亡くなった家族の葬り方について。日本では伝統的に墓地に遺骨を納めるという形が一般的でしたが、少しずつ変化が生まれています。なかでも、「樹木葬」と「鵜宇木海洋散骨」を選ぶ人が増えています。

堤勇高アナウンサー
「青葉区の霊園です。樹や花、芝生や小川などが整備されていて、町中の公園のような雰囲気になっています」

青葉区郷六にある霊園。およそ5000平方メートルの土地に樹木葬を中心として1300の区画が設けられています。

こちらは、目印となる樹、「シンボルツリー」の周辺に控えめな墓石を置き、その下に遺骨を納める形。樹木葬には明確な定義がなく、様々な形があるそうですが、多くは樹木を墓碑に見立てるなどして、土の中に遺骨を埋葬します。

自然の中で眠るようなイメージが近年人気を集めていて、この霊園を運営する企業も需要の高まりを感じていると話します。

メモワール 菅原智義さん
「新規の来園者・見学者も増えてきていますし、より需要が高まっていると感じています」

この霊園に親の遺骨を納めた須田佳恵さん。今年の1月に父を亡くし、残された母の希望も聞きながらこの場所を選んだそうです。

堤勇高アナウンサー
「樹木葬にしようと思った理由は?」

須田佳恵さん
「母が『樹木葬がいい』という話をずっとしていて、子供(須田さんたち)にあまり負担をかけたくないというのが本音だったと思うんですね」

樹木葬は従来の埋葬と比べると費用が低い傾向にあります。さらに永代供養を請け負うところも多く、こちらの霊園のように墓石や周辺の管理も霊園側が行うものもあるなど、遺族の負担が少ないのも人気の理由です。

須田佳恵さん
「安心感ですよね。お花もお参りしたときにお供えしたものを元気がなくなったら取り除いてもらえますし、墓石・プレートが汚れている時にはきちんと磨いてくれる」

両親の墓について手続きを進める中で、須田さん自身にも心境の変化があったそうです。

須田佳恵さん
「本当は、私たちはここの墓に入ろうという気持ちはなかったんですけども、いろいろ考えていくうちに、ここがベストだねという話になった。いずれ入ろうかなという気持ちはあります。私も子供が2人いますけど、遠くに行って引っ越して、こっちに戻ってくることはないと思っているんですね。なので負担はかけたくない。両親と同じような意味合いですね」

これは人生の終わりに向けた準備、いわゆる「終活」に関するポータルサイトを運営する企業が行った調査です。

去年、このサイト経由で墓を購入した人を対象とする調査では、従来型の墓を選んだ人は17パーセントほど。一方、およそ半数が樹木葬を選んでいます。

需要の高まる「負担の少ない」葬りの形。海に遺骨を撒いて自然に返す「海洋散骨」もその一つです。散骨に同行しました。

この日午前8時過ぎに塩釜港を出航した船はおよそ20分かけて松島湾の沖合へ。目的地まで着くと船を停め、散骨の準備に入ります。

遺骨が入っているのは水に溶ける特殊な袋。遺族が船に乗って散骨するのが一般的ですが、今回行われたのは預かった遺骨をスタッフが散骨する「代行散骨」。

散骨を行ったNPO法人は葬儀業界と遺族の情報格差をなくそうと活動していて、その一環で依頼があった人からの散骨を引き受けています。

依頼する人は半分が海に思い入れのある人、そしてもう半分は残された人たちに負担がないようにというのが理由だそうです。

法人を運営する清田晴紀さんは今後、特にこの東北では海洋散骨の需要が伸びるのではないかと見ています。

うみとそら 清田晴紀さん
「他県に仕事に出られていて、実家がこちらにあって、お墓の引継ぎが難しいということも、今後増えてくるのかなと。それに比例して散骨の件数も増えてくるのかなと思う」

去年公開されたドキュメンタリー映画「あなたのおみとり」。仙台出身の映画監督・村上浩康さんが余命わずかとなった父を看取るまでの日々を記録したものです。村上さんは亡くなった父の遺骨を海洋散骨しました。

映画「あなたのおみとり」 村上浩康監督
「本人(父)の生前からの希望で、海洋散骨をいたしました。普通の格好で行って、普通に船で沖合に行って、遊覧船でクルーズするような気持ちで、父とお別れができたので負担もないですし、気持ちとしてはさっぱりとできたという感じがしました」

墓標はありませんが、海に眠る父のもとを訪れることもあるそうです。

映画「あなたのおみとり」 村上浩康監督
「遊覧船が出ているので母と2人で遊覧船に観光客のように乗って、沖に出たあたりで、あのへんだったかなという方向を見ながら、2人で手を合わせるというような供養をしています」

少子化や地方の過疎化、いわゆる「家制度」に対する考えなど、様々な社会情勢の変化を受け、葬りの形も多様化が進んでいます。

仙台放送
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