鹿児島県日置市の吹上浜で、市川修一さんと増元るみ子さんが北朝鮮に拉致されてから8月12日で47年がたちます。
そんな拉致問題について同世代の若者に伝えようと、県内の高校生4人が鹿児島市でイベントを企画しています。
彼らはどんな思いで拉致問題と向き合っているのでしょうか。
そして、2025年80歳を迎えた修一さんの兄、健一さんはそんな若い世代の活動をどのように見つめているのでしょうか。
夏休み真っ只中の川内高校。
(いいかな?)
(うん)
真剣なまなざしで黙々とチラシを貼り進める女子生徒。
羽島奈穂さん、川内高校の2年生です。
チラシには鹿児島市で開かれる、中高生を対象とした拉致問題の勉強会のお知らせが書かれていました。
羽島さんは、この勉強会を企画したメンバーのひとりです。
川内高校2年・羽島奈穂さん
「お友達や家族と一緒に来てもらえれば良いな」
羽島さんが生まれる約30年前の1978年8月12日。
市川修一さんと増元るみ子さんが夕日を見に訪れた日置市の吹上浜で北朝鮮に拉致されました。
拉致から47年。
修一さんの兄・健一さんは、弟との再会が果たせぬまま、またこの季節を迎えました。
市川修一さんの兄・市川健一さん
「47年と簡単に言うけれど、その間の私たちの苦しみ、やはり拉致された弟も向こうで一刻も早く救出を待っている」
修一さんが拉致されたとき33歳だった健一さんも、2025年で80歳。
人生の半分以上を拉致問題解決のために費やしてきました。
市川修一さんの兄・市川健一さん
「あと何年活動ができるのかと思うと焦ってくる。24時間365日、やはりどこかで弟のことが頭に浮かんでくる。いつも思っている。『早く会いたい』と。このままだと被害者が帰ってこられない。家族も会えないままと思うと。本当に、歯がゆい」
拉致から半世紀近く。
そんな健一さんの思いを多くの人たちに伝えようと、動き出している若者たちがいます。
拉致問題の勉強会を企画したのは、鹿児島県内の4人の高校生です。
実は彼らは全員、2024年12月、全国の中高生を対象とした北朝鮮の拉致問題に関する作文コンクールで入賞を果たしていました。
この日は、司会進行を担当する甲南高校放送部も交えて、健一さんと妻の龍子さんの講演や作文コンクールの入賞作の朗読といった勉強会当日の流れを確認。時間配分など細かい点も詰めていきます。
甲南高校2年・福留豪希さん
「ウェルカムボードを作っておくのはどうかな。『ようこそお越しくださいました』みたいに書いて張ればよいのでは」
甲南高校1年・田村源太郎さん
「参加者一人一人に付せんを渡して、(拉致問題について思うこと)を書いて貼り付ければ1つの作品に仕上がる」
高校生たちにとってイベントを企画するのはもちろん初めてのこと。
この日は、これまで何度も講演会を重ねてきた健一さんと妻・龍子さんに直接アドバイスをもらいに来ました。
川内高校2年・羽島奈穂さん
「(福留)豪希くんの講演のあとに市川さんの講演を持ってくるか、市川さんが講演をしたあとに豪希くんが発表をするか迷っている」
市川修一さんの兄・市川健一さん
「豪希くんが今までの拉致の歴史の話をするわけでしょ?そのあとに家族の苦しみをみんなに分かってもらうためには、豪希君のあとの方がよいかな」
修一さんの帰りを待ち、拉致問題の風化を恐れながら署名活動に取り組んできた健一さんと龍子さん。
若者たちの動きには頼もしさを感じているといいます。
市川修一さんの兄・市川健一さん
「積極的に動いてくれる。本当にありがたい。心強く思っているし、この輪が広がっていくように願っている」
学校も学年もバラバラの4人。
それでも拉致問題に向き合う気持ちは一緒です。
全員そろっての活動がなかなかできない中、それぞれが本番に向けて準備を進めます。
甲南高校1年・田村源太郎さん
「一人でも多くの人に拉致問題が伝わってくれたら」
甲南高校2年・福留豪希さん
「市川のおじちゃんたちが悲しむ顔を見たくない」
鹿児島情報高校3年・渕脇詩さん
「今まで拉致問題に関わってこなかった自分も恥ずかしくなって、自分たちが動かないといけないと思った」
川内高校2年・羽島奈穂さん
「怖いと思うだけでなく、怖いの先にある勇気を出して、何か行動を起こさないといけないと気づいた。そういう力をみんなに与えるきっかけになれる存在になれれば」
健一さんが抱き続けてきた「弟を必ず取り戻す」という強い思い。
その思いはいつしか、若い世代を動かす原動力となっていました。
高校生が踏み出した勇気ある一歩。
その一歩がさらに多くの若者に広がることが、いつか拉致問題の解決につながるのかもしれません。
高校生たちが企画した拉致問題の勉強会は8月23日土曜日、県庁18階のかごゆいテラスで午後1時半から開催されます。
参加費は無料ですが、当日参加するためには画面右上のQRコードから事前の申し込みが必要です。
定員50人が集まり次第、応募は締め切られるということです。
※QRコードは動画をご覧ください。