7月30日、北海道に14年ぶりに発表された津波警報。

 太平洋沿岸の約42万人に避難指示がだされ、3万5千人以上が避難しました。

 海沿いに街が広がる北海道苫小牧市。

 その時、人々はどう行動したのでしょうか。

 携帯電話の位置情報を元に人の流れを分析している札幌市立大学高橋尚人教授の協力の元、JRの線路を挟んで山側と海側に分けて、比較しました。

 海側のエリアでは、午前10時以降、人が大幅に減少しています。

 一方、山側のエリアは、人が急に増えました。


 「津波警報が出た午前9時40分という時間から考えると津波の情報がでたことによって室蘭本線の海側から人が離れ山側に人が集まったということが考えられます」(札幌市立大学AITセンター 高橋尚人教授)


集中した避難先

 多くの人が山側に避難した苫小牧市。

 それと同時に発生したのが「車の渋滞」です。

 市の中心部から近く海抜35メートル程の高台となっている緑ヶ丘公園付近は大渋滞となりました。

自動車社会ゆえの課題

  「地震当日の10時台、11時台になると2000人を超えるような人がいたっていう推定結果になっている。1週間前と比べると3倍の方が緑ヶ丘公園とその周辺にいたという結果に」(高橋教授)

 公園の近くに住む住民は…。

 「ここの公園に来る人たちでバイパスがずっと渋滞していて。(Q.市民の感覚として車を使う?)あると思います」(公園の近くに住む人)

 当時、緑ヶ丘公園に車で避難した市民は…。

 「みるみるうちに(車が)いっぱいになって帰る時も車が出られないくらい」

 「今思えば近くの学校に行けばよかったのかなと」

 「(Q.なぜ緑ヶ丘公園に?)津波なら(学校は)低いよな…と、子どももいたので、そういう所に行った方がもっと安心するかなと」(緑ヶ丘公園に避難した人)

 緑ヶ丘公園は一時的に避難できる場所ではありますが、正式な津波の避難場所ではありません。


 「津波避難の原則、より遠く、より高くということからすると市民の皆さんにとって、一番目標にしやすい場所ではあったのかなと捉えています」

 「苫小牧は自動車社会ということもありますので、時間があまりない中での避難という中で自動車を選んだ方が結果的には多かったかなと」(苫小牧市 前田正志危機管理室長)


 更には、駐車場に収まりきらない車が芝生エリアに停められました。

 ここは災害時、防災ヘリの離着陸場所でもあり、緊急車両の妨げになる恐れがあるといいます。

 市によりますと、当時、緑ヶ丘公園付近を含む少なくとも6ヶ所で、渋滞が発生したという事です。

 市は、原則、徒歩での避難を呼びかけ、学校など200ヶ所以上の避難所や津波避難ビルを設けています。

警報が浮き彫りにした教訓

 しかし、普段から、車が手放せない地域ゆえ、市も頭を悩ませています。

 「助かる命を助けるため、例えばご高齢の方、障害のある方が自動車で避難できるように、可能な方については徒歩避難をしていただけるよう、防災活動の啓発を進めていきたい」(苫小牧市 前田危機管理室長)

 避難への意識の高まりで新たな課題が浮き彫りになった14年ぶりの津波警報。

 命を守るために、私たちはどう行動するべきか。改めて、考える必要がありそうです。

 北海道大学の高橋浩晃教授と関西大学の林能成教授によるインターネット上での調査によると、北海道では5割を超える人が自動車を選択したということです。

 徒歩での避難が原則ではありますが、お住まいの地域や事情によって状況は変わってきます。最善の行動はどういうものなのか、日ごろから考えていきたいですね。

北海道文化放送
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