愛知県岡崎市の郊外にある「シガ食堂」は、瓦の上で焼かれた茶そばを熱々のつゆで味わう“瓦そば”が名物の人気食堂です。山口県下関の郷土料理をふるさとの味として広めたいと、女性店主が始めました。地元食材にこだわった桃のパフェなど季節メニューも魅力で、家族や地域の人々と作り上げる温かい店づくりが、多くの共感を集めています。
■瓦の上にそばが乗った山口県下関の郷土料理「瓦そば」
愛知県岡崎市小美町にある「シガ食堂」。

店の定番は、茹でた中華麺をカリっと焼き上げ、キャベツや豚肉、薄い生地を重ねた広島風の「お好み焼き」(1300円)。たっぷりのネギの香ばしさがクセになる一品です。

そして、店の一番人気のメニューは「瓦そば」(1300円)。瓦の上にそばが乗ったユニークな麺料理で、熱した瓦の上で茶そばを焼き、温かいつゆでいただきます。
客:
「普通、瓦の上で焼いて食べるなんてしないと思うので、斬新ですね」
店主の志賀有加里さん:
「私が生まれ育った山口県下関の郷土料理です」

使う瓦は、日本三大瓦のひとつ・島根県の石州瓦。瓦そば専用に保温性を高めた特注品で、直火で約300度まで加熱します。西尾市の抹茶と北海道産のそば粉を使ったオリジナルの茶そばを10分ほど茹で、フライパンで焼いた後に熱々の瓦に乗せます。錦糸卵と甘辛く味付けした「あいち牛」をトッピングすれば完成です。
■香ばしくて美味しい…パリパリとモチモチ両方味わえる「瓦そば」
開店は午前11時。すでに店の前には行列ができていました。
一番乗りの客:
「8時25分くらいに着きました」

瓦そばの食べ方。まず、麺を瓦全体に広げて焼き目を付けるのがポイントで、瓦に接している部分がパリパリになり香ばしさが増すといいます。

アツアツの麺を、温かいつゆにくぐらせていただきます。
男性客:
「パリパリッとする。すごく香ばしくて美味しい」
別の男性客:
「パリパリとモチモチの両方が味わえる。瓦そばがこの辺りでここしかないので、その珍しさもあって食べに」
女性客:
「インスタで瓦そばを見て。暑い夏でも、汗を流してでも食べたいくらい」

アツアツの麺を豪快にすすり、汗ばむ夏の食欲を満たします。まさに、“熱い夏に熱い麺”です。
■季節限定のパフェも…おすすめは地元の桃を使った「桃のパフェ」
瓦そばだけではありません。
客:
「シーズンごとにパフェが出る。毎回それも楽しみにしています」

この時季のおすすめは、地元産の桃を使った「桃のパフェ」(1800円)。
志賀さん:
「猿投でとれた桃を使って。より新鮮なものをお客さんにお届けできる」

志賀さんは、食材はできる限り地元産にこだわっています。旬の桃を丸ごと贅沢に使い、みずみずしい甘さが口いっぱいに広がります。瓦そばの後に注文する人も多く、自然と笑顔がこぼれます。
■開業当初は集客に苦労も…人気ドラマがきっかけで店は大繁盛へ
そもそも、なぜ愛知で「瓦そば」を始めたのでしょうか。
志賀さん:
「わざわざ食べたいものって何だろうと考えたときに、瓦そばは誰もやっていない。私たちにとっては当たり前のものが、もしかしたら特別なものかもしれないと思って」
東海地方ではあまり馴染みがない「瓦そば」に目を付けた有加里さんは、結婚を機に下関から岡崎へ移住し、2016年にお店をオープンしました。ところが、最初は知名度が低く集客に苦労したといいます。

志賀さん:
「半年くらいたったときに、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で、瓦そばを食べるシーンがあって、その次の日からお客さんが表に並び始めて、1人で大慌てした記憶があります」
人気ドラマで紹介されたことをきっかけに一気に注目が集まりました。忙しくなる中、地域の友人たちが自然と手伝ってくれるようになったといいます。今では地域の人たちに支えられながら、スタッフみんなで店を切り盛り。昼の営業が終わった後は、みんなで瓦そばを食べて味を確かめます。

志賀さん:
「気づいたら仲間が増えていた感じ。みんなと一緒にやれているのが楽しい。この場所でやっていることに意味があると思うし、ぜひお店の雰囲気や味を楽しんでもらえたら嬉しい」
ふるさとの味と地元のぬくもりが詰まった特別な“瓦そば”に、今日も笑顔が咲きます。