いま感染が拡大している新型コロナ。
オミクロン株から派生した新たな変異株「ニンバス」は、「カミソリ刃を飲み込むぐらい」のどが痛むのが特徴だということだ。
関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」では、関西医科大学付属病院の宮下修行教授に解説してもらった。

■8週連続で感染者増 「うなぎ上りで増えている」と現場の声
まずは、どれくらい流行しているのかだが、1週あたりの新型コロナの感染者数が8週連続で増加している。最新の情報では。4週前と比べると、2.49倍にもなっているということだ。
街の人100人にも、「最近、自分か身近な人が新型コロナにかかったか?」と聞いてみると、「はい」と答えた方が、24人いた。
宮下教授の感覚としても「うなぎ上りで増えている」と言う。
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:コロナが増えたか減ったかの一番の指標になりますのが、職員の発熱者なんですけれども、7月からうなぎ上りで増えてきたというのが、肌感覚ですね。

■“カミソリの刃を飲み込むぐらい痛い” 新型コロナ「ニンバス」の特徴
今感染が増加しているというのが、オミクロン株から派生した、変異株で通称「ニンバス」と呼ばれるものだ。とにかく「のどの痛みが強烈」であることが特徴と言われている。
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:『ニンバス』に関しては、最初に流行したイギリスからのデータですけれども、“カミソリの刃を飲み込むぐらい痛い”というような形容詞だったんです。
我々のところに来ている患者さんで一番多いのは、唾を飲み込んだとき、それから食べ物を食べた時。『そういう時に痛みがあるので』ということをおっしゃる方多いですね。
『ニンバス』は、のどの痛みから症状が始まり人が多いということだ。
そして宮下教授は、感染力について、「コロナは変異を繰り返して、過去にかかった免疫から逃避しようと変わっていく。そういう意味では、感染力が増している」と説明。
その上で、「70代から80代の高齢者、それより下の世代でも複数の基礎疾患を持っている人に重症化のリスクがある」と指摘した。

■若い人は「ほぼ軽症で終わる」が、無症状の人が感染を広げている
スタジオでは、「自分の身の回りでは、体調が悪くてもコロナの検査をしないという人もいる」という話になった。
診断をされると「休まなければいけない」、「薬が高額」という理由が背景にあるということだ。
この状態について宮下教授は「早期に見つけないから重症患者が増えている」と話す。
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:定点的には患者数が減ってきてるんです。減ってきてるのに入院患者は増えてきてるんです。ということは調べていない。調べないと周りへ感染が拡大する。そして高齢者が悪くなって入院してくるという図式になっています。
そして宮下教授は、「若い人や基礎疾患がない人は重症化しにくく、ほぼ軽症で終わる」と説明し、「症状が軽いために、お盆の帰省などで広げてしまっている」と指摘した。
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:風邪と違うのは、この微生物は肺炎を起こすんです。肺炎を起こすんだけれども、若い方は自力で治してます。いわゆる薬がなくても治ります。しかし、ご高齢の場合は、その肺炎が広がってしまいます。

■コロナの流行は「8月末」には落ち着くだろう
また宮下教授は、コロナが夏と冬に流行を繰り返していることについて、「冬に感染しても半年経つと免疫がなくなり、半年周期で感染してしまうこと、夏と冬は室温を管理するために、閉め切ってしまい、換気が疎かになることで、感染が拡大しやすい大きな要因になっている」と述べました。
そして「ニンバス」はいつまで感染者が増えるのか、「8月末には落ち着くだろう」という見解を示した。
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:まず拡大する要因として、人流が動く時ですから、このお盆が終わって1週間程度は増え続けることが予想されます。だいたい去年、おととしのデータからしますと、おそらく8月の末にはピークアウトするだろうと予測しております。
青木源太キャスター:俗説かもしれないですけど、一度コロナになって何回もなる人がいる、全然ならない人はならない、みたいなこと聞いたことあるんですけど、それはどうなんですか?
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:これは免疫。例えばインフルエンザもかかる人とかからない人がいるんですね。これはもう免疫なんです。粘膜免疫がある方はかかりにくいです。免疫をしっかり持ってる人、例えばワクチンを打っても免疫がつかない人もいれば、免疫がつく人もいますので、これも個体差になってきますね。
青木源太キャスター:これまでコロナの流行は何波もあったじゃないですか。今までかかったことがある人は注意しないといけない?
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:そうですね、かかりやすい。ただ今のコロナは賢くて、免疫逃避、免疫から逃れよう逃れようとしているというのが特徴ですから、かかってない人もかかるということですね。
さらに宮下教授は「コロナの猛威は今年に始まったことではない」と話す。
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:去年の夏は大変でしたね、我々のところは。重症患者さんばかりが増えてきたということで、これはマスクをしない方が増えてしまったのが大きな要因だと思います。

■“百日咳”“インフルエンザ”などほかの感染症との見分けかたは「最初の症状」
街の人の疑問についても解答する。
(Q.パンデミックや行動制限、今回もありえる?)
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:今回の“ニンバス”に関しては、行動制限する必要は全くありません。要は重症化をしやすいようなものにフルモデルチェンジ、いわゆる前で言うと“デルタ株”のようなものに変わってしまうと、これは一定の行動制限は必要かと思います。
青木源太キャスター:感染者数が増えたとしても、“ニンバス”自体の株が変わらない限り大丈夫?
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:そうそういうことですね。
今の段階では「パンデミックや行動制限」の心配はないということです。
(Q.コロナと他の感染症の見分け方は?)
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:今はやってるのが百日咳ですので、百日咳というのは、“せき”の名前がついてます通り、せきから始まって、その他の症状例えば、熱とか、咽頭痛のど痛、これが少ないというのが百日咳の大きな特徴です。逆に今のニンバスはのど痛から始まって、熱、その後にせきというふうに、順番から見ても大体、区別はつくかと思います。
最初に「どのような症状が出るか」がポイントであるということだ。

■ワクチンは高いけど…「高齢者、基礎疾患を持っている人は打ってほしい」
(Q.ワクチンは打った方がいい?)
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:一言で言うと、ワクチンは打った方がいいです。ただ誰を対象とするかという考え方からしますと、重症化をする人、それからお亡くなりになられてる方、これは高齢者ですし基礎疾患を複数持たれてる方。これはぜひワクチンを打っていただきたいと考えております。
青木源太キャスター:ワクチン無料じゃないですよね。
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:そうなんです。おととしまでは無料だったんですが、昨年からは公費負担が発生しております。
例えば神戸市の場合は昨年度まではワクチンの費用が3000円だったものが、今年度から8000円だ。他の全額自己負担という自治体の場合は、1万5000円ぐらいかかるという。
青木源太キャスター:治療薬も高額ですよね。
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:とにかく高い…例えば一番安いゾコーバという薬剤でも、3割負担で1万5000円かかります。ですから逆に言うと、私の患者さんでも断られる患者さんというのはおられます。
(Q.「いらない」と言える?)
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:『いらない』ということは言えます。一応説明して、値段も説明いたします。それからこの病気の怖い所ですよね。怖いのは、若い方はさっき言ったように、ほっといても治ります。治るんですけども大体10人に1人ぐらい後遺症を残されますね。それをきちんと説明した上で、それでもいらないということに関しては、これは我々も出すわけにはいきませんので。
(Q.薬を飲めば絶対治る?)
関西医科大学付属病院 宮下修行教授:絶対という訳ではないんですけども、当然ながら感染して発症して、早ければ早いほど効果は高いです。
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年8月18日放送)
