違法な捜査が認定された大川原化工機の冤罪(えんざい)事件を巡り、25日に警視庁と検察幹部3人が、勾留中に見つかったがんで亡くなった相嶋静夫さんの墓前で謝罪しました。
極めて異例となる捜査幹部による墓前での謝罪。
その直後には、遺族が詰め寄る場面も見られました。
発端は、2020年に相嶋さんら大川原化工機の幹部3人が軍事転用可能な機械を不正輸出した罪で逮捕・起訴されたこと。
3人は無罪を主張しますが、約11カ月勾留され、相嶋さんはその間にがんを発症。
体調が悪化する中、家族に向けたメッセージを撮影していました。
相嶋静夫さん:
みなさん元気ですか?じいじはあんまり元気ないけど頑張ってるよ。早く元気になって…みんなに会いたいです。
家族は何度も保釈を求めますが認められず、相嶋さんは72歳で亡くなりました。
その後、起訴が取り消され無罪が確定。
そして2025年8月、警視庁と最高検察庁が捜査に問題があったと認め、25日に謝罪の場が設けられたのです。
遺族が見守る中、相嶋さんの墓前で手を合わせたのは3人の捜査幹部。
相嶋さんの妻は、自身が東京拘置所の所長宛てに送った「命だけは助けてほしい」と検査や治療を懇願する手紙を読み上げたあと、3人に対し次のように問いかけたのです。
相嶋静夫さんの妻:
お三方がこのような立場に立たれたらどうしますか?家族とか親族。聞かせてください。
東京地方検察庁の市川宏次席検事:
大変重い手紙の内容を私たちに教えていただきまして、大変ありがとうございました。
相嶋静夫さんの妻:
そういうことを聞いてるのではなくて、自分だったらどのように命を延ばしていく方法をとるか教えてください。私はわからなかった。何の返事もないんですよ。
このあと、場所を移して捜査幹部が相嶋さんの遺族に対し改めて謝罪。
警視庁・鎌田徹郎副総監:
今回の相嶋静夫さんに対する違法な捜査・逮捕を行ったことにつきまして、深くおわびを申し上げます。
こうした謝罪に対し遺族は、「がん発症後、数カ月間放置された」「治療を受けられず亡くなったことが残念」などと当時の対応を批判しました。
さらに、相嶋さんは闘病中、捜査関係者にこんな言葉を発していたことも明かしました。
相嶋静夫さんの妻
「あの人たち人間じゃないのかな」と言ってました。「きっと人間の仮面をかぶった怪物かな」とか言ってました。
相嶋さんの妻は、「謝罪は受け入れますが、許すことはできません」とつらい胸の内を明かしました。