県内で最も古い歴史がある、大江町の灯ろう流し花火大会が開催された。たび重なる水害によって堤防の整備が進む中、特別な思いでこの日を迎えた女性がいた。
お盆真っただ中の8月15日、大江町左沢は花火を目当てに訪れた多くの人でにぎわっていた。
最上川の川岸から約2000発が打ちあがる歴史ある灯ろう流し花火大会。
左沢で約50年続くあてらざわ温泉・湯元旅館の女将柏倉京子さんは、この日を特別な思いで迎えていた。
(あてらざわ温泉湯元旅館・柏倉京子女将)
「長年、最上川の川風に当たりながら見てきたのが今日で終わりだと思うと、しっかり目に焼きつけておきたい」
旅館がある百目木地区は、2020年・2022年と立て続けに豪雨に見舞われた。
たび重なる水害を受けて、地区には堤防が整備される予定で、2026年度の着工に向け対象となる範囲に住む住民の移転が進められている。
この旅館も対象で、柏倉さんは旅館を2025年いっぱいで閉める決断をした。
(あてらざわ温泉湯元旅館・柏倉京子女将)
「花火大会のお客を受け入れるのが今年で最後だと今朝も来た時に思った。精一杯悔いのないように、最後までここを守っていかないといけない、今日も頑張ろうと」
花火の日は毎年遠方からも多くの予約が入る。
この日も埼玉や京都から宿泊客が続々とやってきた。
午後7時すぎ、打ち上げが始まると屋上で花火を楽しむお客の姿が。
ここは、最上川の3カ所から上がる花火がすべて見渡せるとっておきの場所。
(埼玉から)
「迫力がすごい」
(宮城から)
「3カ所全部見られるので花火を独占している感じ、幸福」
仕事がひと段落した柏倉さんも…。
(あてらざわ温泉湯元旅館・柏倉京子女将)
「最高の場所で今年は見られて幸せ。しみじみ見たのは何年ぶりかという感じで、やっぱり花火はいいなと思った。でも来年からは違う所で見ないといけないと思いながら、いま空を見上げながら考えた」
お客と一緒に見るのはこれが最後。
柏倉さんは、これまで支えてくれた人たちへの感謝の気持ちをかみしめながら夜空に輝く大輪の花火を見つめていた。
お客からは「来年もここで花火を見たい」と、閉業を惜しむ声が聞かれた。
柏倉さんは2025年12月まで旅館の営業を続ける予定で、「今まで通り来てくれるお客を大切に、感謝の気持ちを持って接客したい」と話していた。