夏の風物詩、「夏休みの宿題」にいま、異変が起きている。
チャットGPTなどのAIの登場で「AIが書いた文章を人が考えたように」「逆AI代行」の依頼や宿題の量を「生徒が決める」学校も!?
イマドキの夏休みの宿題事情を徹底調査した。

■イマドキの夏休みの宿題事情を取材
夏休みも残りわずか…みなさん「宿題」は終わっただろうか?
中学2年生:終わってないです!
高校2年生:全然終わってないです。
(Q.終わりそうですか?)
高校2年生:ちょっと厳しいです。

■まさに追い込み中 理科の自由研究に取り組む小学生
夏休みも、あとわずか。
週明けが始業式、まさに宿題に取り掛かっているという、大阪市に住む小寺さん。
咲凛さんの母:『角度』完璧やん、これが得意なんちゃう?
咲凛さん(9):これが得意
咲凛さんの母:全部あってるわ!
3人きょうだいの末っ子、小学4年の咲凛(あかり)さん(9)。ことしから自由研究の宿題が始まった。
(Q.いまから何しますか?)
咲凛さん(9):理科の自由研究です。(テーマは)スライムは液体に戻るのか。
家にあるものでスライムを作り、液体に戻すのがテーマだ。
この日はスライムをあたためてみる。
咲凛さんの母:どう?
咲凛さん(9):とけた。
(Q. 咲凛さんとしては成功?)
咲凛さん(9):さんかく。わらび餅みたい…液体にはなってないから。
研究の結果、「液体には戻すのは難しい」ことが分かったそうだ。
咲凛さんの母:ゼロから生み出すってなると時間がかかるタイプなので、最後に残ったんだと思います。

■夏休みの宿題は明治時代から! 心得は「アサハヤクオキテ、ヨルハヤクヤスメ」
そもそも夏休みの宿題はいつからあったのか?
その答えとなるのがこちら。宮崎県の文書センターで見つかった、今から100年以上前の明治43年の宿題。
漢字の読み仮名を書くものや…その日あったできごとを書く日記もある。
さらに夏休みの心得とされたのが、「アサハヤクオキテ、ヨルハヤクヤスメ」。
長い休みの中で「学習ペースを乱さないように」という目的で、宿題が始まったそうだ。

■AIの登場で夏休みの宿題を取り巻く環境に変化
しかし!近年、あるものの登場で異変が起きています。それは「AI」だ。
記者リポート:チャットGPTに、『坊ちゃんの読書感想文を書いてください』と書きました。数秒で読書感想文が完成してしまう。
文章の生成などもできるAI「チャットGPT」を使うと、またたく間に読書感想文が完成。
ご丁寧に「夏休みの宿題向けに使いやすくしたバージョンも作れます」との誘惑も…

■小中学生のおよそ4割が「宿題などにAIを活用したことがある」と回答
また、グーグルのアプリを使うと、中学生の数学式にスマホをかざすだけで、解き方や答えが瞬時に表示された。
街で聞いてみると…
(Q.周りにAIなどを使っている人はいる?)
中学3年生:結構います。(AIを使うのは)作文とや文章系です。
高校2年生:学校では結構(AIを)使っている人が多いみたいですけど。プリントの考察とかで、チャットGPTに聞いているケースが多い。
ことしの春に行われたアンケートでは、小中学生のおよそ4割が「宿題などにAIを活用したことがある」と回答している。

■宿題代行業者に依頼“逆AI”
AIの影響が意外なところに出ていると聞き、取材班が訪れたのは千葉県茂原市。
宿題代行救急隊 荒木聡さん:こちらが自分の作業場になります。
案内してくれたのは、塾講師で“宿題代行”も行う荒木聡さん。
宿題代行救急隊 荒木聡さん:これは中学2年生の女子生徒の親御さんから。
夏休みになると増えるのが、読書感想文の依頼。
料金は原稿用紙1枚あたり3000円からで、中学受験を控えた小学生や部活動で忙しい中学生の保護者からの依頼が目立つ。
ただ、最近はAIの登場でこんな困った依頼もあるようで…。
宿題代行救急隊 荒木聡さん:AIによって作られたものを、『人間が考えているような文章にしてほしい』という、“逆AI”的なご要望が増えつつあります。
このような依頼は、AIの文章が正しいかどうか調べる必要があり、時間がかかってしまうため断っている。
宿題代行救急隊 荒木聡さん:AIでもできるものを課題として出す学校の姿勢というものに対しては、少々私も疑問を持ち続けている次第です。

■自分たちでカスタマイズする宿題!? 「主体性を育んでほしい」と校長
「夏休みの宿題」って一体、どこまで必要?
ユニークな取り組みをしている中学校があると聞き、取材班が訪れたのは、兵庫県西宮市の公立中学校だ。
西宮市立深津中学校 西坂大輔校長:昨年から夏休みの宿題を、(生徒が)自分たちでカスタマイズする、そういう形を取っております。
カ、カスタマイズ???
こちらの深津中学校では、教師は原則、夏休みの宿題を「提案」するだけで、内容や量を決めるのは生徒自身。原則、提出も不要なのだ。
はじまりは「自分で考える主体性を育くんでほしい」という校長先生の思いから。
そしてこんな裏テーマもあるそうで…。
西宮市立深津中学校 西坂大輔校長:40日間をより有効に思い出に残るような、そんな取り組みをしてもらいたい。青春18きっぷを使って九州の祖父母の家に1人で行ったというエピソードとか、1人で車博物館に行く計画を立てたとか。
生徒からの評判は上々ですが、保護者にアンケートを取ったところ、6割が継続を希望した一方、4割が「元に戻してほしい」と回答。
「自主性のあるお子さんと、言われないとやれないお子さんとの差が広がる」などの意見も寄せられ、今後も試行錯誤を続けるということだ。
西宮市立深津中学校 西坂大輔校長:AIからアイデアをもらったものをそのまま書き写す、全く思考が動いていない。これからは自分で考えて、取り組む宿題というのが、学力も点数化されない非認知能力も育っていく。
子供たちにとってふさわしい夏休みの宿題とは。真剣に考える時が来ているのかもしれない。

■“子どもが宿題を選択”「やらない子が半分以上いるのでは?」と京大・藤井教授
東京学芸大学教育心理学が専門の太田絵梨子特任講師によると「今の宿題は目的方法に納得感がない。だからやる気が起きない。子供が選択することができ、『やった方がいいな』と思える宿題の出し方、指導が必要」ということだ。
藤本景子アナウンサー:子供の(宿題の)プリント見てみたけど今すごく少ない。私の頃は絵日記は毎日書かなきゃいけなかった。今は2日分だけでした。
京都大学大学院藤井聡教授は、子供が宿題を選択する方式では「やらない子供が半分以上いるのでは?」と述べ、「まずは大人が推薦してみては」と提案した。
京都大学大学院 藤井聡教授:(子供が宿題を選択する方式だと)やらん子、半分以上いるかと思う。自分の肌触りでいつも思うのが、ほんまに子供の頃見ておもろかったなとか、映画とか漫画でもドラマでも本でもいいし、それを見たらって見せて、その子らが面白かったですっていうのが一番手触りがありますよね。周りの大人に文芸作品、漫画でも動画でもいいから推薦して見て、それについて感想でも書いたりするのはすごくいいかなと思いますけど。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年8月22日放送)
