1日限りの単発や短時間で完結する仕事で働く「スポットワーク」。
業種を超えて深刻化している人手不足対策としても注目される働き方が、島根・鳥取でも広がりつつある。
地域課題解決の糸口になる可能性を秘めた新しい働き方について取材した。

「スポットワーク」を導入した居酒屋
「スポットワーク」を導入した居酒屋
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島根・安来市内の居酒屋「かば安来駅前本店」。
アルバイト確保の手段のひとつとして、2年ほど前から1日限りの単発でも働ける「スポットワーク」を取り入れ、最近は年間のべ約200人を採用した。
かば安来駅前本店の伊藤勝店長は「すごく助かってる部分が多くてありがたいです」と話す。

居酒屋の雇用状況の特性に対応
居酒屋の雇用状況の特性に対応

季節や曜日によって忙しさに波がある居酒屋では、「スポットワーク」を活用すれば、忙しい時だけ人手を増やすことができるためだ。
一方、働く側にとっても働きたい時だけ働くこともできる気軽さは「スポットワーク」ならではで、この店でも繰り返し応募する働き手もいるという。

スマホアプリやサイト活用 働きたい人と雇用側をマッチング

山陰でも広がりを見せる新しい働き方「スポットワーク」。
仲介サービス会社が提供するスマホアプリやサイトを通じて、条件に合う雇い主と働き手をマッチング。応募したその日のうちに働くこともできる。
「スポットワーク」の仲介サービス利用者は、2024年5月末時点で約2200万人、1年あまりで約2.2倍に急増しています。

サービス開始から8年 手ごたえを語る小川社長
サービス開始から8年 手ごたえを語る小川社長

時代が求めている…登録者は全国で約1100万人に

株式会社タイミー・小川嶺社長:
当初の想定よりも広がっているなと思っていますし、時代が求めている物なのかなと思っています。

スポットワーク仲介サービスの「草分け」ともいえる『タイミー』の創業者である小川嶺社長。
2017年に創業し、職を求める登録者は全国で約1100万人、雇用する側は約18万の事業者が導入している。

株式会社タイミー・小川嶺社長:
人手が減っている中で、いかに皆が楽しくやりがいを持った環境を作れるのかというのが重要になってきています。職業マッチングの重要性が増していると思っています。

好きな時に好きな場所で働けるスポットワークは、働く人にとって、実際に働いてみることで職種や職場への適性があるかどうか確かめる機会にもなっていると指摘する。

深刻な人手不足の介護の現場でも…メリット実感

島根・出雲市の介護福祉施設での導入事例を取材した。
ここで介護士として働くのは常松浩子さん。介護士として別の施設に勤務していたが、けがが原因で退職。
その後、復職を考える中で2024年9月にタイミーを利用し、スポットワークに応募した。

「タイミー」を活用して復職した常松さん
「タイミー」を活用して復職した常松さん

現場からしばらく離れていたというものの、経験は豊富。的確な仕事ぶりが目に留まり、正社員として採用が決まった。
「スポットワーク」がきっかけで長期の雇用につながった。

みずほの家・土江知久取締役:
働きぶりが確認できるのはとても良い所だと思っていて、常松さんの働きぶりを見て、来てほしいと思って来ていただいたので、大変うれしかった。

みずほの家・常松浩子さん:
お試しができるのは強みで、人間関係や内容、勤務形態すべて自分の目と耳で確認できて、ほんとうに良かったと思っています。

「お試し」ができるのが双方のメリット
「お試し」ができるのが双方のメリット

実際に「働いてみる」ことができる「スポットワーク」。
働く側、雇う側の双方にメリットがあるといえる。

「人材の質」巡るトラブル…相互評価システムによる対策で安心して利用へ

その反面、面接なしですぐに採用、働けるという気軽さが、労働条件や無断欠勤など「人材の質」をめぐるトラブルにつながるケースもみられるという。

対策として、『タイミー』などスポットワークの仲介サービスの多くは、働き手と雇用主の双方が勤務したあと、お互いに評価するシステムを導入。
問題のある働き手や雇い主を排除し、安心して働き、雇用できる環境づくりを進めているとしている。

地方の人材確保へ…離島の町と連携も

地方の人材確保にも貢献へ(隠岐・西ノ島町)
地方の人材確保にも貢献へ(隠岐・西ノ島町)

山陰でも広がりを見せる「スポットワーク」。
この新しい働き方を、人口減少に歯止めがかからない地方の課題解決につなげる取り組みも始まっている。

『タイミー』は2025年3月、島根県の離島・西ノ島町と包括連携協定を結び、今後、「スポットワーク」を活用して漁業などの担い手を確保。将来の移住や定住の促進も目指している。

西ノ島町と連携協定 移住・定住促進に期待
西ノ島町と連携協定 移住・定住促進に期待

株式会社タイミー・小川嶺社長:
農業も含めていろいろな事例が出てきている。東京のイメージというより、地場に根付いていると思われるよう広げていく、自分たちなりの産業の強みを自己認識をした上で、それを若者に伝え、それを地域のプライドに変えていくかが重要だと思います。

『タイミー』のサイト
『タイミー』のサイト

『タイミー』は、各地の自治体とこうした協定を結び、全国46自治体地域の課題を解決、活性化につなげたいとしています。
人口減少に歯止めがかからない中、人材確保の新たな手段でもある「スポットワーク」の広がりが、山陰など地方のあり方を変えることにつながるのか注目されている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

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