こちらの映像、一度は目にした方も多いのではないだろうか。
おつかいの男の子が“ひやむぎ”を探すテレビCMだ。
古い映像だが、なぜ今もそのまま放送されているのか?
それには、深いワケがあった。
30年流れ続ける“あのCM”
CM映像に見覚えがあるか、北海道民に聞いてみると。
「あります。懐かしい、昔見たような気がする」
「いいんじゃないですか、昭和的で」
「昔から今まで変わりなく放送されていて、昔のものとは思えない」(すべて北海道民)

いつのころからか流れている、北海道民おなじみの映像。
「『マルナカ、まんなか』というセリフまで憶えています。夏になったらテレビで流れるイメージですよね」(北海道民)

昭和を思わせる、古い画質のレトロな映像。
北海道江別市の乾麺製造メーカー「マルナカ」のCMだ。
「『はじめてのおつかい』をイメージして、一番小さな子に決めた。6~7歳だったと思う」(マルナカ 村上和吉社長)

撮影当時を知る、社長の村上和吉さんだ。
「新しい店舗ができたばかりのスーパーに撮影させてほしいとお願いした。開店前の1時間で撮り終えねばならず、カメラの位置をどうしようかなど、ゆっくりとは撮影できなかった」(村上社長)
ずいぶん古そうな映像だが、いつ撮影されたものなのか。
「創業60周年を記念してCMを制作したので、32~33年前」(村上社長)
「マルナカ」は創業1933年。90年以上にわたって“ひやむぎ”などの乾麺を製造してきた大手メーカーだ。

「薄くなった生地を“切り刃”で、帯状から麺線の状態にしていきます。麺線になった状態で2階の乾燥室に上がっていきます。8時間ほど乾燥して、乾麺の状態で1階に下りてきます」(マルナカ 上原将裕さん)

守り続けた伝統の味。
しかし、30年前の古いCMをなぜ今も使っているのだろうか?

幻のCM「結構な予算をかけて作った」 しかし反応ほとんどなく―
「実際は1回変えようとした。4~5年たって次のCMも考えようと、新しいものを作ったことは作った」(村上社長)
実は今から25年ほど前、全く別のCMが存在したという。
しかし、わずか2週間しか放送されなかったそのワケとは?
「誰も覚えてくれなかった」(村上社長)
権利の関係から実物をお見せすることはできないが、どのようなものかイメージしたイラストを街の皆さんに見てもらうと。
「全然違う」
「こんなCMを放送していたのは全然知らなかった」
「印象が残らない。前のCMの方が印象づけられる。男の子の買い物のシーンの『なかった』というセリフとかね」(すべて北海道民)

満を持して制作した新しいCMへの反応は、ほとんどなかったという。
「結構な予算をかけて作ったが、誰も反応してくれないので『古いCMを放送した方がいい』ということになった」(村上社長)
道民の心に沁み込んだマルナカのCM― 2025年に復活
実は現在のCMは2024年までの5年間、新型コロナの影響で放送を自粛していた。
しかしこの夏、復活を遂げたのだ。

映像は30年以上変わらないが、ナレーションは10年ごとに録り直してきた。
当初は男の子の声を録音して使っていた。
「録音するときに男の子がひどい風邪をひいていて、『マルナカ』が鼻が詰まって『まんなか』に聞こえてしまった。この方が印象に残るからいいと言われて、いまだに『まんなか』と言っている」(村上社長)
北海道民の心に沁み込んだこのCM、2025年の放送は7月で終了した。
また会う日まで…。
