自分たちが大好きな『福間の海』にもう一度、賑わいを取り戻したい。この夏、海を愛する人たちが立ち上がった。
“かがみの海”で6年振りに復活
福岡・福津市に広がる福間海岸。ウインドサーフィンやサップなどマリンスポーツも盛んな県内有数の海水浴場だ。

水面が鏡のように空を反射することから“かがみの海”とも呼ばれる福間海岸。潮が大きく引く、大潮の際に見られる絶景だ。

2025年7月1日の海開き。海の安全を祈願する水神祭が行われた。

水神祭終了後に行われたのは、組合の店舗が協力して行うイベント「福津バル」についての会議だ。グルメだけではなく、音楽や映画なども楽しめる複合型イベント「福津バル」。6年振りの開催となる。

福間海岸に新たな賑わいを作り出そうとさまざまな意見が飛び交った。

福間の海を愛する人たちが、今回、6年振りのバル開催に踏み切ったのには、深刻な理由がある。
砂浜に人がいない日が…
長く夏のレジャーの定番だった海水浴。大人も子どもも夏休みになると海水浴に出かけた。

しかし海水浴客は1980年代をピークに現在は10分の1ほどに減少。全国的に海離れが進んでいるのだ。

福間海岸も例外ではない。土・日以外は、殆ど砂浜に人がいないということもあるという。この日、海岸に遊びに来ていた人も「暑すぎて…。余り海に行こうってならないですよね。子ども連れて行くってなったら選択肢として消えますよね」と話していた。

福間海岸沿いの店舗で構成される組合の組合長を務める土肥忍さん。福間にやってきて20年になる。現在はカフェを営みつつ、バナナボートなどマリンレジャーの体験事業も行っている。

居心地の良さに惹かれ、住み着いた福間海岸だが、訪れる人が減っている現状に「コロナ以降、本当にかなり人が減っている」と寂しさを感じているという。

7月下旬。バル開催を前に土肥さんたちは、海岸周辺の地区を1つ1つ訪ねた。イベント復活のためには近隣住民の理解が不可欠だ。「海水浴場としては、この辺りはいいところです。昔は観光に関わる方たちが、どんどん客を運んで賑わったんですよ。コロナのせいで客は減る、花火大会もなくなる。だから復活させたいんです」(近隣住民)。

福間海岸に賑わいを取り戻したいというのは同じ思いだ。
ゆっくりと沈む夕日を見ながら…
大きな布をピンと張り、砂浜にライトの装飾を取り付ける。「海で映画を見たら気持ちいいと思うし、子どもが来たら楽しめるよね」とスタッフが作業を進めるのは、ナイトシネマの会場だ。福間海岸を愛する人たち1人1人の思いが形になっていく。

そして8月30日。6年ぶりとなる「福津バル」が開幕した。和楽器バンドによるライブやキッズダンサーたちのダンスパフォーマンスなど各店舗がそれぞれ、さまざまな企画でイベントを盛り上げる。飲食店では、限定料理を用意。土肥さんの店では、合鴨の燻製を中心としたおつまみセットを提供していた。

夕日が、海上の雲間にゆっくりと沈む。いつもは日没とともに人気(ひとけ)がなくなる福間海岸だが、明りが灯った海辺には音楽が流れ、人々の笑い声がいっそう高まる。

海に沈む夕日を静かに眺める人、波打ち際ではしゃぐ子どもたち、ビール片手に仲間と会話を弾ませる人、手作りのナイトシネマにもたくさんの人が集まり、それぞれが夏の海を楽しんでいた。

「夕日が、すごくきれいだった。こんなにきれいな夕日は、見たことなかった。いいねぇ、ここは」と話す人や「めっちゃ楽しいです。初めて来ました。なかなかこんな海の前でご飯を食べるとかもないので、癒やしを求めてって感じで」と話す人などイベントは大成功だった。

6年ぶりとなる「福津バル」を無事に終えた土肥さん。「思った以上に人がたくさん来られて、イベントやってよかったです。また来年も再来年もずっと毎年、続けていきたい。もう福間の海は最高なんで」と笑顔がこぼれる。

今回の「福津バル」が大成功だったため、早くも来年も開催する方向で話が進んでいるという。さらに隣接するの宮地浜と津屋崎も巻き込んで規模を大きくすることも検討中だという。

土肥さんは、早くも来年の賑わいへ思いを馳せていた。
(テレビ西日本)