かつて新潟の山間に、異国の風が吹いていた場所があった。ロシアの文化と建築が融合した美しいテーマパーク。その名も「新潟ロシア村」。1993年に開園し、わずか11年で閉園した施設を振り返る。

■冷戦終結…日本海に吹いた追い風

1991年、ソビエト連邦が崩壊した。冷戦は終わり、日本海に国際交流の風が吹いた。新潟はその玄関口と呼ばれ、港には貨客船、空にはウラジオストク便が就航。「環日本海」を冠したシンポジウムなど催しが相次いだ。

その熱気の中で構想されたのが「新潟ロシア村」だ。当時のロシア大統領エリツィン氏から協力を約する親書が届いた。「自然を生かしたものに」という要請に応え、建設地は市街地から自然豊かな笹神村(現・阿賀野市)に移された。

■青い屋根のドームと祝祭の広場

1993年にオープンした「新潟ロシア村」。ロシア村の象徴とも言えるのは、タマネギのようなドーム型の青い屋根に金色の星で装飾された「スーズダリ教会」だ。高さ15メートルの吹き抜けの大広間で、ここで結婚式も行われたという。

園内には美術館、ホテル、レストランが建ち並び、ロシア語の歌声が広場に響いていた。

■11年で幕…残されたものは

しかし、経済不況と観光の多様化で客足は遠のき、2003年に休業、翌年閉園。無人の園内には侵入者が絶えず、火災も起きた。建物は解体され、残るのは教会と焼け跡のホテルだけだ。そのスーズダリ教会はどうなったのか。そして、あの広場は今…

冷戦の終結、環日本海経済圏、地方創生の理想、バブルの余熱、さまざまな文脈が交錯した結果として生まれた「新潟ロシア村」は、“平成の遺構”とも言えるのではないだろうか。

NST新潟総合テレビ
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