入院患者を殺害した罪で12年間服役したものの、再審=やり直しの裁判で無罪が確定した女性に対し捜査を行った滋賀県警に続き、県警を管轄する滋賀県の三日月大造知事が謝罪したことがわかりました。
滋賀県の湖東記念病院の看護助手だった西山美香さん(45)は、入院患者を殺害した罪で12年間服役しましたが、再審=やり直しの裁判で無罪が確定しました。
その後、西山さんが国(検察)と滋賀県(滋賀県警)を訴えた民事裁判で、大津地方裁判所はことし7月、警察による西山さんへの違法な取り調べがあったと認定。
そのうえで、「滋賀県警が痰が詰まって患者が死亡した恐れに言及した捜査資料を検察に送っていれば、有罪判決が変わっていた可能性がある」などとして、滋賀県に約3100万円の賠償を命じました。
この判決を受け、滋賀県は控訴を断念し、先月7日、県警トップの池内久晃本部長が西山さんに直接謝罪をしていました。
こうしたなか、西山さんの弁護団はきょう=5日午後、滋賀県の担当者が西山さんの弁護を務める井戸謙一弁護士の事務所を訪れ、三日月大造県知事が西山さんに宛てた手紙を手渡したことを明らかにしました。
三日月知事の手紙には「損害賠償を命じた判決を真摯に受け止め、知事として控訴しないことを最終決定したところです。これまで西山さんおよびご両親のご心労やご負担を長引かせてしまったことについて、誠に申し訳なく、深くお詫び申し上げます」と記載されています。
また、民事裁判の審理の過程で、事件の存在そのものを否定した再審判決の内容を踏まえずに、西山さんを犯人視する書面を県警が裁判所に提出したことについても「西山さんの心を深く傷つけてしまったことについて、改めて謝罪します」と書かれています。
さらに、国会で議論されているいわゆる「再審法」の改正についても「西山さんのような方が速やかに救済される制度となるよう見直しが行われることを期待する」と言及しています。
この手紙について、西山さんは「できれば直接会って謝罪してほしかったけど、形が残る方法で謝罪したいとい考えたという説明を受けて、納得しました。県警本部長に続いて知事も謝罪してくれたので、気持ちの整理がついたように思います」とコメントしています。
また、井戸謙一弁護士も「過去の冤罪事例で、県警本部長が謝罪したケースは少なくないが、知事が謝罪した例は知らない。滋賀県の最高責任者としてけじめをつけようとした三日月知事の気持ちは受け止めたい」としています。
一方、大津地裁の判決では検察の捜査の違法性が認められず、国への賠償は退けられたことから、西山さんは大津地裁の判決を不服として控訴しています。