8月16日と18日の2日間、防災システム研究所の山村武彦所長とともに記録的大雨の爪痕を取材した。土石流が発生し、多くの住宅が土砂にのみこまれた八代市興善寺町の様子を伝える。

土石流に襲われた八代市興善寺町

土石流に襲われた八代市興善寺町を8月17日に訪れた、防災システム研究所の山村武彦所長は「うわー、すごいな。怖かっただろうね、この地域の人たちは。よく人的被害が出なかったですね。不幸中の幸いだったんですけど」と話す。

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山村所長は国内外の災害現場で調査を行い、そこで得た教訓を発信するなどして防災意識の啓発に取り組んでいて、「斜面崩壊の土砂と一緒に、水が流れ下ってきたのだろうと思う」と述べた。

八代市では8月11日の早朝から大雨に見舞われ、6時間降水量が観測史上最も多い345.0ミリを観測した。この記録的な大雨により、竜峯山で土砂崩れが発生。麓の興善寺町を土石流が襲った。

町内を流れる大谷川に沿って数百メートルにわたり、岩や土砂が住宅や道路などを覆いつくした。山村所長は「カルバートの下を渓流が流れていたんでしょうね。高速道路の向こう側(の山)が崩れて、それが一気にカルバートを通ってこの渓流を沿いに流れ、下ったんだろうと思う」と分析する。

長野県岡谷市での土石流と類似点も

土砂崩れが起きた竜峯山と麓の集落の間を横切る九州自動車道の下には、『カルバート』と呼ばれる箱型のコンクリート構造物があり、山と集落をつなぐ道路と水路が設けられている。

山村所長はこの『カルバート』を通って土石流が集落に流れ込んだと分析。4年前の8月に長野県岡谷市で発生した土石流災害と、特徴が似ているとも指摘する。

山村所長は「長野県岡谷市の場合には2階に避難した小学生含む親子3人が土石流に巻き込まれて亡くなっている。この時は住宅の2階を土石流が直撃した。もし『カルバート』の正面に家があったら、破壊されている可能性がある。それぐらいの破壊力を持った土石流だと思う」と述べた。

今回、『カルバート』の正面にあった道路と水路を伝って、土砂が流れたことで「住宅の倒壊は辛うじて免れたのではないか」と指摘する。

「石の音と濁流の音、ゴツゴツと」

近くに住む平田信也さんは「当日、朝から起きて玄関を開けた時にはとてもびっくりした」と話す。その時に平岡さんが撮影した映像には、濁流がものすごい勢いで山側から流れ下っているのが分かる。平田さんが住む地域には、夜明け前の午前4時過ぎに土砂災害警戒情報が発表されたが、この時すでに家の外から異様な音が聞こえていたという。

平田さんは「石の音と濁流の音、ゴツゴツゴツゴツと何かに当たる音というか、あまり聞きなれない…。そこの家で寝ていたが、そこまで聞こえてくるようなかなり大きな音だった」と話す。

避難指示を知らせる携帯のアラームも鳴ったが、〈外に出るのは危険だ〉と判断し自宅に留まり、垂直避難を選択した。平田さんの自宅は50センチほど水に漬かり、換気口から床下に泥水が流れ込んだ。

平田さんは「床下を見て『これはひどい』と言われて、『このまま放置しておくと、臭いとか衛生上も良くないから』と言って一気に作業してくれた。私は幸運だった。そういう方と出会えて」と話し、県外から駆けつけた災害ボランティアが床下に入って泥をかき出してくれたという。

「安心安全は日ごろの準備に比例」

こうした地区に暮らす人にとって、今後の命を守るポイントを山村所長に聞いた。

山村所長は「この一帯が土砂災害警戒区域であるならば、土砂災害警戒情報や大雨警報がこうした地域に出されたら、それはもう危険な合図。もう一つは、線状降水帯の予測情報が出されたときも、危険な合図。『逃げろ』の〈避難スイッチ〉はどこで入れるかを、家族で話し合っておくことが大事」と話す。

山村所長は「安全安心は日ごろの準備に比例します」と呼び掛けた。

(テレビ熊本)

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