被爆80年プロジェクトをテレビ新広島と一緒に取り組んだ、テレビ長崎の吉井アナウンサーに、広島と長崎の平和記念式典の違いについて聞きました。
【テレビ長崎・吉井誠アナウンサー】
特に被爆80年の今年、広島と長崎で大きく異なる対応があります。それが世界各国との向き合い、式典への招き方なんです。例えばロシアの場合、8月6日の広島の式典には参列しませんでしたが、3日後の長崎の式典には参列することになっています。
なぜこのような違いが出てきたのか見ていきましょう。
まずは広島です。広島は去年、招待の形をとっていましたが、今年は「通知」案内に変更しました。これは日本と外交ルートがある196カ国が対象です。イスラエルやパレスチナを含む120の国と地域などが参列し、過去最多となりました。
そして長崎です。長崎は去年に続き招待の形をとっています。これは駐日外国公館リストに示す全ての国と地域などに招待状を送るということなんです。長崎も過去最多102の国と地域の参列が見込まれています。
しかし、長崎には去年の反省がこの動きの選択となりました。
ロシアが2022年にウクライナに軍事侵攻して以降、長崎はロシアとベラルーシに招待状は送っていません。そして去年はイスラエルにも送るのを見送りました。これは式典を平穏に円滑に進めたいという考えからでした。
しかし、するとG7のうち、日本を除く6カ国の代表は出席を見送りました。つまり、ボイコットの意思を示してきました。結果的には長崎は一番伝えるべき核保有国との対話の機会が失われたのではないかと批判の声が上がったわけです。
そこで長崎は、今年は原点に立ち戻ろうということで、駐日外国公館リストに示した国に全て招待状を送ることにしました。その結果、ロシアは出席を表明。一方、台湾は、招待状を送っていないのですが、台湾の方から出席の意向を示したため、今回は受け入れる形で準備を進めています。
結果的には広島の式典には出席しないけれども、長崎の式典には出席するという国が出てきたことになりました。
【加藤キャスター】
特にこの核保有国のロシアの参加の有無というのは「招待」なのか「通知」なのかところが大きく影響したのではないかという指摘もあります。
【吉井誠アナウンサー】
広島が今年「通知」にしたことに対して、ロシア大使館はこう言っています。「行事の概要を伝える内容で、正式な招待状とは言えず、依然として政治的姿勢を改めていない」というコメントだったんです。
【加藤キャスター】
モーリーさん、やはり核保有国にしっかりとこう見てもらいたいという思いがある一方で、言葉を選ばなければ、意地の張り合いのような形になりかねないとも感じますね。
【モーリー・ロバートソンさん】
やはり核保有国はどの国も現在自分の持っている核は、自分の国の安全保障を持つ最終手段であるので、そこには正義があるという前提が崩れていないんです。ですから仮にいろんな資料を見たり被爆者と対話する機会があったにしろ、外交上はその人たちに寄り添いながらも、持ち帰る頃には自分の国のその国体というか、国家が最優先されてしまう。なので、そこには我々から見ると現実と矛盾してるようにしか思えない。破滅に向かってるようにしか思えないことであっても、それぞれの国の主権というのか、それが優先されてしまうんですね。
【加藤キャスター】
それぞれの国の論理も本当に国によって論理が違うということになりますね。
【モーリー・ロバートソンさん】
そして先ほどのその先進国がボイコットした長崎に対して、イスラエルに絡むことなんですけども。イスラエルと西側諸国、アメリカを中心とした西ヨーロッパの国々というのは非常に複雑な同盟関係を持っていて、特にアメリカとイスラエルは、イスラエルの戦後の建国以来、一心同体のような同盟関係になっています。そこでイスラエルに対するこの判断というのが、ある意味、中立のフェアを超えて、のめり込んでイスラエルを支持しなくてはいけないというアメリカの立場が堅持されているんです。
なので、これが事態をさらに複雑にしていて、単純な平和の対話が、まっすぐな平和の対話がなかなか成り立たないという事情があります。
【加藤キャスター】
今の世界情勢を見るとますますこの難しさ、複雑さというのが増しているようにも感じます。
【吉井誠アナウンサー】
それが凝縮された結果がこの形なんじゃないかなと私も思いました。
長崎は最後の被爆地であり続けることに意味があります。そのためには広島の皆さんの協力が必要です。8月9日、広島の皆さんもどうぞ長崎に思いを深めてください。