の男。
「ただのハーブティーで逮捕はおかしい」と訴えている。
実際に飲んだという人は「健康被害は感じない一方、体が勝手に動く状態が長時間続いた」と証言。
専門家は、違法な成分を長期にわたって摂取することによる、依存の恐れを警告している。
9日に言い渡される控訴審判決はどのような判断を下すのだろうか。

■水面下で広がる「違法薬物」
「違法薬物」をめぐる事件が後を絶たない。
9月3日には、俳優の男(26)が、大麻を所持した疑いで逮捕された。
さらに、違法薬物に手を染める人は増え続けている。
特に、大麻を含む麻薬の検挙数は、高い水準で推移している。
歯止めをかけるため去年12月、大麻に含まれる成分、「THC」を麻薬と位置付ける改正法が施行された。
規則が強化される一方で、水面下では、違法か否か“怪しい”製品も多く流通している。

■一審で有罪判決“あるもの”を製造・販売した男の趣味は雑草採集
関西テレビの取材に応じたこの人物も…。
被告の男:ローズマリーありますよ。大量に精油にしたりして、たばこに浸して『ふっ』とかやると、覚醒作用がある。
(Q.それは大丈夫な状態か?)
被告の男:大丈夫な状態、1時間もすれば「抜ける」から。
39歳の男。趣味は、「雑草採集」と話す。
取材中、道端に生えている植物を突然食べた。
(Q.何を食べているのか?)
被告の男:「ヒメジョオン」かなと思ったけど、違ったかな?綿毛になっているから味が違ったんだ。
スマートフォンで写真を撮って、先ほど食べた植物を調べる。
被告の男:やっぱり菊科だ!菊科、俺アレルギーなんですよ。
(Q.食べて大丈夫か?)
被告の男:大丈夫ではないですね(笑)
陽気に話す被告だが、“あるもの”を製造・販売した罪などで、一審で有罪判決を受けた。

■“究極のドラッグ”入りのお茶を販売
それが、「麻薬成分(DMT)入りの茶」。
“究極のドラッグ”とも呼ばれ、強い幻覚作用をもつ麻薬成分=DMT。
沖縄県に自生する樹木、「アカシアコンフサ」に含まれていて、これを原料に「麻薬入りの茶を製造し、販売していた」と話す。
この通称“アカシア茶”が麻薬とみなされ、2022年、京都地裁で懲役3年・執行猶予5年の有罪判決を受けたが、被告はこれを不服として控訴。
9日、大阪高裁で判決が言い渡される。
なぜ、麻薬成分入りの“アカシア茶”を販売したのか。
独自取材で、そのワケに迫った。

■違法薬物に代わる合法の薬物“アカシア茶”
被告の男:池袋駅前に立ったとき、向かいにでかいワゴン車がバーッて突っ込んできて、危険ドラッグで暴走した車が突っ込んだんだと後から知って。この危険ドラッグを撲滅せねばならないと思った一番最初のきっかけでした。
これがきっかけで、「違法薬物に代わる合法の薬物を模索した」と説明する被告。
たどりついたのがあの“アカシア茶”だと言う。
(Q.“アカシア茶”を初めて飲んだとき)
被告の男:すごいよかったですね。アカシアにはDMTという成分が含まれていて、そのDMTが精神を癒すと。癒している最中に、いろんな幾何学模様だとか、神とか霊とかそういったものを見るので。
(Q.神が見えるのか?)
被告の男:そうですね。見ようと思えば、見れますね。
判決文などによると、アカシアコンフサには麻薬成分=DMTが含まれているが、「木」自体は染料などにも使われるため規制はされていない。

■「水溶液は植物ではなく麻薬だ」として一審では有罪判決
被告は2016年ごろから、インターネットなどで“アカシア茶”の販売をスタート。
麻薬取締法違反で逮捕されるまでのたった4年間で、1600人ほどに販売し、得た利益はおよそ800万円。
被告の男:だっておかしいじゃないですか!植物をお茶にしただけで、逮捕はないですよ。さすがに。
裁判では、無罪を主張する被告に対し、検察側は「水溶液は植物ではなく麻薬だ」などと指摘。
一審の京都地裁は、「濫用による保健衛生上の危害が生じる恐れがあり、生成方法に照らすと麻薬に該当する」などとして、懲役3年・執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。
この判決に被告はこう、反論している。
被告の男:何も研究されていない状態で、そんなことを言うのはおためごかしでしかない。端的に言ってしまえば、麻薬の被害を防ぐお茶であると思ってます。

■アカシア茶を飲んだことがある人は「健康被害はなかった」が「身体が勝手に動く」
取材に対しても自身の行為は正当だったとし、身体への影響はないと主張するが…取材班は、“アカシア茶“を飲んだことがある人に接触。
アカシア茶を飲んでいた男性(30代):発達障害の診断を受けて、解決するためにいろんな方法をとっていた。
大阪府内に住む30代の男性。
27歳のときに発達障害と診断され、治療目的だとして“アカシア茶”に複数回、手を出した。
アカシア茶を飲んでいた男性(30代):アカシア茶って聞き慣れないものだっていう、不安はあったんですけど、問題ないだろうと僕の中では思って行動(飲用)に至りました。
(Q.健康被害について)
アカシア茶を飲んでいた男性(30代):あんまりなかったように思います。ていうか、まったくなかったですね。
健康被害はないとする一方で、その副作用については…。
アカシア茶を飲んでいた男性(30代):「身体が踊るような感じ」になったりしたことがあって
(Q.身体が勝手に動くのか)
アカシア茶を飲んでいた男性(30代):そうですね。
長いときには5時間もこの状態が続くそうだ。
男性は、麻薬だと認定された判決を知った上でこう、話した。
アカシア茶を飲んでいた男性(30代):別に麻薬でも何でもいいんですけど
(Q.“アカシア茶”を飲みたいか)
アカシア茶を飲んでいた男性(30代):必要があればそうですね

■「“怪しい成分が含まれているもの”は口にしないで」と専門家
一方で専門家は、違法成分の摂取が引き起こすリスクについて…。
湘南医療大学薬学部 舩田正彦教授:長期間の使用によって精神的な依存が形成されてしまう。それをもとに薬物を繰り返し使ってしまう。怪しい成分が含まれているものは、口にしないことを心がけるということがさらに望まれる。

■控訴審判決を前「まあ無罪でしょ」と被告の男
およそ1600人に麻薬成分入りの“アカシア茶”を販売した被告の男。
9日の控訴審判決を前に、最後、こう主張した。
被告の男:まあ無罪でしょ。こんなに引っ張って…。
(Q.確信してますか)
被告の男:確信してますね。(大阪高裁で)有罪だとしても最高裁で無罪。確定でしょ。
(Q.あなたにとってアカシア茶とは何ですか)
被告の男:ハーブティーです。ただのハーブティー。それ以上でも以下でもないです。
警察庁は「合法などとうたい販売されているものであっても、安易に手を出さないでほしい」と警戒を呼びかけている。
(関西テレビ「newsランナー」2025年9月8日放送)
