猛暑の夏 電気代への道民の不安

「(Q:電気代は上がっている?)去年より暑い日が多いのでそれに伴い(エアコン使用で)上がっている」

「最近はずっと(エアコンを)つけているので先月の電気代はすごいと思う」

「熱中症にならないようにはしようと思っているので風が入ってこない日は(エアコンを)つけようと思う。(Q:電気代が高くなっても?)命には変えられない」(いずれも札幌市民)

連日の猛暑で北海道でもクーラーを必要とする状況になっているこの夏。家庭では電気料金の負担が増している。

もともと電気料金が全国一高い北海道。

8月請求分は、平均的な北海道の家庭で8700円になるが、もっとも安い九州電力は6874円。

北海道民は27%重い負担をすることになる。

北海道民は27%重い負担
北海道民は27%重い負担
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再稼働に向けた国の動き

そんな中、今後の電気料金を左右する大きな動きが。

北電の泊原発3号機について国の資源エネルギー庁が立地する後志の泊村と周辺自治体あわせて4町村を直接訪れ、再稼働へ同意を求めた。

泊原発3号機は7月、原子力規制委員会の安全審査に合格。

福島第一原発事故以降、全国で最も長い12年かけて審査を終えた。

泊村と周辺自治体を直接訪れ再稼働へ同意を求めた
泊村と周辺自治体を直接訪れ再稼働へ同意を求めた

今後、再稼働には事実上地元の同意が必要で資源エネルギー庁は、今後も国内で電力需要が高まるほか、温室効果ガス削減のため原発の活用は欠かせないなどとする経産大臣の文書を手渡し再稼働に理解を求めた。

「原子力は再生可能エネルギーなどとともに、エネルギー安全保障に寄与し脱炭素効果の高い電源として最大限活用することとしております。政府の方針に従って泊3号機の再稼働を進めることにご理解を賜るようお願いします」(資源エネルギー庁 山田仁政策統括調整官)

泊原発3号機は7月安全審査に合格
泊原発3号機は7月安全審査に合格

自治体の慎重姿勢

泊村の高橋村長は国が責任をもって住民に説明してほしいとしたうえで…。

「これから議論が始まっていく。(北電や国の)住民説明会や議会の議論があって、最終的に(同意するか)判断を村として出さなければいけない」(泊村 高橋鉄徳村長)

同意要請を受けた周辺自治体は同様に住民説明会などを経て同意するか判断したいとしている。

泊村の高橋鉄徳村長
泊村の高橋鉄徳村長

また知事のもとには夕方に、資源エネルギー庁の長官が訪れ、同意を求めた。

知事は議会の議論などを経て判断したいと応じた。

北電はこれまで再稼働すれば、電気料金を値下げするとして理解を求めてきた。

「議会の議論などを経て判断したい」と鈴木知事
「議会の議論などを経て判断したい」と鈴木知事

市民からは賛同の意も

「料金の値下げ幅について検討していて、年内をめどに、できるだけ早い時期に説明したい」(北海道電力 斎藤晋社長の7月31日の会見より)

値下げされることを札幌市民は…。

「電気を安く作れるし(再稼働は)いいんじゃないか」

「(再稼働して)いいと思う。(電気料金が)安くなるんだったら」(いずれも札幌市民)

北電の斎藤晋社長は「料金の値下げ幅について検討」
北電の斎藤晋社長は「料金の値下げ幅について検討」

しかし北電は値下げ幅については、いまだ明言していない。

再稼働で、どれくらい電気料金は下がるのか。

2017年までの関西電力高浜原発3・4号機では一般家庭用プランでの値下げ率は2.7%で189円。

大幅な値下げにはつながっていない。

専門家は…。

関西電力高浜原発では大幅な値下げにつながっていない
関西電力高浜原発では大幅な値下げにつながっていない

「追加で安全対策費用がかかったり北電の場合は防潮堤を作ったりするので、劇的に何割も下がるということはないのではないかと思う。北電は『安くなる』というのであれば当然『いくら安くなる』とはっきり言うべき」(龍谷大学政策学部 大島堅一教授)

原子力規制委員会は、防潮堤の建設や電源車を配置するなどした北電の地震や津波などへの安全対策が新規制基準に適合していると決定した。

龍谷大学政策学部の大島堅一教授
龍谷大学政策学部の大島堅一教授

原発再稼働反対の声

一方で、いまだ不安の声も上がっている。

「動くんだったら、ちゃんと安全確保してほしい」(泊村の住民)

「安全面を考慮していただきたい。私はどちらかというと反対派」(札幌市民)

「電気を使っているから必要だということはわかるがどうなるのかな。不安しかない」(札幌市民)

不安の声も
不安の声も

福島の経験から原発に反対する人も

札幌の介護事業所を経営する中手聖一さんだ。

福島第一原発事故で福島市から自主避難してきた。

中手さんは原発で大きな事故が起きれば取り返しのつかないことになると再稼働に反対する。

「泊原発が再稼働することになれば、(福島第一原発事故の)あの時のことをいつも心に不安を抱えながら生きることになる。原子力災害と避難の経験から、(原発は)釣り合うものではないと道民にも知ってほしい」(福島市から自主避難 中手聖一さん)

再稼働に向け動きが本格化する中、周辺自治体や知事の判断が注目される。

福島第一原発事故で自主避難してきた中手聖一さん
福島第一原発事故で自主避難してきた中手聖一さん

北電の電気料金は最高水準

全国でも最高水準の北電の電気料金。

泊原発の運転停止に伴い、北電の家庭向けの電気料金はこのように推移してきた。

・2013年  7.73%↑
・2014年 15.33%↑
・2023年 23.22%↑
(※いずれも家庭向け平均)

値上げ前、標準世帯の家庭向け月平均額は5991円だったが、2025年7月は9413円。約1.6倍にまではね上がっている。

北電の家庭向けの電気料金の推移
北電の家庭向けの電気料金の推移

原発の再稼働で、電気料金はどのくらい下がるのか。他の電力会社の例を見てみると。

・関西電力(高浜原発)     2.7%↓ 189円
・関西電力(大飯原発)     3.5%↓ 242円
・九州電力(川内・玄海原発)  1.1%↓ 72円
(※いずれも家庭向け 月額)

月額で数十円から数百円程度の値下げ幅にとどまっている。

他の電力会社の電気料金
他の電力会社の電気料金

値下げを妨げる要因とは…

なぜ大幅な値下げとならないのか?原発コストに詳しい龍谷大学の大島堅一教授に話を聞いた。

・安全対策費(防潮堤など)
・稼働していない間の維持費

これらの費用がかさみ、劇的な値下げができないという。
 
北電は泊原発3号機について、2027年のできるだけ早い時期の再稼働を目指すとしている。

また、再稼働による値下げ幅については2025年中に公表したいとしている。

なぜ大幅な値下げとならないのか―
なぜ大幅な値下げとならないのか―
北海道文化放送
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