神奈川・川崎市で元交際相手の男からストーカー被害を受けていた女性が行方不明になり殺害された事件で、神奈川県警は4日「警察の対応は不十分だった」とする検証報告書をまとめ、県警トップが謝罪した。これに対し、遺族は「納得がいかない」と語った。
神奈川県警トップが謝罪「危険性を過小評価」
4日午前、神奈川県警のトップ、和田薫本部長が会見で謝罪した。

神奈川県警・和田薫本部長:
県警察と致しまして、相談等を受けていた女性が殺害されるという重大な結果が発生したことを重く受け止めており、被害者の女性やその親族からの相談等に対する“不適切な対応”について深くお詫び申し上げます。

その様子を、4月に川崎市の住宅の床下から遺体で発見された岡崎彩咲陽さん(当時20)の父、鉄也さん(51)は唇を噛みしめながらじっと見つめていた。

岡崎鉄也さん:
これ会見なんですかね。僕からしてみたら質問される内容も分かっていて、それを読み上げているだけのような雰囲気にしか感じなかったですね。

県警は4日、一連の対応が「不適切・不十分」だったとする、検証報告書を公表。ストーカー被害の訴えに真剣に取り合わなかった実態が浮き彫りになった。

この事件では、彩咲陽さん(当時20)の元交際相手、白井秀征被告(28)が、殺人などの罪で起訴されている。

彩咲陽さんが20歳の誕生日を迎える前日の2024年12月12日午前4時10分、彩咲陽さんが友人と撮影した動画には白井被告とみられる目出し帽の男が、彩咲陽さんらがいた2階に視線を送りながら、辺りを執拗に歩き回る様子が映っていた。

この動画が撮影されたわずか4分後、彩咲陽さんは川崎臨港署に助けを求める電話をしていた。

彩咲陽さんは2024年12月9日から20日かけて、9回に渡って「元交際相手が自宅近くをうろついている」などと警察署に電話をかけていた。

報告書では、対応した警察官全員が危険性・切迫性を過小評価し、上司への報告もしなかったとしている。
彩咲陽さんの行方が分からなくなった後も警察は「事件性なし」
そして2024年12月20日、彩咲陽さんは身を寄せていた祖母宅から行方不明になった。その異変に気付いたのは祖母だった。

彩咲陽さんの祖母:
夕方大体6時半、7時過ぎかな。このカーテンが揺れたのであれって思って見たら、ガラスが割られていた。

その時の状況を家族が撮影した写真には、窓ガラスの鍵の近くが割られた状況が残されていた。

室内には、複数のガラス片が落ちている状況も確認できる。
しかし、警察は…。

彩咲陽さんの祖母:
警察が「外からじゃない」って。あり得ないじゃないですか、だって(私たちが)割る理由がないじゃない。

祖母は警察から「外側から割ったかは分からない」「事件性についてもない」と言われていた。

この窓ガラスの損壊について、報告書では「当然行うべき鑑識活動や指紋の採取を行わず、現場での初動捜査は捜査の基本を欠いた」と指摘した。
家族は何度も訴え続けたが…
また、彩咲陽さんが行方不明になり、遺族は本格的な捜査をしてほしいと何度も訴え続けていた。

彩咲陽さんの祖母:
私、言ったじゃないですか。20日に(窓ガラスが)割られて連れて行かれた、誘拐ですよって。

父・鉄也さん:
ひとりの命がかかっている。わかる?
捜査員:
わかります。そこはわかっています。
父・鉄也さん:
うちの娘が本当にあいつ(白井被告)に連れて行かれて死んでいたら、すみませんじゃ済まないですからね。

報告書では、被害者に危険が生じるという、認識に至らず、ストーカー規制法での警告などの機会を逃したとしている。

一連の警察の不適切な対応について、神奈川県警・和田薫本部長は会見で「こうした不適切な対応を招いた背景には、人身安全関連事案の対処にかかる署の対処体制、および本部対処体制のそれぞれにおいて体制が形骸化し、本来発揮すべき機能が発揮できなかったといった組織的構造的な問題点があったと考えられます」と述べた。
「殺人は“等”に入ってしまうのか」
和田本部長の会見と、報告書に目を通した父・鉄也さんは、表紙の題名に疑問を呈した。

父・鉄也さん:
「ストーカー」じゃなくて「ストーカー“殺人”」じゃないですか。殺人は「等」の中に入っちゃうのかなという、一番大事なところが抜けているから、自分の中では納得いってないんですけど。
冒頭に謝罪していただいたことに関しては、亡くなった娘に報告できるかなと思っている。

そして午後1時過ぎ、生前、彩咲陽さんが身を寄せていた祖母宅を、当時対応に当たるなどした警察官5人が訪れた。
家族によると、警察官らは彩咲陽さんの遺影に手を合わせ、遺族に謝罪をしたという。
「イット!」9月4日放送より)