23日午後1時、東京で、そして大阪で、相次いで配布された号外。
紙面には大きく「石破首相退陣へ」との見出しが。
突然の事態に、街行く人はビックリ。
ところが、当の首相自身は、この退陣報道を真っ向から否定したのです。
石破首相:
一部にそのような報道がございますが、私はそのような発言をしたことは一度もございません。
この発言が飛び出す直前、石破首相は異例の会談に臨んでいたのです。
23日午後2時前、神妙な面持ちで官邸を出た石破首相。
向かったのは自民党本部です。
午後2時から、麻生太郎最高顧問、菅副総裁、岸田前首相の首相経験者3人が一堂に会する、異例の会談に臨みました。
党本部で多くの報道陣が待ち構える中、午後1時41分に菅氏が、午後1時50分に岸田氏が、そして午後1時56分に麻生氏が、厳しい表情で姿を見せました。
続投表明会見から2日。
石破首相が進退について説明するとみられる中、首相経験者3人がどう対応するかが注目されていました。
参院選で過半数割れの敗北を喫した自民党。
翌日の会見で石破首相は「政治には一刻の停滞も許されないということがございます」と述べ、「政治空白を作ってはいけない」として続投の理由の1つに挙げた日米関税交渉。
それが23日朝、電撃的に合意されました。
石破首相:
守るべきものは守った上で、日米両国の国益に一致する形での合意を目指してまいりました。今回トランプ大統領との間で、まさにそのような合意が実現することとなった。
首相自身が語っていた大きな節目を迎え、一部のメディアが「石破首相退陣へ」などと報じ、東京と大阪では相次いで号外も配布されました。
石破首相自身の発言がない中、進退を巡る臆測だけが一人歩きする事態に、永田町の面々は…。
小泉農水相:
(退陣について)全く聞いておりませんし、今そのことについて正確なことがわからない中で、コメントすることはありません。
立憲民主党・野田代表:
総理経験者とお会いするとか、そういう状況を見ながら、どういう対応するか確かめながら、我々もコメントしたい。
一方、自民党の中では“石破おろし”の動きが加速。
党の若手議員らで構成される自民党の青年局が開いた47都道府県の地方組織との会議では、退陣論が噴出。
自民党青年局・中曽根青年局長:
結果責任、これを考えれば即時の退陣が必要だという声が大多数を占めた。
党本部には、神奈川県連の代表が責任の所在を明らかにするよう求める文書を提出に訪れるなど、地方組織から退陣を求める動きが続々と。
自民党 神奈川県連・梅沢裕之幹事長:
責任の明確化ということで、辞任が一番わかりやすい。その要請です。
党内には、関税交渉の合意を踏まえ、石破首相が当面続投すべきだとの意見もあるものの、辞任は避けられないとの見方も強く、与党関係者からは「(Q.トランプ関税合意したが?)合意したところで、もう辞めざるを得ないでしょ。党内がもう許さないですよ。旧派閥単位でリコールの署名をやっていると聞いている」「そもそも衆院選・都議選・参院選と3つ負けてしまったわけだから、執行部は何らかの対応を取るべきだと思いますよ」「石破さんはもう詰んでるよ」など、厳しい声が上がっていました。
昼過ぎには、2024年の総裁選で高市早苗氏を支持した議員たちが都内で対応を協議するなど、党内でも動きが加速。
そんな中、午後3時28分、首相経験者3人との約1時間半に及ぶ会談を終えた石破首相が記者団の前に。
進退についてどんな話が出たのか?
しかし、答えは…。
石破首相:
強い危機感で、みんなで共有したということ。私の出処進退については一切、話は出ておりません。一部にそのような報道がございますが、私はそのような発言は一度もしたことはございません。
首相経験者3人との会談について、石破首相は「自分の進退についての話は出ていない」と強調し、続投に意欲を示しました。
石破首相:
国民生活がきちんと守られるということ。それに向けて全力を尽くしてまいりたいということでございます。報道されているような事実は全くございません。以上です。
「首相退陣へ」との報道を首相自身が否定するという異例の事態。
一体、何が起きているのか。
フジテレビ報道局の高田圭太政治部長は「総理退陣という号外が出た直後に総理が否定するというのは、私はこれまで聞いたことがありません。なぜこんなことになったのかというと、総理は続けたいんだけど、党幹部の中にも一刻も早く退陣への流れをつくって確定させたいという勢力の間で、かなり齟齬(そご)があるという党内の状況が表れてると思う」と指摘します。
党内の石破退陣論が強い中、今後については「石破総理としては、関税交渉がある8月までは続けたい。あわよくばその先もという気持ちもあるんだと思います。ただ、党内で石破総理を退陣させるため、両院議員総会や総裁選の前倒しによって強制的に退場させようとする勢力があって、そちらが上回った場合には、かなり早期の退陣も予想されます」と推測しました。